着任予定教員紹介
超小型人工衛星の開発で
宇宙利用の可能性を広げる
2028年4月より宇宙地球フロンティア研究科 研究科長就任予定
PROFILE
1983年、東京大学工学部航空学科卒業、1988年、同大学院博士課程修了、工学博士。
日本アイ・ビー・エムで人工知能や自動化工場に関する研究を行う。
1990年、東京大学航空学科講師。東京大学先端科学技術研究センター助教授、アメリカでの客員研究員を経て、2004年、東京大学航空宇宙工学専攻教授。専門分野は宇宙工学と知能工学。
2003年、世界で初めての1㎏人工衛星の打ち上げ成功後、現在まで超小型人工衛星 15 機の打ち上げに成功。
2012年~2022年まで内閣府宇宙政策委員会委員、基本政策部会長など歴任。
超小型人工衛星、宇宙システムの知能化・自律化、革新的宇宙システム、航法誘導制御等の研究と教育に携わる。
スポーツが好きで、週に15キロ走り、横浜~箱根など長距離を歩くのも好き。研究室の夏・冬の合宿でもテニスやサッカー、スキーなどを楽しむ。『2001年宇宙の旅』を28回鑑賞した映画好きで、SF映画の見どころを解説する映画会も好評。牛肉も好きで、食べ比べに励んだ結果、一部の肉は味で産地や飼料の違いがわかるようになりつつある。
先生の研究の内容を教えてください
一番大きな柱は超小型人工衛星の研究です。2003年に世界で初めて1㎏の超小型人工衛星の打ち上げに成功しました。このことが、世界各地で小型人工衛星の開発が進み、さまざまな用途や宇宙ビジネスに使用されるきっかけとなりました。
教育や工学実験を目的とした人工衛星に始まり、宇宙から星や銀河を観測する科学人工衛星、地球の広い範囲を観測することによって災害の監視や農林水産業に関わる監視にも役立つ地球観測人工衛星の開発にも取り組みました。企業との連携でエンターテインメント小型人工衛星にも挑戦しています。低コストの超小型人工衛星は、宇宙開発に取組もうとする国への開発指導にも有用です。
何機かの人工衛星を編隊飛行させることによって、小型人工衛星では不可能だった分解能の高い銀河や星の観測にも挑戦しています。ミッションを人工衛星の設計に落とし込んでいくミッション創造工学と呼ばれる分野で、共同で取り組む理学の先生とも議論を深めノーベル賞も期待できるような高度な編隊飛行人工衛星まで開発したいと思っています。
さまざまな目的に沿った、さまざまなタイプの超小型人工衛星を開発することによって、国や大企業だけでなく、より多くの人が宇宙開発に参加し、社会課題の解決、技術の進歩、教育、ビジネス、宇宙科学探査などにつながる環境づくりに貢献したいと考えています。
先生の研究室に入ると、どのようなことを学び、どのような研究テーマに取り組めますか?
人工衛星は、通信、姿勢制御、構造、熱、コンピューターなど、さまざまな技術を寄せ集めたものなので、多様な分野の素養を持つ人が必要です。
まず大事なのは人工衛星全体のアーキテクチャ、つまり、どのようなミッションのためにどんな人工衛星をつくるかという上流の設計の部分です。そして、人工衛星を打ち上げる際の軌道設計、例えば、いかに少ない燃料で遠くまで物が運べるか、などは一つの研究テーマになり得ます。そして、姿勢制御も重要なテーマです。例えばカメラを特定の方向に向けるなどのミッションが可能な状態を維持するには、人工衛星が自分の姿勢をしっかり制御する必要があるからです。
1つの技術の追究が、他の技術に悪影響を与える場合もあります。例えば、姿勢制御を突きつめることで、熱の入り方が変わったり、構造面の不具合を生じたりする場合です。こうした分野間のせめぎ合いをうまく調整し、バランスの取れた設計にまとめることもテーマとなるでしょう。また、人工衛星は一旦打ち上げられると、故障しても修理に行くことができません。何が起きても自分で対処し生き残れる高度なシステム設計も重要な研究テーマです。
いずれにしても、研究して終わりではなく、実際のプロジェクトで使えるようなものを開発し、フィードバックを得ることによって、また次のテーマにつなげていってもらいたいと考えています。立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC)のプロジェクトの動きを知ったりあるいはそれに参加したりすることも、とてもよい勉強になると思います。
先生の研究室で学んだ学生は、修了後、どのようなフィールドでの活躍が期待できますか?
JAXA、また人工衛星に取り組む大企業では即戦力として活躍できると思います。私が今後、大切だと考えているのはベンチャーです。宇宙地球フロンティア研究科では、ベンチャーとの共同研究も経験できるので、ベンチャーに入社するだけでなく、超小型人工衛星を使って新しい世界をつくり出すベンチャーを起業する修了生が出てきたら嬉しいです。大学とベンチャーとの協業も実現したいと考えています。
人工衛星はさまざまな知見の集積であり、技術以外の分野、例えば、国際交流、宇宙法、ファイナンス、ビジネスなどに大きな波及効果を及ぼすものです。私の研究室で学ぶことは、これら幅広い分野について、実際のプロジェクトを動かしながら学ぶということです。例えば、さまざまな国と交渉して自国のプレゼンスを発揮し、ルール化や標準化を主導するなどの場面で活躍できる国際人材としての素養を、人工衛星づくりの中からも育むことができると思います。
地上の分野でも、継続して動き続けるシステムづくりなどに人工衛星の技術を応用することは可能ですし、ここで学んだシステムズエンジニアリングは自動車製造、プラントなどさまざまな分野で活かせると思います。
留学生には、自国の政府と協力して宇宙開発に携わる人材になってほしいです。政府の機関に入ったり、起業する際も政府と組んでベンチャーを立ち上げたり、自国の宇宙への取組みを広げるような仕事をしてほしいなと思います。
どんな学生に研究室へ来てほしいですか?
人工衛星を設計するためには、数学、物理の基礎的な知識は必須です。つくりたい人工衛星を設計するために必要だから目的志向的に一生懸命勉強することになりますが、その基礎的な素養は確実に必要です。大事なのは、まず「絶対に実現させたいこと」があり、そのために必要なことなら何にでもチャレンジするという強い気持ち。こうした問題解決への強いマインドを持った学生に来てほしいと思います。
また、宇宙開発には長い期間がかかります。息切れすることなくミッションをやり遂げる力、執念と言ってもいいような力が求められます。チームワークも大切です。チームで物事を進める際には、時には衝突が起こることもありますが、ぶつかったままでは答えは出ません。それぞれ主張しながら、最後は全体のために妥協していくというマインドも必要です。このチームをマネジメントするリーダーシップも必要です。これらを実際のプロジェクトの中で身につけようという意欲のある人にぜひ来てほしいです。