EIZO NEWS
2026.4.6
2025年度 卒業研究の「学会賞」「特別賞」発表!
2025年度の卒業式・学位授与式が、3月20日(金・祝)に執り行われました。
ご卒業・ご修了おめでとうございます!!!
「映像学会」とは・・・
映像学に関する学術の研究と普及を目的とした学会で、映像学部・研究科に属する教員、映像学部生・研究科院生、卒業生・修了生などから構成されています。
学会賞とは、その映像学会から、学びの集大成でもある「卒業研究」「修士研究」に授与される栄えある賞です。
最も成績が優秀と認められたものに「学会賞」、今後の活動を期待し表彰される「奨励賞」が授与されます。
【受賞作品をご紹介】受賞理由もぜひあわせてご覧ください!!
2025年度 立命館映像学会 優秀研究顕彰(受賞者・受賞理由)
◆「学会賞」(修士研究)
氏名: WANG Dayi
題目: 複合現実感技術を用いた気象現象学習教材の研究
受賞理由:
本研究は、地学教育における気象現象の理解困難という広く認識される課題を出発点とし、従来の模式図中心の教授法では学習が断片化しやすいという問題を的確に捉えている。気象現象がもつ大規模性・動的変化・多要素的性質に対し、ARと物理カード操作を組み合わせた構成主義的学習体験を導入するという着想は独創的であり、テーマ設定の妥当性も高い。
既存のAR/VR教材研究を広く参照しつつ、本研究が「気象現象そのものの理解」を中心課題に据える点で、空白領域を補完する意義が明確である。特に、低学年層にも対応可能な操作性、身体的操作とAR表示の統合など、既存研究には少ないアプローチを打ち出しており、関連研究との差異と到達点も適切に整理されている。
制作物の内容は、技術選択・インタフェース設計・アルゴリズム構成・実験的検証が研究目的と整合的に記述され、説得性が高い。センサ方式や表現手法の試行錯誤を省略せず示し、教育的観点(認知負荷・直感性・年齢適応性)に基づいた判断が一貫している点は特に評価できる。
また、Unity・Arduino・Vuforiaなどのツールを目的に応じて適切に使い分け、必要な箇所では独自アルゴリズムを構築するなど、習得した技能を十分に活用している。専門シミュレーションとの比較検証を通じて限界を認めつつ妥当性を検証する姿勢も研究として誠実である。
文献・政府資料・学術論文など、一次情報を中心とする幅広い情報収集が行われ、学際的研究としての基盤が十分に整えられている。さらに、制作物の設計意図・技術選択・操作体験に関する考察が論文内で論理的に展開されており、制作と記述の関連性も明確である。総じて、本研究は教育×複合現実感×インタラクションを統合した実践的で独創性の高い取り組みと評価できる。
◆「学会賞」(論文)
氏名: 岡田 悠花
題目: 東映太秦映画村の持続可能性-歴史系テーマパークの競争戦略比較と「エデュテイメント」を軸とした提言-
受賞理由:
本研究は、京都にある東映太秦映画村を中心に、競争戦略論の視点から、「歴史」を取り扱ったテーマパークの現状と展望について比較分析を行ったものである。
本研究の優れた点は、文献調査に加え、東映太秦映画村に関係する複数階層の経営・運営関係者を対象に半構造化面接を実施し、現場の意思決定や将来構想を多角的に捉えようとしたことにある。このような形で面接調査に対応してもらえることは、通常極めて困難だ。にもかかわらず、それが実現したのは、学部で提供された社会連携プログラムの複数受講や、関連映画祭へのインターン参加を経て、調査対象者や組織との信頼関係を築いてきた結果であると考えられる。
分析では、歴史を主題とした他のテーマパークと比して、東映株式会社京都撮影所と隣接している点に着目している。この特徴により、映画制作に関心を持つ人々や映画業界のファンが集まる場となり得ること、また一般来場者には没入型エンターテインメントを提供しつつ、映画文化の発信拠点としての役割を担える点において特異性があると指摘している。そのうえで、発展の端緒として「エデュタインメント」をキーワードに据えている。当該概念が進展している海外の例を参照しつつ、映画村の特徴であるファミリー層、学生層、時代劇ファン層といった多様なターゲットに応じ「遊びながら学ぶ」体験を重視した展開が重要であると結論づけている。さらに、隣接する撮影所との連携により、子供向け、初心者向けの時代劇制作体験プログラムから、社会人向けの職業体験や、専門的知識を有する層に向けた高度な職業体験など、多様なプログラムを提供できる可能性を示した。
これらの提言は、当学部で得た教育体験を踏まえて導かれたものであり、その視点から半構造化面接で得られた知見を説得力のある形で概念化することに成功している。このように本研究は、専門研究者やジャーナリストでも得難い知見を体系的に整理したものであり、当人にとって当学部における学びの集大成になったと評価できる。
◆「学会賞」(制作物+解説論文、小論文)
氏名:江頭 美咲
題目: 架空の世界における色彩設計について
受賞理由:
本作品は、CGアニメーションによる約3分の短編映像作品である。独創的な架空の世界を考え出し、それを美しいグラフィックで表現することに主眼を置いた作品で、各シーン、各ショットごと、隅々まできちんと丁寧に作り込まれており、美しく抒情的な作品としての完成度は非常に高い。作品全体を貫く印象的で美しいグラフィックは、単に直観とセンスだけで創造するのではなく、メインカラー、サブカラー、アクセント・カラーといった色の要素についてしっかりと勉強したうえで、それらをもとに考え出されたものであり、色彩をきちんと設計したことで生み出された作品であることがよくわかる。そのため、どのショットを切り取っても、一枚の絵画としても十分に成立しうるクォリティを持っている点も素晴らしい。加えて、そうした色彩を活かす世界観についても、キャラクターや背景のデザインなどに独自の感性がしっかりと反映されており、非常に作家性の高い作品となっている。本作品は、先日開催された「つくばショートムービーコンペティション2026」において「ユニライフ・スチューデント賞」を受賞するなど、外部での高い評価も獲得している。今後も、プロのCGクリエイターとしての江頭さんの活躍に大いに期待したい。
◆「奨励賞」
氏名: 堀口 景司
題目: PCゲームプレイヤーはUIのどこに不満を感じるか:Steamのユーザーレビューによる分類とジャンル別特徴の考察
受賞理由:
本研究は、Steamに投稿された日本語ユーザーレビューを対象として、PCゲームプレイヤーがUI/UXのどのような点に不満を抱いているかを分類し、さらにジャンル別の特徴を明らかにした研究である。277タイトル、19万件以上に及ぶレビューを収集し、自然言語処理技術(word2vec)とLLMを組み合わせてUI関連レビューを抽出したうえで、16,779件のネガティブレビューを分析対象としている。
とりわけ高く評価できるのは、膨大なレビュー群に対して量的分析と質的分析を組み合わせ、人間による解釈とLLMを併用しながら、UIに関する不満を6つの大グループ、23の小グループに整理した点である。さらに、「アクション」「レース」「パズル」の3ジャンルについて分布調査を行い、全ジャンルに共通して「バグ」が多い一方で、それ以外の不満はジャンルによって異なる傾向を示すことを明らかにした。この結果は、ゲーム開発におけるUI/UX設計に対して具体的な示唆を与えるものである。
本研究は、ゲーム研究とUI/UX研究を接続するとともに、ユーザーレビューという大規模データから実践的知見を導き出した点で一定の学術的意義が認められる。また、LLMを質的分析の補助として活用する方法論的工夫にも現代的な新規性が認められる。加えて、学術的関心と産業的実践の双方に接続しうる視点を備えており、今後のゲーム研究や開発現場への展開可能性も示している。以上より、本論文は学部卒業論文として優れた達成を示しており、奨励賞にふさわしい成果である。
◆「奨励賞」
氏名: 生田 彩香
題目: ゲーム実況における「推し」の形成過程についての質的調査―なぜ視聴者の目的はゲームから実況者に変化するのか―
受賞理由:
本研究は、現代のゲーム文化において不可欠な存在となった「ゲーム実況」を対象に、視聴者の関心がゲーム(コンテンツ)そのものから実況者(パーソナリティ)へと移行し、「推し」の感情が形成されるプロセスを、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)を用いて体系的に解明した研究である。本論文の特筆すべき点は、個人の情動的な愛着という主観的な現象を対象としながら、先行研究を踏まえ、客観的な分析を行った点にある。12名の調査協力者に対する半構造化インタビューから得られた少ないとは言い難い逐語録を精緻に分析し、その変容を「形成・維持・深化」の三段階からなるモデルとして構築したプロセスは、学部卒業論文として非常に高い水準にあるといえる。特に、情報過多の時代において、視聴者が特定の実況者を「信頼のショートカット」として機能させ、コンテンツ選定における認知負荷を最小化する「推しブランドによる消費の最適化」という視点は独創的である。さらに、プラットフォームのアルゴリズムが個人の視聴習慣を加速させる技術的特性に対し、「毎日・定時投稿」という供給の安定性や「ブランドの一貫性」を維持する実況者側の戦略が、視聴者の日常へ不可逆的に統合されることを示した。このように、本研究は単なるファン心理の分析に留まらず、メディア特有の構造的要因と実況者の活動戦略が相互に作用するメカニズムを指摘した。映像学の知見を現代的なネット文化の分析に適応させ新しい視座を提示した成果は、高い学術的価値を持つものとして顕彰に値する。
受賞された皆さん!おめでとうございました!!!!
今後の皆さんのご活躍を祈念しております。
アクセス・お問合わせ

