教員紹介
SAWANO Michiko
澤野 美智子
- 所属領域
- 実践人間科学領域(博士前期・後期担当)
- 職位
- 准教授
- 専門
- 文化人類学、医療人類学、社会学
- 主な担当科目
- 演習
- おすすめの書籍
- 社会学になにができるか(奥村隆編)の序章「社会学になにができるか」
現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。
文化人類学、医療人類学、社会学を専門としています。学部生のときに人類学や社会学と初めて出会い、「見えないものを見る」「当たり前を剥がしてゆく」面白さに目覚めました。フィールドワークの対象や場所は変化させつつも、一貫して身体と家族について研究してきました。研究方法は、研究対象とする場所で現地の人たちと生活や活動を共にしながら観察し文化を記述するというものです。修士課程のときは韓国農村で高齢女性と同じ部屋で寝起きしながら1年間の地域調査を行いました。博士課程のときは韓国の乳がん患者会や乳がん患者さん宅で1年半ほどの調査を行いました。近年は大阪の企業で社史冊子の編纂と研究調査を行い、例えば運送会社さんでお米袋の仕分け作業を従業員の方たちと一緒にさせてもらったりしています。身体と家族というテーマについて、少なくともあと10年は取り組みたいと考えています。
研究の社会的意義について、教えてください。
家族のありかたや価値観が多様化している現在、家族研究の枠組み自体が根本から問い直されています。人類学においては1980年代半ば頃から、普遍的な「家族」を定義することの限界が指摘されてきました。かといって家族研究が意味を喪失したわけではなく、むしろその重要性や社会的需要は高まっています。そこで最近は、「家族」をはなから定義して研究を始めるのではなく、人々の行為から家族を見る、人々によって生きられている家族を見るという「家族実践」の理論およびアプローチが注目されています。なかでも私は特に、身体とモノが家族実践においてどのように位置づけられるかという点にフォーカスしています。この研究を進めることで、実態に即して現象を理解し、そのようにして得た知見を支援や政策に活かせるという社会的意義があります。
この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。
この研究科では、心理学の研究から様々な知的刺激をもらいつつ、今までの人類学の発想にはなかったような観点からも研究を進めてゆければと考えています。総合心理学部に着任してから、心理学の観点がヒントになったり、人類学では当たり前すぎて暗黙の前提になっていたことが改めて不思議に思えてきたり、人類学の位置づけを問い直したりすることで、私の中で予想もしていなかった研究アイデアを得ることが多くあります。学問領域を超えた研究活動の重要性を実感しています。この研究科では、心理学を専攻する院生さんにとって私がそのような影響を与えられる存在になれれば嬉しいですし、私も院生のみなさんから知的刺激を受けながら研究を深めてゆきたいと思っています。