教員紹介

MUTO Shota

武藤 翔太

武藤 翔太
職位
嘱託講師
専門
臨床心理学(精神科臨床)、心理アセスメント
主な担当科目
心理実践実習
おすすめの書籍
多愁多恨亦悠々霜山 徳爾(著) 学樹書院2000年 精神病者の魂への道G・シュヴィング(著) みすず書房1966年 雰囲気としての心理面接高良 聖(著) 日本評論社2005年

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

大学3年生の夏休み、ゼミで単科精神科病院の閉鎖病棟で一日を過ごす体験をしました。統合失調症の患者さんたちを中心に一緒の時間を過ごすうちに、病院で人生を過ごす彼らと、このあと電車に乗って帰る私との違いは何なのか、とふと考えたことが臨床心理士をめざしたきっかけであり、私の原点です。

公立小学校の特別支援員の経験もありますが、臨床心理士になってからはまず大規模病床の単科精神科病院に常勤し、多くの経験を積みました。それこそ院内の社宅に住んでいたため、付近のアパートや院内の施設で生活する多くの患者さんたちと同じ生活圏内で生活していました。その日常生活で患者さんたちと過ごした時間(昼夜問わず、たわいないものも含めて)が、今の私の臨床への姿勢を作ってくれました。

私の研究は心理アセスメント、特に描画法を用いた研究が中心です。今は、心理アセスメント結果を活かした心理療法的アプローチの研究に興味があり、進めています。

研究の社会的意義について、教えてください。

心理アセスメント結果をきちんと解釈し、“適切”に相手に伝えることで心理療法的な効果が生じることは、多くの臨床家が日々実感している、ある意味当たり前のことです。私自身、心理面接では特定の流派にこだわらず、対象者、アプローチ法など常に相手に合わせて柔軟に対応しますが、その中で、何度も痛感するのが心理アセスメントの重要性です。さらに言うと、相手がどのように心理アセスメント結果に納得し、どの程度セラピストと一緒に問題に取り組んでいく姿勢を持ってもらえるかと、いう点です。

描画法は主観性の問題や、絶対的な解釈法がない問題などありますが、老若男女問わずその解釈が相手に直感的に伝わり“腑に落ち”、問題の解決に向けて“一緒に歩む”姿勢を持ってもらうために有効であることがあります。私の臨床経験でも、行き詰った状況が打破されたケースが多くあります。事例報告が中心となりやすいのですが、今後も知見を積み重ねていく意義のある研究です。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

「書を捨てよ、町へ出よう」(寺山修司)。座学で学ぶことはきちんと学び、学んだことを自身に置き換えて振り返り、現場にも出る。そして、実際に働いているスタッフの背中からその姿勢・スキルを盗むことや、何より目の前にいる相手との出会いから謙虚に学ぶことが臨床家のあるべき姿です。理論は、現場を先行できません。学んだ知識と臨床現場での実際の体験、そして公認心理師・臨床心理士をめざしたきっかけや思いなど。目の前にいる相手の“今日よりは、ちょっといい明日”を迎えてもらうためにそれら全てを自然と活かせる臨床家をめざしましょう。

臨床心理士になってから気づいたことですが、大学院の2年間で身に付いた臨床への姿勢は、これから先何年経とうが変わりません。立命館での2年間が現場に出てからの皆さまの一つの軸となれますよう、私も他の先生方の姿勢を学び、盗み、そして院生の皆さまからも学びながら、教員として成長しがんばりたいと思います。