教員紹介
HAYASHI Yugo
林 勇吾
- 所属領域
- 心理学領域(博士前期・後期担当)
- 職位
- 教授
- 専門
- 認知科学、人工知能、ヒューマンインタフェース・インタラクション
- 主な担当科目
- 演習、人間科学プロジェクト演習
- おすすめの書籍
- 誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論Donald A. Norman (著) 野島久雄ら (訳) 新曜社
現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。
帰国子女でアメリカに長く住んでいたこともあって、もともとは様々な文化の中での人間同士のコミュニケーションのテーマに興味がありました。しかし、大学での勉強を進めていく中で人間の知のメカニズムとは何か,社会システムの中で人はどのように協調的に振舞うのか、こういった「認知科学」の問い惹かれるようになりました。そして人間が行うインタラクションを観察・分析するなかで、実に多様な要因がコミュニケーションの最中に影響していることが研究の中で明らかになり、その要因について仮説を立てて実験的に検討することの重要性にも気づくようになりました。研究を進めていく中で人間のようにコミュニケーションができるチャットボット(人工無能)のプログラミングするようになりました。そして大学院では、人間の認知のメカニズムに基づいた人工知能や情報通信システムを作ったり、それを用いて人を対象とした実験を行ったりする研究に没頭していきました。名古屋大学で情報科学の博士号を取得した後は、本学の情報理工学部や筑波大学の図書館情報メディア研究科などで、人とコンピュータとのインタラクションのデザインに関する研究を行ってきました。また,アメリカのカーネギーメロン大学では、人工知能を用いた知的学習支援システムの研究にも取り組んでおります。今後も社会で役立つ情報機器をデザインすることを念頭に置きながら、人間の心や脳の構造・仕組みを理解する基礎研究やコミュニケーションができる知的システムの開発に関する応用研究を学際的進めていきたいと考えています。
研究の社会的意義について、教えてください。
近年、「人工知能が人間や社会にどのような影響を与えるのか」というトピックを様々なところで目にすることがあります。認知科学の観点からは、人間と人工知能の間に「良い関係」を築くためにはどうすればよいのか、人間同士のコミュニケーションを支援するにはどのようなシステムを開発すれば良いのでしょうか、といった問題に取り組むことができます。(おすすめ書籍にも挙げている)ノーマンが述べているように、情報機器などの商品をデザインする際には人間の認知(心)のメカニズムに即して製品の開発することが重要であり、そうすることで人間にとって日常的に使いやすい製品を生み出すことができます。これまで本研究室では、実際に人間の認知のメカニズムを実証的な分析手法で検討し、その知見に基づいたコミュニケーション支援システムや人工知能の学習支援システムのデザインを行ってきました。これらの研究室でデザインされたシステムは実践的な社会現場(教育現場など)で利用し、その使いやすさや利用効果を検証していく社会的な実験が重要となります。認知科学の研究は,情報工学や人間科学の研究の橋渡しをする役割も担っているといえますので、学問分野としても非常に魅力的で意義のある科学的な研究領域といえます。
この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。
人間の特性に踏まえた人工知能や情報機器のインタフェースの開発・デザインの研究は、人間科学研究科だからこそできる研究内容だと思います。このような研究を遂行するには、やはり人間の認知や社会行動を基礎的な実験を中心に、コンピュータのシミュレーションやエージェントの開発といった研究手法を組み合わせながら取り組んでいくことが重要であり、何よりも面白いです。本研究室では,学際的な立場で研究を行いますので、ぜひとも認知科学の研究者を目指したい人はお越しください。本研究室では、国内・国外での様々な学会の運営にも携わっております。研究発表の機会や他大学との研究交流も活発に行っておりますので、良い環境を提供できると思います。また、博士後期課程進学希望者だけでなく、前期過程(修士)までお考えの学生さんも大歓迎です。工学・情報学などの理系の学部の出身者から心理・社会系学部・学科の出身者まで、幅広く受け入れ個人に合った研究の指導いたします。認知科学や人工知能、ヒューマンインタフェースを人間科学研究科で学びたい人、ぜひとも一緒に研究をしましょう!