QUESTION くじ引きで政治家を
選んではいけないの?

KEYWORD #政治学

政治家はふつう選挙で選ばれます。しかし、国会議員になるチャンスは誰にでも開かれているようでいて、実際には同じような人ばかりが政治家に選ばれていないでしょうか。同じ人が何度も当選し、引退のさいには子に選挙区を譲る、こうしたことが続いては民主社会における多様な利害や意見が政治に反映されません。選挙はいっけん中立的な制度に見えますが、実は様々な問題を抱えているようです。

私たちは民主主義に選挙は欠かせないと思い込みがちです。けれどもじつは、代表者を選ぶ仕組みは選挙だけではありません。たとえば、古代ギリシャのアテナイという都市国家では、重要な役職者をくじで決めていました。誰が権力の座に就くのかの決定を神(偶然)に委ねてしまうのです。くじ引きは権力の腐敗を避け、民主社会を維持するためのギリシャ人の工夫でした。

近年の政治学でも、民主的な平等の理念を実現するのは、選挙よりもむしろ抽選やくじ引きによるほうがふさわしいのではないかとの議論が始まっています。くじによってランダムに選ばれた人々が国会で議論すれば、多様な意見が政治に反映されそうです。また、くじで選ばれた代表者は、次の選挙で再選するために奔走する必要もありません。そうすると少子化やジェンダーのように、重要だとは分かりつつも、票に結びつかないからとないがしろにされてきた問題や、環境問題のような長期的な課題にもじっくり取り組めそうです。

実際には、選挙制度をすべてくじ引きで置き換えるのは現実的ではないでしょう。そこまで行かずとも、国会に一部くじ引き議員を送り込むことができれば、凝り固まった現代政治の風景も少し変わるかもしれません。