今回の私 の海外研修での研究テーマは,水中ロボットのためのシミュレータの開発すること,そしてそのシミュレータを用いて水中ロボットに領域制御を適用し制御即の 有効性を検証することであった.シミュレータを用いることで実機で実験を行う前にプログラムの検証やロボットの挙動を確かめることができる.これはシミュレータ により物理現象をシミュレーションすることで時間を有効に使うことができ,また実機運用におけるランニングコストの削減に繋がる.水中ロボット用のシミュ レータを開発するためにはシミュレータ内で水中の特性を模擬することと,水中ロボットに適した制御即を組み込むことが非常に重要となる.私が派遣された研 究室では様々な制御即が研究されており,「水中」というロボットを制御する上で極めて厳しい環境に適した制御即を提案し,シミュレータに組み込むことが私の任 務だった.
また,先に述べたとおり水中特有の力を考慮する必要があり流体力学に則ってそれらをプログラムにより疑似再現した.
私は以前より海外に興味があり,それは街並みであったりそこに住む人達の人柄,そして海外の大学の研究室ではどういったスタンスで研究が進められ,学生 がどういった姿勢でそれに取り組んでいるのかということだ.それらを感受性豊かな学生のうちに経験することが本実習の一番の意義であると私は考える.
また,現地での滞在場所の手配,派遣先大学の教授との研究内容のやり取り,必要書類の手配といった今後,留学・出張などで海外へ行く際に必要となる流れは一通り行ったことが良い経験になったのではないかと思う.
私 は川村研究室では主にハードウェア設計を行って いた.しかし今回派遣された研究室では様々な制御即の研究がメインで行われておりそれらを学べたこと,またそれらをシミュレーションすることでロボットの 動きを適宜確認することができとても興味深い経験となった.
生 活面では,研究室内外問わず私の周りはほとんどがPhD,英語も話せて当たり前という状況であったが恐縮するというようなことはなくむしろ彼らから良い刺激 を受けることができた.生活スタイルも日本では不規則な生活だったが,派遣先では朝8時に起きて大学へ向かい夕方の17時に帰るという規則正しいも のだったため効率も良く心身共に充実していた.
シンガポールに着いて初めて思ったことは「この国には匂いがある」ということだった. おそらく他の国もそうであると思うが,国には特有の匂いや雰囲気がありそれらは経験しないと実感できないものであると強く思った.それを肌で感じることが できたのは本当に良い経験だったと思う.少し人生観の話になってしまうが,私は日本で生まれ,日本の大学へ通い,日本の企業へ就職し,日本で働くというの が当たり前だと考えていたがそれが万国共通ではないということを思い知らされた.私が接した人達は学部卒業後,自分のやりたい研究を世界規模で探し,修士 号を取得し,他にやりたい事があればそれを行える機関へ移るといった私から見れば非常にアグレッシブな行動をとっていた.私もこうした話を聞くうちに, もっと物事を世界規模で見なくてはならないと強く思った.このように海外へ行って初めて得るモノというのはとても多く,ぜひ次年度の後輩にも海外研修へ 行ってもらいたいと思う.