心理プラスな人(修了生メッセージ)
2023
「事実」と「体験」の違いとは?患者さんの心に寄り添うために。
- 入口 翔太 さん
- 人間科学研究科 博士課程前期課程1回生
医療法人 総心会 長岡京病院 勤務(理学療法士)
入口さんが人間科学研究科に入った経緯を教えてください。
理学療法士は医学的リハビリテーションの専門職です。一人ひとりの対象者が日常生活や趣味などの活動を行う上で基本となる動作ができるように、目標を立てて適切なプログラムを作成し、一緒に取り組んでいくことが仕事となります。病気や怪我に対してどのようなスケジュールでどんなリハビリテーションをすればいいのかはマニュアル化されていますが、一人ひとりの気持ちや感情は異なるので、どうすれば患者さんと向き合い、寄り添えるのかということを常に悩んでいました。そんな時に書店で偶然手に取った森岡 正芳先生の著書で、ナラティヴアプローチについて知り、この先生のもとで学びたいと考えたことが立命館大学大学院人間科学研究科に進学するきっかけでした。
どんなことを研究しているのですか?
私が森岡先生のナラティヴアプローチに魅力を感じたのは、「事実と体験は異なる」というお話しに感銘を受けたからです。例えば、客観的な「事実」として患者さんの怪我や病気が重くなくても、本人の主観的な「体験」としては、傷病の程度以上に辛く、苦しいものであるケースがあります。ナラティヴアプローチは、本人の語るストーリーに寄り添う手法なので、これをリハビリテーションに活かせるのではないかと考え、研究をしています。
最初は自分と患者さんとの対話を記録して分析していましたが、職業病なのか患者さんを誘導してしまう面があったので、対象を他の理学療法士に変更して研究をしています。理学療法士同士で集まって、患者さん役を作ってロールプレイをして、互いの立ち場でどのように感じたのかを意見交換することは、多様性を高めるのではと考えています。まだ研究の着地点は探っているところですが、患者さんとのコミュニケーションのあり方を見つめ直す機会にもなるので、経験の浅い理学療法士への教育プログラムにも応用できる可能性を感じています。
これから入学する人にメッセージをお願いします。
私のようにフルタイムで勤務しながら大学院で学ぶのは大変だと思うかもしれませんが、時間は自分で作るものだと思います。私の場合は職場や家族の理解に恵まれているので、助かっている面が多々ありますが、忙しくても何とかなるものだと実感しています。人間科学研究科では多様な分野の専門家である教員と、多様な志を持つ大学院生が揃っているので、ここで学ぶことでしか見えない新しい世界があるはずです。自分の世界を広げたいという人はぜひ一緒に学びましょう。
(Profile)
高校までは空手に打ち込み、佛教大学保険医療技術学部を卒業後、理学療法士として医療現場に従事。現在は外来や入院中の患者さんのリハビリテーションを中心に携わっている。