心理プラスな人(修了生メッセージ)

2023

負の連鎖から抜け出して、地域で安心安全に生活できるように支援する。

前阪 千賀子 さん
応用人間科学研究科 博士課程前期課程修了

一般社団法人よりそいネットおおさか/大阪府地域生活定着支援センター 勤務

前阪さんが応用人間科学研究科に入った経緯を教えてください。

子どもを産んでからは10年以上、専業主婦をしていたのですが、精神科クリニックで勤務していたことが、心理に興味を持つ最初のきっかけでした。医療事務としての仕事を任され、行列ができるほどのクリニックになったので、私も患者さんにより高度な支援ができないかと考え、通信教育を受けて精神保健福祉士の資格を取得しました。久しぶりの勉強には刺激がありましたし、何より子どもに母親もがんばって結果を出すという姿を見せられたことに、大きな意味を感じました。

資格を取得して終わりにするのではなく、さらなる専門性を身につけるために立命館大学大学院応用人間科学研究科に進学するという選択をしました。


どんなことを研究したのですか?

もともとは家族をテーマに研究していたのですが、精神科クリニックの仕事も続けていた一方で、罪の問われた人の支援にも関心を持っていました。加害者支援に詳しい中村 正先生に相談したところ、地域生活定着支援センターを紹介していただき、あっという間にそちらに就職することが決まりました。研究テーマを家族から触法障がい者の福祉的支援に変更するにあたって、いったん休学して、現場で経験を積みながら研究テーマを深めていくことになりました。

2年間の休学後、実践の場で出会った人たち、特に犯罪を繰り返してしまった障がい者に注目して、その人たちの生い立ちから現状に至るまでのライフストーリーを論文にまとめました。


現在のお仕事について教えてください。

地域生活定着支援センターは厚生労働省の事業を担い、法務省と関係機関と連携しながら実施しています。私はセンター相談員として、刑務所や少年院などを出所する前の段階から社会復帰できるように支援する「出口支援」、逮捕勾留を機に福祉的支援によって生活再建する「入口支援」などに携わっています。例えば、釈放されても身寄りがない、家族には受け入れられないなど、さまざまな理由で行き場のない人たちがいます。私たちは対象である高齢者や障がい者を地域に橋渡しするだけでなく、地域生活がより豊かなものになるよう、地域の支援者さんとともに伴走していきます。

犯罪を繰り返す人たちは、誘惑や失敗を重ねながら漂流するように彷徨っています。私たちは犯罪そのものよりも、その背景にある生育歴や人生経験などに向き合って、負のループから離脱し地域に居場所や役割が見つけられるよう、細く長くつながり続けたいと考えています。


(Profile)

京都産業大学を卒業後、ホテルのブライダル業務に従事。出産などを経て、精神科クリニックの業務に携わりながら精神保健福祉士・社会福祉士の資格を取得。より高度な専門性を求めて、立命館大学大学院応用人間科学研究科へ。

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