幸王 英之


2005/8/16〜2005/9/12


Electrical Engineering and Computer Science Department
Tulane University
New Orleans, Louisiana, USA
(アメリカ合衆国 ルイジアナ州 ニューオーリンズ,テュレーン大学)
 

 

 今回実習に参加した研究チームでは,マニピュレータを搭載した自律型水中ロボット(Autonomously Underwater Vehicle Manipulator System :AUVMS)の制御に関する研究が行われており,これまでにいくつかの制御手法が提案されてきた(※梅棹の報告参照).これら制御手法の性能検証は,数値シミュレーションによっては行われてきたが,実機検証は行われていなかった.そこで今回,これら制御実験を行うための実験機を作ることになり,私はハードウェア設計を行った.

 何より求められたことが「低価格であること」であったため,使用できる材料・加工方法も限られてしまい,そこに最も苦労した.汎用部品を簡潔な加工をするだけで要求を満たすようなアイデアを先生やチームの学生たちと考え,実際に部品を購入し,モノを見ながら思案しつつ,CADを用いて図面を製作した.

 途中,ハリケーン上陸のためハードウェア製作が全く出来ない状態になってしまい,最終的にはCADによる設計とセンサの簡単な動作確認までしか行えなかった.帰国後,持ち帰った材料でスラスタを完成させ動作確認・推力測定を行った.これらの内容をまとめ,同年末に行われた計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2005)に論文投稿し,発表を行った.

 海外実習によって得られることは数多くあるが,中でも「英語でのコミュニケーション力を向上させること」,「海外の大学や研究室のスタイルを肌で感じること」は研究者としてのスキルアップ以外にも,自分の価値観や,視野を広げるといった意味でも非常に意義のあることだと言える.
 そもそも私が本実習に参加する動機となったのが,卒研生として研究室にいたある日,イギリスの大学の先生に自分の研究を英語で説明することを求められ,そこで全く英語を話せなかったという苦い経験だった.8年近く英語の授業を受けてきたが,英語コミュニケーション力は全くついていなかったということだ.英語コミュニケーション能力を鍛える最も有効な方法は実践に他ならないとよく言われるが,長期間外国の研究者と共に研究を行うことのできる今回の実習は,実践を行うのにもってこいの機会だと思う.
 また,自分の所属している研究室と全く環境の異なる研究室に身をおくことで,研究の進め方や,生活,チームの運営など,今まで見たり感じたりすることのなかった多くの事について知ることができる.同時に,今までの自分の研究スタイルを一度客観的に見つめなおすいい機会にもなる.