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2010年度研究会報告

第2回(2010.6.19)

テーマ 「台湾・台東縣の少数民族観光の予備的調査報告」
報告者 雨森 直也(立命館大学文学研究科後期課程)
報告の要旨

報告者は、2010年1月に台湾台東県の原住民観光の状況について、ルカイ族およびブノン族を事例として予備的調査を行った。ルカイ族の村では、観光客は知本温泉などに行く際に立ち寄る観光地のひとつとなっていた。村の入り口には観光案内所があり、土産物や工芸品を販売するなどの活動を行っていた。他方、ブノン族の村については、2カ所を訪れた。1カ所は、村から1km程度離れた場所に地元の牧師の出資によるテーマパーク型の観光地であった。そこは団体観光客の引き込み、経営は成功していた。もう1カ所は、自然を楽しむ観光地の中間に位置している原住民農村で、多くの村人が民宿を提供していた。

これらの村々で共通することは、高齢化が進んでおり、ほとんどの若者は村を離れていることであった。村に残る人々は、雇用があれば若者は戻ってくる、つまり、観光によって雇用を創出することが村の活性化につながると考えている。しかし、経営的に成功をおさめているとされるブノン族のテーマパークであっても、若者はほとんど戻って来ず、そこでは漢人を中心とする労働者を雇用していた。つまり、原住民観光は、村にいる一部の人々にわずかな収入の増加をもたらしているに過ぎず、実際には、期待に反して若者を村に呼び戻すに至ってはいないものと推察される。

雨森 直也

テーマ 「台湾・台東縣の少数民族観光の予備的調査報告」
報告者 山本勇次(大阪国際大学)
報告の要旨
 

ネパールの観光地ポカラで社会的弱者の調査を続けてきた筆者は、ポカラの景気が停滞すると、若者がマレーシアなど海外に出稼ぎに行く傾向が強まることに気づいていた。そこで、2010年2月26日~3月5日の期間、マレーシアのペナンにおいてネパール人出稼ぎ労働者を対象にインタビュー調査を試みた。

筆者の本務校(大阪国際大学)のマレーシア人留学生リム・ジット・スン君の協力を得て、31名のネパール人労働者に面談することができた。彼らの平均年齢は25歳で、ペナン滞在は約3年、給料は年額で約7,630リンギット(約23万円)、そのうち年額約3,730リンギット(約11万2千円)をネパールの家族に送金している。彼らの多くは故国の「人材派遣会社」に借金(斡旋料・パスポート料金・渡航費用等)をしており、給料から月々返済する年利は31%にもなる。それだけに、彼らは、順番で共同自炊をし、生活費を抑制してタコ部屋のような寮生活を余儀なくされている。彼らのパスポートさえ雇用主代理人に強制的に保管されているため、彼らは観光地ペナンに居住しながらも移動の自由さえ保障されていない、という実態が明らかとなった。

山本勇次

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