着任予定教員紹介
天体内部の物質進化をひもとき
月資源の利用につなげる
宇宙地球探査研究センター(ESEC) センター長
PROFILE
1995年、東京大学大学院理学系研究科鉱物学教室で博士(理学)取得。
ブレーズパスカル大学(フランス)研究員、秋田大学助手・講師、大阪大学准教授を経て、立命館大学総合科学技術研究機構 教授(現職)。
JAXA月探査「かぐや」計画をはじめとする複数の月探査プロジェクトに参加。小型月着陸実証機「SLIM」に搭載されたマルチバンド分光カメラ(Multi-Band Camera:MBC)や2028年度打ち上げ予定の月極域探査機計画「LUPEX」の無人探査車に搭載される近赤外画像分光装置(Advanced Lunar Imaging Spectrometer:ALIS)の開発リーダーを務める。
月の科学に関する著書が複数あり、『月はぼくらの宇宙港』(新日本出版社)は2017年度の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(中学校の部)に選定。
興味がわいたら何でもやってみる性格で、50代でスケートボードを始める。近所のスケートボードパークで、肋骨を骨折しつつも若者やチビッ子に教えてもらいながら技に挑戦している。南極昭和基地でスケボーをやった初めての人(かもしれない)。
先生の研究の内容を教えてください
もともとは隕石の研究をしていました。隕石にはさまざまな種類がありますが、特に関心があったのは、「分化した隕石」、かつて小惑星の内部で岩石が溶けてマグマが発生し、マグマから結晶が分離して内部構造ができた天体のかけらです。
地球も、誕生初期にはマグマの海のような状態だったと考えられています。マグマが冷えていく過程では、温度によって異なる鉱物が次々に生まれ、沈んで層をつくります。そのたびに、残ったマグマの組成もどんどん変化して、天体の構造ができていくのです。
私の興味は、天体の中で物質がどのように変化し、移動していくのかというプロセスにあります。それは、天体がどのようにできたのかを解明することにつながるからです。同様に、今、主に取り組んでいる月の資源利用のための研究にもつながっています。人類はこれから、月にあるとされている水資源や鉱物資源を利用する時代に入るでしょう。資源がなぜそこにあるのか、どのくらいあるのかを知るためには、月の内部で起きた物質変化のプロセスを知ることが必要なのです。
先生の研究室に入ると、どのようなことを学び、どのような研究テーマに取り組めますか?
月の「永久影」という極低温の場所には、氷になった大量の水資源があると予測されています。電気分解で水素と酸素にすれば、月探査機が地球に帰る燃料、火星など次の惑星に行く燃料にもできると期待されています。私は今、その水が、どこから発生してどのように移動し、そこに溜まったのか、放置するとどうなるかなどを室内実験や観測で突き止めようとしています。私の研究室に入ると、例えば、そんな実験に参加することになるでしょう。隕石や月惑星探査データを分析し、天体がどうやってつくられたかをモデル化することなどにも取り組めると思います。
私の研究室では、実際の自然現象をモデル化して再現し、仮説を検証すること大切にしています。モデルが誤っていれば予想外の結果が出て、自然に「間違っている」と教えられる、その体験が大切です。また、火山など自然フィールドでの調査も重視しています。自然から得られるはずの多くのデータから必要なものを自分で選び取る力が身につくからです。こうした実験やフィールドワークを通じて、納得いくまで検証を重ねながら自然と答え合わせをする経験を積み、宇宙探査にも挑戦してほしいと考えています。
研究室での学びに、立命館大学 宇宙地球探査研究センター(ESEC)の研究成果をどう活用されますか?
ESECが推進する宇宙探査プロジェクトに何らかの形で関わることができるでしょう (プロジェクトによって国籍などの要件あり)。実際のプロジェクトではどのようなことが行われ、参加するにはどのようなマインドが必要かをぜひ間近で学んでください。
先生の研究室で学んだ学生は、修了後、どのようなフィールドでの活躍が期待できるでしょうか
自然現象を解明することによって社会問題の解決に役立てる力があれば、宇宙分野に限らず、あらゆる分野での活躍が期待できます。大学での基礎研究はもちろん、防災・気象関連の機関や企業で研究職に就くこともあるでしょう。原子力発電所に降る火山灰のリスクを評価するため、原子力規制庁にも火山の専門家がたくさんいます。
海外でプラント建設に携わることもできます。宇宙地球フロンティア研究科では、大規模プロジェクトをマネジメントできる人を育てたいと考えていますが、理学に軸足を置く私の研究室の学生なら、自然環境からのグリーン抽出に携わったり、化学プラントのトラブルに対処したり、物理や化学を駆使して問題を解決する仕事も想定されます。
宇宙分野での活躍はもちろん期待したいところです。海外からの留学生は、修了後、母国に帰って衛星データによる地球観測の即戦力として期待されている場合が多いでしょう。観測装置をつくること自体も大切ですが「何を測定するべきか」を考えられる力を身につけてほしいと思います。そうすれば、衛星や探査機を使って問題解決ができる、非常に有用な人材になれるのではないかと思います。
どんな学生に研究室へ来てほしいですか?
自然が好きで、その仕組みが知りたいという心を持つ人です。自然の複雑な現象を抽象化することにゾクゾクするような楽しさを感じるに来てほしいと思っています。
また、こうした基礎研究で明らかになったことを、実社会でどう活用するかに関心を持つ人にも来てほしいです。自然現象に興味がある人なら、理系のあらゆる学部、文系学部の人も歓迎します。基礎となる数学・物理・化学の知識は必要なので、自分のやりたいことに応じた学びは必要です。ただ、今の時点でその知識がなくても、この研究科に入りたいから学ぼうという意欲をもって努力することができればきっと道は拓けると思います。