08.09
2013
被災地研修(前編)
キャンパスアジア担当教員 廣澤 裕介

被災地研修(前編)
キャンパスアジア担当教員 廣澤 裕介
7月31日から8月4日まで、東日本大震災の被災地研修をおこないま
した。
京都から16時間バスに乗り、宮城県北部の石巻市、南三陸町、岩手県
南部の大船渡市をめぐり、立命館大学での移動キャンパス2学期を締め
くくる研修を実施しました。
8月1日は午前中に石巻市内の宿舎に到着し、長旅の疲れをほぐすため
休憩時間を少し取った後、午後から南三陸町に入りました。
さんさん商店街で昼食をとり、その後、町の観光協会やガイドサークル
汐風のご協力を得て、町内各所に訪れました。はじめに、押し寄せた
津波が地形の関係から高漲し、海抜20メールにも及ぶ高台にありながら
被害を受けた戸倉中学校に向かい、想像を絶する津波の怖さと被害の
大きさを目にしました。もとはグランドであったと思われる場所には仮説
住宅が並び、被災の現場・被災地の現在を目の当たりにして、韓国・
中国の学生だけでなく、日本の学生も大きな衝撃を受けました。今は
穏やかに見える海がひろがり、かつては活気があったであろう生活の
場が夏草に覆われ、あちらこちらで重機の音が響く風景の中で、
ガイドさんは災害直後の様子と、今なお続く不安と、そして、それでも
立ち上がろうとする人々の声と気持ちを伝えてくれました。
ガイドさんにかつての町の中心部や、営業や操業を再開した会社や
工場のある地域を案内していただき、復興の進み具合なども見ることが
できました。ガイドさんと別れたあと、防災対策庁舎などを訪れ、南三陸
町をあとにしました。
宿舎に帰り1日目の意見交換ミーティングを行ないました。学生からは
これまで報道で知り得た内容と自分の目で見た現実との違いに驚き、
津波の大きさ、被災者の苦しさを知り、さんさん商店街や町内で生活し、
活躍する人々の姿に胸を揺さぶられたなどの話がでました。
8月2日は石巻市市内で活動をおこないました。地元のボランティアの
方にガイドしていただき、バスの中から石卷漁港や雲雀野地区を見て、
門脇小学校から日和山まで津波襲来時に避難する人々がたどった
ルートを実際に自分たちの足で歩きました。
その後、場所を移して、地震の前から石卷で暮らし、現在ボランティア
活動に積極的に参加されている中国出身の方のお話をうかがいました。
大地震の際の自分や家族の行動、避難時の体験、そのなかで仲間や
市民たちと気遣い合い、助け合いがあったことを話していただきました。
学生からは、震災直後のボランティアのあり方や大きな被害にあった
石卷から離れて暮らすことは考えないのかなど、非常に多くの質問が
出て、そのひとつひとつに丁寧にお返事をいただきました。お話の中には
石卷とそこで暮らす仲間への厚い信頼と強い愛着があふれ、私たちの
心を打ちました。
午後からは雄勝町へ移動し、漁村の古民家のなかで、避難所運営体験
としてHUGゲームをおこないました。
HUGゲームとは、一枚の大きな紙を避難所(体育館)に、小さな
カードを避難者に見立てて、カードに書かれた避難者の属性や条件に
気遣い、付属施設も有効に使いながら、避難所をどう運営してゆくか、
避難者の生活をどう支えてゆくかを疑似体験するゲームです。老人や
子どもを抱える家族・外国籍の住人・旅行者など、条件の異なる避難者が
次々と訪れ、支援物資の到着やマスコミの取材など、避難所で起こる
さまざまなイベントに対処してゆきます。古民家を学習体験の場として
運営している代表の方の指示を仰ぎながら、学生たちは4つのグループに
分かれて、それぞれゲームをおこないました。大きな災害はいつどこで
起こるか分かりませんし、自分が被災者・避難者になるかもしれず、その
際には仲間との協力や理解、迅速な判断力が必要とされ、それでも困難な
状況があることをシュミレーションできる機会でした。人々の協力を得る
力、支え合う力、判断し整理し活用する力、困難に耐え対応する力を
考えるヒントがたくさんありました。
(続く)