QUESTION SNSでだれかを誹謗中傷するような
内容や、爆破予告を書き込んだら
何罪?

KEYWORD #刑法

ソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用して、世界各国の人と知り合えたり、最新の情報を迅速に得られたり、といった利便性を享受できるようになりました。SNSを利用すれば、気軽に情報発信できるといった利点がある一方で、誹謗中傷や爆破予告などを内容とする迷惑な書き込みによる被害も多数存在し、社会問題化しています。

SNS上で個人に対する誹謗中傷を内容とする書き込みが、多くの人の目に触れる形で行われた場合、名誉毀損罪(刑法230条1項)や侮辱罪(同231条)が成立する可能性があります。また、爆破予告の書き込みが、個人の生命や身体などに対する危害を内容としていれば、脅迫罪(同222条)に該当するかもしれません。

それに対して、駅や学校といった公共の場所を爆破するぞと書き込んだ場合には、不特定多数の人に対する危害を内容とすることから、脅迫罪は成立しないと考えられます。それでは、たとえば、「Q大学を爆破するぞ」と書き込んだ場合、何罪が成立するのでしょうか。この場合、Q大学に対する威力業務妨害罪(同234条)が成立しうると考えられます。つまり、殺害予告にもとづいて、Q大学への立ち入りが制限され、休講になったり、事務室が閉室になることで、本来行うはずだったQ大学の業務が妨害されたと考えるのです。

このように、インターネット上の迷惑な書き込みについては、一定程度、処罰することが可能です。しかし、インターネット上の誹謗中傷による被害は想像以上に甚大です。インターネット上の誹謗中傷の特徴として、第一に、匿名で書き込めることから、誹謗中傷に対する心理的な抑制力が低下しやすいことがあります。第二に、いったん書き込まれると世界中に広がり、半永久的にインターネット上に残ってしまうという問題があります。そのため、対面で直接行われる誹謗中傷に比べて、被害が重大化しやすいと言えます。

そこで、インターネット上の誹謗中傷によって生じる重大な被害に対応するために、厳罰化、すなわち、侮辱罪の刑罰を重くする(法定刑の引き上げ)という法改正がなされることになりました。これによって、インターネット上の誹謗中傷を抑止するという効果が期待されています。

しかし、このような法改正には疑問も示されています。まず、どういう書き込みをすれば、「侮辱」として処罰されるのかがわかりにくいと言われます。特に懸念されているのは、政治家の活動に対して批判するような書き込みをした場合に、「侮辱」として処罰されてしまわないのかという点です。憲法で保障されている言論の自由の侵害とならないような運用が必要となります。さらに、侮辱罪の刑罰を重くするだけで、誹謗中傷を抑止して重大な被害を減らすことができるのかという疑問も示されています。

インターネット上の誹謗中傷により生じる重大な被害をなくすためには、侮辱罪の法定刑の引き上げという法改正だけで終わらせてしまうことなく、より広い視野で、有効な対策を考えていく必要がありそうです。