心理プラスな人(修了生メッセージ)

2023

演劇の仕組みを応用した心理療法「ドラマセラピー」の可能性を探る。

松田 頼子 さん
人間科学研究科 博士課程前期課程修了

奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 博士後期課程1年

松田さんが人間科学研究科に入った経緯を教えてください。

ゼネコンの研究機関やバイオベンチャー企業で植物生態学とがん遺伝子研究に携わりました。その後、母校の恩師の声掛けで京都大学大学院の研究室で教務補佐をしていました。研究室では学生の質問に応え、ときにはメンタル面のサポートも実施。以前、劇団を旗揚げした演劇経験から、役を演じる方法をヒントに相談の対応をすること多く、それが「ドラマセラピー」という心理療法に近いことを知って心理学に関心を持つようになりました。立命館大学にドラマセラピストの先生がいることを知り、心機一転、人間科学研究科に進学して心理学を追究することを決めました。


どんなことを研究しているのですか?

「ドラマセラピー」とは、他者になって物語などを演じる、演劇の仕組みを応用した心理療法です。例えば、二人が対峙するドラマで配役を逆にすると、考え方の違いや相手の反応の違いなどが鮮明に感じられます。そうした気づきが心の癒やしや内面的な成長につながるという考え方です。

私はゼミナールでドラマセラピーの効果を映像化によって探る研究に挑戦しました。まずドラマセラピーを体験した人にインタビューを行い、内容を再現した動画を制作しました。そして作品を本人に視聴してもらいました。インタビューを受けて、自分の経験を視聴して、どのような心理的な変化があったかを修士論文にまとめました。

ドラマセラピーをもっと多くの人に知ってほしいという思いから、仮想現実でドラマセラピーを気軽に体験できるVR空間づくりを考えるようになり、今は母校の大学院で仕組みの開発をめざしています。先行研究が見当たらないプロジェクトは困難も多いですがやりがいも充分。立命館で得た知識や学問を楽しむ心を発揮し、みんながあっと驚くような成果をあげたいと思っています。


人間科学研究科に入学して良かったことは?

毎日の講義を待ち遠しく感じたほど、初めて本格的に学んだ心理学の専門科目はたいへん刺激的でした。例えば『社会病理学』では「脱学習」や「リフレーミング」という言葉を知りました。授業のたびに言葉を浴びて、物事の見方や知識を、視点を変えて捉え直す姿勢が定着したように思います。また、『臨床倫理』では、自分のなかに存在する多様な(時に相反する)価値観を受け入れて矛盾を生き抜くという、ユングの「超越機能」などを先生との対話を通して学びました。授業で得たこれらの考え方は、ドラマセラピーにも通じる要素で、私のコアの一部となっています。

また『産業心理学』で学んだ心理学をビジネスに活かす実践重視の考え方は新鮮でした。(現在の研究テーマを、より具体的にできたのは、高橋先生の授業を受けたからかもしれません)

履修できるだけ専門科目を受け、一生懸命に、また楽しんで学んだ2年間は「ドラマセラピー」の研究の確かな土台となりました。

各科目についての感想ではないですが、「入学してよかったこと」という問いに対しては、「私の目標(VRドラマセラピー研究)に興味を持ってくださる先生(『産業心理学』の高橋清先生)と友人に出会えたこと」もあります。現在も高橋先生のゼミに時々参加させていただいていますし、友人達は今の実験に参加協力してくれて、心理士としてコメントをくれます。それから、『社会病理学』は中村正先生、『臨床倫理』は村本詔司先生です。同じ科目名でも担当教員が違うと内容も違うようですので、お名前を書かせていただきました。


(Profile)

奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科修了。企業の研究所や大学の研究室勤務を経て、立命館大学人間科学研究科へ。現在は奈良先端科学技術大学院大学にて、VR技術とドラマセラピーの融合を研究。

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