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第一章  『文選』全體像の概觀

五、全文體作品の作家別統計による分析
A.全文體による分析

  (1)謝靈運 32篇40首4,786字
  (2)陸士衡 29篇111首1,730字
  (3)陳思王 23篇40首10,048字
  (4)謝玄暉 23篇23首2,515字
  (5)顔延年 22篇27首6,127字
  (6)潘安仁 19篇23首18,118字
  (7)任彦昇 19篇21首10,129字
  (8)沈休文 17篇17首5,212字
  (9)鮑明遠 11篇20首2,641字
  (10)班孟堅 10篇10首9,194字

この十人の中でも、とりわけ三國魏の陳思王曹植(23篇39首)、西晉太康の潘岳(19篇23首)・陸機(29篇111首)、宋朝の謝靈運(32篇40首)・顔延年(22篇27首)、齊梁の謝朓(23篇23首)及び沈約(17篇17首)・任昉(19篇21首)の作品採録數は突出して多い。單純な統計に過ぎないけれども、詞華集中において特定の文人の作品を突出して多數採録しているということは取りも直さず撰者がその文人を高く評價していることに外ならない。それ故、この五人の文人は『文選』の撰者より最高の評價を受けているものと認定してよかろう。この最高の評價が與えられた五人の中、魏の陳思王曹植を除くと、他の四人はいずれも晉代以降の文人である上、その作品傾向は並べて所謂「質」(質實さ)より「華」(華麗さ)の勝った文風という共通點を持っている。これらの事象を勘案して、より密度の高い輪郭を想定すると、『文選』は晉代以後の「華」(文飾)を豊かに有する詩文を中核にして選録されているという軌跡が鮮明に見えてくる。この軌跡は「文選序」においてかの「椎車」が「大輅」へ發展し、「積水」が「増冰」に變質する如く、「文」も時代とともに「質」から「華」へ變質發展して行くと表明している『文選』撰者の文學觀に見事に一致している。それは具體的には決して所謂「文質彬彬」を規準に選録している軌跡を形成しておらず、「文」に勝った詩文を重視して選録している形跡を示している。

更に細密な軌跡を辿り、鮮明な『文選』の輪郭を描くためには、相對的に多數と判定できる各作家の採録情況を各文體毎に分類整理し、比較分析してみる必要があろう。


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