TOPICS & EVENTS
経済学会セミナーシリーズ「陸井三郎を語る――ベトナム反戦と国際派知識人の軌跡」にゼミで参加
2025年7月9日(水)、経済学会セミナーシリーズ「陸井三郎を語る――ベトナム反戦と国際派知識人の軌跡」に大橋陽ゼミで参加しました。
本セミナーシリーズでは、河内信幸先生(中部大学名誉教授)と藤本博先生(明治学院大学国際平和研究所研究員・元南山大学外国語学部教授)のお二人にご登壇いただきました。お二人は、長い間陸井の謦咳に接した経験をお持ちで、このたび、『ベトナム反戦運動のフィクサー陸井三郎――ベトナム戦争犯罪調査と国際派知識人の軌跡』(彩流社、2025年)を上梓され、各方面から多くの注目を集めています。
というのも、2025年の今年は、ベトナム戦争終結50年の節目であり、陸井三郎(くがいさぶろう)が亡くなって25年に当たる年でもあるからです。そこで、本セミナーシリーズは、国境を越えて平和運動を支えた国際派知識人・陸井三郎の思想と実践を、現代的視点から再検証することを目的に開催されました。
まず河内先生が陸井三郎の生涯を振り返り、①特定の組織に属さない在野の研究者でありながら卓越した実務能力と語学力を駆使した点、②国内外の平和運動や知識人たちをつなぐ「フィクサー(調整役)」として重要な役割を果たした点、③その活動が肩書や組織の枠にとらわれない真の国際的知識人の姿を示している点、という3点を紹介しました。
続いて藤本先生は、陸井が深く関与した「ラッセル法廷(国際戦争犯罪法廷)」の歴史的意義を詳述しました。この法廷は、国家が隠蔽する戦争犯罪を市民が主体となって調査・告発する画期的な試みでした。法廷では、アメリカによる北ベトナムの非戦闘員や施設への攻撃、ベトナムが最新兵器の「実験場」と化していた実態などが具体的な証拠と共に明らかにされました。藤本先生はこの法廷を、国家のプロパガンダに対抗し市民の力で真実を追求した運動の先駆けであったと評価しました。
お二人の報告後後の質疑応答では、参加者から現代の国際紛争における戦争犯罪や、市民による国際連帯の可能性について活発な質問が寄せられました。私は、「陸井がアメリカ政府等からマークされ、行動に何かしらの制約がつけられていたのではないか?」と質問しました。それに対し、アメリカ入国のためのビザ発行に難儀し大変な時間を要したという回答をいただきました。
本セミナーシリーズでは、陸井三郎という一人の知識人の活動を通して、過去の戦争から教訓を学び、市民が主体となって平和を創造していくことの重要性を再確認する貴重な機会となりました。彼の生き方は、現代に生きる我々が国際社会とどう向き合うべきかについて、多くの示唆を得られました。
最後になりましたが、陸井三郎は立命館大学とも縁があります。彼の貴重な文書は、ご家族により立命館大学国際平和ミュージアムに寄贈されたからです。この秋、お二人も関わって国際平和ミュージアムでベトナム戦争写真展が予定されているので、私たちも足を運ぶ予定です。
執筆:久保颯音(大橋陽ゼミ3回生)