着任予定教員紹介

月の石をで分析し
地球形成のプロセス解明につなげる

長岡 央
Hiroshi NAGAOKA
総合科学技術研究機構 准教授

PROFILE

2008年早稲田大学 理工学部 物理学科 卒業、2010年早稲田大学大学院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻修士課程 修了、2013年同大学院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 博士後期課程 満期退学。博士(理学)。
2013年 早稲田大学 先進理工学部 物理学科 助手、2016年早稲田大学 理工学術院総合研究所 次席研究員、2018年国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 JSPS特別研究員、会津大学 コンピュータ理工学研究科 特任准教授、2021年特定国立研究開発法人理化学研究所 開拓研究本部 榎戸極限自然現象理研白眉研究チーム 研究員を経て、2023年より現職。
専門は惑星科学、惑星探査、放射線核分光。論文誌Earth Planets and Spaceの編集委員等を務める。
リフレッシュは散歩。自宅から大学まで40分~50分、解析や論文のことを考えながら歩くことも。JAXAや理化学研究所への出張時は、高校時代から続けているテニスを昔の仲間と楽しむためにラケットを持参する。

先生の研究の内容を教えてください

私が一番知りたいのは「地球はどのようにできたのか」ということです。太陽系が誕生し、小さな天体が生まれ、それが大きくなって火星や地球のような惑星になっていったとされるプロセスを体系的に理解したいという気持ちが、私の大きなモチベーションになっています。
ところが、地球は今も活動中の天体なので、常に情報が新しく塗り替えられ、地球ができた頃の情報はすでに消えてしまっています。一方、月には、44億年~45億年前の、地球にあるものより古い石が残っています。地球と月は45億年もの間、隣り合って存在してきたので、地球では得られない過去の情報を月から得られないかについて探り、地球形成のプロセスを解き明かすのが究極の目標です。現在は、主に放射線核分光の手法を使って月の石を分析し、同時に、今後の月探査に備えた観測装置の開発にも取り組んでいます。

先生の研究室に入ると、どのようなことを学び、どのような研究テーマに取り組めますか?

月から持ち帰られた隕石やリターンサンプルの分析が大きなテーマになります。今後は、月から石を持ち帰るための月探査プロジェクトにも関わりながら、そこに残された地球と月ができた当時の情報を抽出し、我々の住む天体がどのようにしてできたのかについて新たな知見を得たいと考えています。
人類が月に行き、生活するためには、月の環境を理解する必要があります。月面環境を利用する目的や動機に適した環境情報を過去や今のデータから抽出することも大切なテーマです。また、月面環境を利用しようとする人たちに対し、価値のあるデータを的確に提供することも重要なテーマだと考えています。今後、月の利用は、サイエンスの世界に閉じることなく、さまざまな分野へと広がっていくでしょう。その動きを支えるためにも、月を利用したい人や、そこからさらに遠くへ行こうとする人たちに対して、月面がどのような環境なのかをしっかり理解してもらえるような科学的知見を示し、人類にとって安全で有益な月面利用の発展に貢献できる研究を進めたいと思っています。
科学的な追究がしたい学生にも、社会実装に関心のある学生にも、取り組むべきテーマがある研究室だと思います。

先生の研究室で学んだ学生は、修了後、どのようなフィールドでの活躍が期待できますか?

研究者を目指し、研究を継続する人が出てきてほしいと思います。探査機のデータから必要な情報を抽出しつつ、次に何が必要なのか、その先を見据えた上で適切に判断し、ミッションプロジェクトを提案できる人が育つと嬉しいですね。JAXAや産業技術総合研究所などの研究者も輩出できればと考えています。放射線技術は、地球観測、地球周回など、さまざまな分野で使われていますが、その応用分野をさらに拡大し、裾野を広げてくれることにも期待しています。
留学生に期待したいのは、自国の宇宙機関をリードできる研究者、宇宙機関がない場合は自らが立ち上げて、プロジェクトをリードする立場になることです。海外ではベンチャーがロケットを打ち上げることもあるので、ベンチャーを立ち上げるのも良いと思います。いずれにしても、自国の宇宙開発をリードしていけるような人材に育ってくれると嬉しいです。
大学院での学びは、答えのない中で研究に向き合うもの。難しい場面に遭遇することも多いと思います。とりわけ宇宙地球フロンティア研究科は、未知の領域を扱うだけに、より困難な課題に立ち向かう必要があると思います。それを乗り越えていく力は、社会のあらゆる分野で通用する力であり、それを身につけることがこの研究科の1つのテーマだと私は考えています。修了後は、その力を自分のフィールドで存分に発揮してほしいと思います。

月探査衛星かぐやでは月周回からの放射線計測を経験。
再び月での放射線計測から水資源探査や有人活動を見据えた環境計測を、
京都大学、理化学研究所らとともに目指す(MoMoTarOプロジェクト)。
図はガンマ線と中性子線を計測できる1Uサイズの小型放射線検出器のBBM。
どんな学生に研究室へ来てほしいですか?

月の謎を解明したい、月探査や宇宙探査に関わりたい、宇宙でこんなことがやってみたいなど、「これがやりたい」という明確なビジョンがあるといいですね。そして、研究科で学んだこと、培ったノウハウを将来も活かしたいという気持ちで来てもらえると、モチベーションが保てるのではないかと思います。
基本的な数学や物理ができれば、もしくは学ぶモチベーションがあれば、出身学部にはこだわりません。ある事象を解決するためには、いくつかのプロセスを経ることになりますが、その一つひとつに対応し続け、必要なことを学ぶのをいとわない忍耐力があればよいのではないかと思います。

MESSAGE

宇宙はすごく遠い存在だと思う人もいるかもしれませんが、実際には、宇宙に関わる人、宇宙につながる道筋は今すごく増えていて、以前よりずっと身近な存在になっていると思います。しかし、依然として宇宙は極限環境であり、私たち研究者にとっても何が起こるかわからないような未開の地です。でも、それを面白いと思える人、地上でできないことだからこそやってみようと思えるフロンティアスピリットを持った皆さんの挑戦をお待ちしています。