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【細谷ゼミ】「戦争と国家・社会・個人の関係」を考える歴史学習の一環として、満洲引揚者の方を招いた講演会・シンポジウムに参加しました
2021年11月27日(土)、立命館大学経済学部細谷ゼミと立命館大学社会システム研究所の共催企画「満洲引揚げの経験から現在(いま)を考える―黒田雅夫さん(元第十一廟嶺京都開拓団)をお招きして―」が、立命館大学朱雀キャンパス(京都市中京区)にて開催されました。当日は、日本経済史を学ぶ細谷ゼミの2回生18名のほか、経済学部教員、学外からも一般の方が多数参加し、満洲引揚者の黒田雅夫さんとそのご子息・毅さんの講演を聞きました。
黒田雅夫さんは現在84歳(1937年生まれ、亀岡市在住)で、京都府内の小・中学校を中心に、絵画と語りを通して平和の尊さを子供たちに伝える「語り部」として活動されている方です。講演では、太平洋戦争が激化していた1944年6月、両親・兄弟の家族4人で、京都市の中小商工業者を主体に編成された満洲開拓団の一員として満洲国吉林省(現在の中国東北地方)に移住し、極寒の異国の地で狼や「匪賊」の襲撃に脅える傍ら、父親が軍隊に召集されたことで家族は心細い生活を送ったこと、日本から祖父が応援にやってきたことなど、引揚げ以前の状況が語られました。当時、雅夫さんはまだ8歳の少年でした。
そしてこのあと、ソ連軍の進攻が始まる1945年8月9日以降、筆舌に尽くしがたい逃避行・収容所生活で祖父と母親を相次いで失ったこと、弟が中国残留孤児として中国大陸に取り残されたこと、一方、自身は戦争孤児となり路上生活を経ながらも多くの人の助けを得て46年7月にどうにか舞鶴に引揚げることができたこと、生き別れになった弟・孝義さんとは終戦から約40年後に再会できたことなどに話が及びました。学生は、現在の日本での平穏な日常の暮らしからは想像し難い過酷な引揚げ体験、「人間の死」や暴力が常に隣り合わせにあるような時代の話に息をのみつつ、約1時間にわたる黒田雅夫さん・毅さんの話に真剣に耳を傾けていました。
講演終了後は、学生を含めた参加者から感想・コメントの発表があり、あらためて歴史を学ぶことや生きることの意味、家族の大切さ、人と人とのつながりなど、黒田さんの満洲引揚げの経験を「いま」を生きる私たち一人ひとりがしっかり受け止める必要があることを確認しました。とりわけ、学生にとっては、世代の異なる戦争体験者の話を直接聞くことは、大学での学びの深化や自己の成長につながる良い機会になったようです。終了後は「黒田さんの話が聞けて良かった」、「文献や知識だけで歴史を理解したつもりになっていた」、「参加して良かった」という声が多く聞かれました。