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第二章 『文選』編纂の實態

三、梁代の「總集」(詩文集)編纂の實態
序、梁代の「總集」編纂實態の究明の必要性

從來、『文選』の編纂實態を究明するに際しては、殆どの論者が直接『文選』編纂に言及した文獻資料のみを個別的に取り出して分析檢討することに終始している。

しかし、『文選』一書だけが決して時代の影響を超越して選録されている譯ではないから、當然、廣く當時の「總集」一般の編纂情況を丹念に究明すべきである。そうして明らかになった「總集」の一般的編纂情況を考慮に入れた上で、具體的に『文選』の編纂實態を追究してこそ、はじめてその眞相が解明される可能性が高い。そのような試みをしない以上、どうしても編纂情況の究明に限界が生じ、つい駱鴻凱氏のように「當時の撰次、或いは昭明手自ら編訂せしか、或いは臣僚と綴緝せしか、史に明文無ければ、深考するに由なし。」(『文選學』)と慨嘆するのみに終わらざるを得ない。

そこで、まず梁代の「總集」編纂の實例を擧げて、具體的にその實態を檢討することから始めるのが適當であろう。其の際、論述の性質上、實際には「總集」に分類されていないけれども、各文人の文章を選擇收録しているという點において「總集」と同質性を有している『法寶聯璧』の如き書籍も「總集」と同樣に取り扱うことにする。


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