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TOPICS & EVENTS

11.09

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2021

G-ALPs企画「フランス留学からのキャリア形成-株式会社ビームス 藤田佳大氏を迎えて」が開催されました

1014日(木)1620分より、Zoomにて、G-ALPs(Global and Active Learning Programs)の一環として、「フランス留学からのキャリア形成-株式会社ビームス 藤田佳大氏を迎えて」が開催されました。

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 この企画では、学生時代にフランスのボルドー政治学院に留学された経済学部卒業生の藤田様をお招きし、留学の経験、そしてその経験が未来の仕事とどう繋がったかについて、ご講演頂きました。

 「フランス留学」「アパレル業界」という経済学部生にとってはかなり馴染みにくいテーマであり、またコロナ禍のなかで留学自体が思い描けない状況にも拘わらず、経済学部の枠を超えた参加者も加え、計30名ほどの聴衆が参加してくださいました。

G-ALPsの企画としてはかなり毛色の変わったテーマと講演者でありながら、実際にその生を生きている講演者の語る言葉には説得力があり、講演会は、講演者の生きた時間を聴衆も共有することで、単なるキャリア形成の指南に留まらず、それぞれをそれぞれの人生に向き合わせる機会を提供するような場となりました。

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藤田様は、パワーポイントのスライドを用い、丁寧なお話しぶりで進行してくださいました。まず、簡単な経歴の提示の後、現在のお仕事をかなり詳細に紹介してくださいました。華やかに見えるアパレル業界の内部など、私たちの想像も付かない世界なので、主題としても極めて刺激的でしたし、実際、その仕事の中身も、自身の服装を会社のブログで日々公開するなど、どこまでが仕事なのか判別できない独特のものでした。そのような極めて異質な職種の紹介から、急に話題がご自身の立命館大学1回生の時へと遡行し、順次、フランス語を履修した経緯、ボルドー政治学院での留学生活、帰国後の就職活動へと話題が進展していきました。

核心となる留学体験と就職の話は極めて示唆的でした。帰国直後には、同級生達に触発されて就職活動を急遽開始し、その時点では商社に内定をもらったこと、他方、そうやって周囲と同じ時計に合わせて人生を歩むことに疑問が生じ、仕事に対する自分の嗜好を熟慮するため、もう1年大学に留まることを決意したこと、そして、アパレル業界に目標を絞り込み、ついに難関を突破してBEAMSに入社できたことなどが、落ち着いた口ぶりで語られました。

本講演のテーマは、まさしく、留学の意義という本質に迫るものであるように思われました。藤田様も、日本に帰国したとき、日本はなんて良い国だと思ったと語られました。同時に、周囲を流れる日本の時間に慌てて自分を合わせ、そのリズムで生活を再開したとき、そのような時間に流される自分に違和感も抱いたとも語られました。その違和感こそ、留学体験がもたらしたものだったのでしょうし、また、その違和感を深く突き詰めた結果、現在のキャリアが拓けたとも言えるでしょう。大学へ入学し、授業を受けたり、アルバイトをしたり、友達と触れあいながら3年を過ごし、時期が来れば皆と同様に就職活動をし、それなりに就職が決まり、卒業していくというのは極めてオーソドックスな大学生活です。ただし、そのような日常を生きている私たちは、その日常を生きていることを意識さえしていません。その意味で、「俗なる」時間を生きているとも言えます。他方、留学し、誰も知らぬ土地で、おぼつかない言語を頼りに、見知らぬ大学や社会の制度を理解し、それに順応していく時間は、一瞬一瞬が緊張感に満ちた、自分の生を主体的に生きる「聖なる」時間です。藤田様の講演を通じ、そのような聖なる時間を生きることこそが留学の本質であるのが浮かび上がってきました。そのような聖なる時間の中では、日本の日常の時間から引き離され、その俗なる時間と、その時間を生きていた自分自身を客体化せざるを得ません。そして、そのような体験をしてしまった後では、たとえ帰国しても、日常の時間への構えが少し変わってしまうのです。

アンケートでは、「自分の興味を突き詰めていけばここまで道を広げることが出来るのだと勉強になりました」「今はコロナ禍で留学を考えることは難しい状況ですが、藤田さんが授業外でも勉強されていたということを聞いて、今できることを頑張ろうと思いました」など、自身の生活を見つめ直し、これからどう頑張るかを述べるような前向きな意見が見られました。

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(本講演主催者の細貝 健司教授)

この講演会を流れる時間には、少しだけ「聖なる」要素が含まれていて、それを敏感に感じ取った人たちは周囲を流れる時間を少しだけ客体化したのではないでしょうか。質疑応答の時間でも「フランス語への自分の向き合い方はこれで良いと思うか」等の、日常に違和感をおぼえている人たちの質問がありました。私たちは日常の俗なる時間に身を委ねて生きています。それは社会生活を生きる必然でもあります。けれど、そこから身を離す異質な時間を生きるのも時には必要で、例えば留学はその機会を提供してくれます。また、その体験は、その後の人生のふとした機会に蘇り、そのたび日常に異なる彩りをもたらしてくれます。例えば、今回の講演者の藤田様は、公演後、今回の講演について、「今の職へ就くまでに何を考えていたのか、今の自分はどうなのか、改めて見つめ直す良い機会」になったとメッセージを寄せてくださいました。今回の講演を通じ、講演者の人生にも、聖なる時間がほんのひととき回帰したのかもしれません。

本ホームページのニュースでは、引き続き多様なG-ALPs企画について紹介いたしますので、ぜひご覧ください。

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