教員紹介
KONDO Masaki
近藤 正樹
- 所属領域
- 臨床心理学領域
- 職位
- 嘱託講師
- 専門
- 臨床心理学、グリーフケア
- 主な担当科目
- 臨床面接特論
- おすすめの書籍
- カウンセリングの実際―“心理療法”コレクション〈2〉河合隼雄著 河合俊雄編 岩波現代文庫 2009年
現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。
私はこれまで「悲哀」という人間に根差す心情に着目して、グリーフケアについての実践と研究に取り組み、人間の本質の内に「悲哀」という心性が含まれているとの考えに至りました。人間の本質には悲哀が内包されている。それゆえに、悲哀はただ消し去られてしまえば良くなるというわけではありません。大切なのは、悲哀と共に生きるということであると考えます。このような視点から、私自身は、悲哀を抱えたまま生きるクライエントと共にある臨床家を目指しています。
臨床場面では、主に2つのアプローチを採用しています。1つは、精神分析的心理療法です。それは、クライエントに生じている現症の意味を探求する方向の心理療法です。他方は、マインドフルネスです。こちらは、クライエントの身に生じている現症にとらわれることなく、治めていく心理療法です。2つの心理療法をクライエントの指向性に応じて適切に用いるように心がけております。
研究の社会的意義について、教えてください。
グリーフケアとは、喪失体験をされた方に寄り添い、複雑な感情が心に治まるよう支援することです。それは、ただ、かなしみの感情を消し去る作業ではありません。かなしみは苦痛であり、亡くなった方について思いを巡らすことは、時に耐え難いほど辛いことがあるでしょう。
それでも、グリーフワークの過程では、そのかなしみを内に秘めて、故人への感情を静かに抱きしめていたいと思うことがあり、その思いを尊重し、寄り添います。なぜなら、心の内に宿るかなしみこそが、今は亡き人がこの世界に生きた証であり、亡くなった人との結び付きであると言えるからです。そこから、死別が故人との終点ではなく、これからも続いていくもの、その後の人生にも繋がる縁という見方が生まれてきます。このように一人一人のかけがえのない物語がカウンセリングの場で紡ぎ出されることを大切にしています。
この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。
私自身も、大学時代にここ立命館の政策科学部で学び、博士後期課程は、再び立命に戻り研究を続けることが出来ました。長きに渡り、立命の友人、恩師、事務職員の方々とご縁を結ばせて頂き、この度は、院生の方々との新たな出会いを楽しみにしています。
人との出会いは本当に不思議なものです。対話を通して自分の思考が形になって現れて来る、物語が生まれてくる場所になると思います。また、本を読むということも他者との対話であり、時には、亡くなった死者との対話でもあると恩師から教えて頂きました。
研究することは、論文を書くということ。そして書くという行為は、自分自身を遠くまで運んでくれ、更に新しい自分を発見できる営みです。大学院生という貴重な時代に、一つの技法を深めつつ、様々な理論に触れながら自身の技法を確立して行くことを共に目指して行きましょう。