教員紹介
ONOE Akeyo
尾上 明代
- 所属領域
- 実践人間科学領域(博士前期担当)
- 職位
- 教授
- 専門
- ドラマセラピー、創造的芸術療法
- おすすめの書籍
-
アートベース・リサーチ〈ABR〉とクリエイティブ・アーツセラピー:
臨床実践・研究のための芸術による知の技法尾上明代 編 遠見書房2025年
現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。
ドラマセラピーは、ドラマや演劇のプロセスを用いる創造的芸術療法です。1998年にアメリカで出会いました。重大事件のサバイバーの方が、目の前で感情を豊かに表現し回復してゆく姿を見て、日本に導入しようと一瞬で心が決まったのです。その後、日本で最初のドラマセラピスト、そしてトレーナーとなり、臨床実践と教育を続けています。ドラマセラピーの手法は視点、行動や社会関係の変化をもたらすアプローチなので、誰にも役立つものですが、私は、特に依存症の回復、子どもの成長や認知症高齢者のQOLを高めるドラマの働きを明らかにしようと取り組んでいます。
また、芸術活動を研究プロセス(データ収集・分析・発表など)に組み込み、その「芸術の知」を通して探究するアートベース・リサーチ(ABR)も実践しており、授業ではドラマをはじめ、さまざまなアート体験を提供しています。
研究の社会的意義について、教えてください。
ドラマセラピーは、「個人やグループの心理療法」という枠を超えて、教育や社会の多くの場面で応用できます。特に「ソシオドラマ」や「被抑圧者の演劇」は、社会臨床的なアプローチとして社会変化を働きかけるものですが、こうした手法の実践や研究は、上記の対象者群等に対する社会の思い込みや既存イメージを脱構築・再構築させるという点でも意義があると考えます。
また、参加者の多側面の表現を通して相互交流を発展させていくので、お互いを全人的に理解することが可能になります。そのため、回復が難しいとされる対象者群とのセッションには、日常的に関わる援助者(医師や看護師、施設の職員など)にも参加してもらい、「ドラマ」という同じ土俵での関わりから、援助・被援助を超えた関係や新たな場の形成を推進します。こうした実践により、被援助者の変容・回復だけでなく、援助者自身が新しい視点と理解を得て、より柔軟で創造的な援助の選択肢を増やすことにも貢献しています。
この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。
授業では、皆さんの日常生活や人生にも大いに役立ててもらうことを目指しています。また、常にプレイフルに楽しく実習できる工夫もしています。ウィニコットも言うように、「遊ぶことにおいて、子どもも大人も自由に創造的になれる」からです。
論文作成では、質的研究やアートベース・リサーチを採用し、討論や自己省察、ときには芸術的な活動を循環させながら研究を進めます。「芸術の知」は、非言語的、身体感覚的、そして右脳と右脳の対話による知と言われています。社会において、ことばを使い頭で考えることが大事である一方、右脳と左脳を統合的に使って人間の感性から知を創出する研究活動は、特にAI時代において大変有意義だと考えます。私はアートを広い意味でとらえて、全人的な学びを提供しようと意図しています。これまで、研究者自身が変容を遂げ、修了後の次のステップへ飛躍してゆく姿をたくさん見てきました。この研究科で、皆さんが「新しい自分」と出会うことを期待します!
