教員紹介
YASUDA Yuko
安田 裕子

- 所属領域
- 臨床心理学領域(博士前期・後期担当)
- 職位
- 教授
- 専門
- 臨床心理学、生涯発達心理学、質的心理学
- 主な担当科目
- 演習
- おすすめの書籍
- あなたの人生の科学(上・下)デイヴィッド・ブルックス 早川書房2015年
現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。
「生殖から始まるライフサイクルにおける、危機と回復に関する質的アプローチによる研究」を行っています。子どもを望むも自然には授からなかった女性の経験と選択を、治療を終えた後を含めて捉える研究に、主として取り組んできました。
また、ナラティヴ・アプローチという、語りに焦点をあてて人生物語(ライフストーリー)を捉える質的研究の手法を用いています。あわせて、人間の発達や人生の径路の複線的で多様なありようを、社会や文化の影響を含めて時間経過のなかでとらえる質的研究法「複線径路等至性アプローチ(TEA)」を開発する研究を、国内外の研究者や実践家と協働的に行っています。
他に、司法と臨床の連携の関する研究に取り組んでいます。具体的には、現在、被害に遭った子どもを対象とした司法面接に臨床心理学的知見がどのような貢献をなしうるか、という観点からの研究を行なっています。
さまざまな出会いと機会をいただくなかで今のような研究活動の実りがあります。
研究の社会的意義について、教えてください。
・見えにくくなっていること/見えていなかったことを「見える化」すること
・思い込みや当たり前・常識といわれているようなことに、別の見方を提示すること
・社会的な事象や人の生の多面的なありようをとらえること
・新しい価値を生みだしていくこと
・少数派であっても今そこに生きている人の声を大切にすること
・失敗や挫折を挽回できる社会をつくること
・一人ひとりが、安心感と希望をもって豊かに生きていけるようにすること
学問分野や専門領域が異なれば、研究の社会的意義もまた異なってくるでしょう。上記は、私が行っている質的研究が得意とする、人・社会・世界への貢献(のいくつか)です。いうほどには易くはないことも現実にはあるでしょうが、いや、難しさがあればこそ、研究が有する意義を大切にし、信じて、歩み進めていきたいと思います。
この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。
「目を見開こう。分岐点を生みだそう。大切なものを見つけていこう。」 大学院には、人との出会いや、情報や知見を得ることのできるさまざまな場が、豊富にあります。しかしそれらも、自分のものとしてキャッチしなければ、すべて行き過ぎ通り過ぎてゆくでしょう。
不意にわかるという経験。これまでに、そうした経験をしたことはありませんか? 実のところ、見えていなかったこと、わかっていなかったこと。気づいて初めて到達するところがあるように思います。そしてその時、自分にとってなにか新しい世界が拓かれてくるように思います。そのためには、自分にとって大切なことを大切にし続ける、ということが、重要になってくるようにも思います。
目を見開けばあちこちにとらえられる機会を、可能性を、つかんでいきましょう。分岐点はそこここに潜在しているでしょうし、自分自身が生みだしていくことができるものでもあるでしょう。

著書等
論文
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体外受精適応となった女性の不妊経験への意味づけ過程
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コミュニティ心理学におけるTEM/TEA研究の可能性
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女性の身体と生殖―進展する生殖補助医療とその選択のなかで