VOICE

1 期生

中村 由衣

先端総合学術
一貫制博士課程4年

大学院に進学して、好きなことを勉強して、突き詰めることができています

育成拠点: 立命館大学アート・リサーチセンター

INDEX

  1. 01博士課程後期課程への進学動機、また現在の研究活動・院生生活について
  2. 02NEXTフェローシップ・プログラムについて
  3. 03今後のキャリアプランについて
  4. 04院生へのアドバイス・メッセージ

01博士課程後期課程への進学動機、
また現在の研究活動・院生生活について

大学院への進学について教えてください

学部時代は文学部日本史研究学域で勉強していました。元々、大学院に憧れを抱いていたのですが、学部時代は周囲と同じく就職活動をしており、本当にそれで良いのか悩んでいました。最終的には家族も背中を押してくれたので進学を決意し、文学研究科の文化動態学専修に進みました。この時から今の研究内容に取り組み始め、更に研究を続けたいという気持ちを持つようになりました。ところがこの専修には博士課程が無く、困っていたところ、当時の指導教員の先生から現在所属する先端総合学術研究科(以下、先端研)を勧めていただきました。
先端研は色々な分野の研究をしている人が集まっている点が非常に魅力的です。一つのゼミの中でも、全員が全く違うことを研究していて、知らないことを毎回知ることができる刺激的な空間です。私自身、こういう環境に身を置くことで、様々なことに幅広く目を向けることの良さに初めて気づくことができました。そういう点で、やっぱり先端研に来てよかったと思っています。

現在はどのようなテーマで研究されているのですか?

現在はライトノベルのイラストについて研究しています。特に表紙に注目し、出版された年代の傾向や特徴を分析してきました。多くの量を集めることで、表紙に描かれたキャラクターの服装やポーズ等の流行や変遷が見えてきます。
例えば、表紙に描かれた人数の傾向について調査したことがあります。90年代頃までは登場人物が沢山描かれた表紙が多いのですが、2000年代に入ると1人のキャラクターにのみフォーカスして描かれることが多いという傾向があります。特に女の子キャラクター1人を取り上げる表紙が増え、これには美少女ゲームの影響が考えられます。これは単に美少女ゲームの流行というだけでなく、クリエイターの交流が盛んになったことも一因として考えられます。ゲームでイラストを描いていたクリエイターがライトノベルの表紙のイラストも描くというようなことが多くありました。
今後は更にこうしたイラストと内容がどのように噛み合っているのか、どのように表現されているのか、その表現の形がどうやって出来上がっているのかということにフォーカスして研究を進めたいと思っています。

小説執筆活動と研究が接続したきっかけは何だったのでしょうか?また趣味と研究の両立について考えていることがあれば教えてください

中学生の頃から小説執筆がずっと趣味で、今も投稿サイト等に投稿することは続けています。学部生の頃、小説を商業出版させていただく機会があり、それまで趣味で書いていたものが本屋さんに並んでいるのを目の当たりにしました。その時から本屋さんに陳列された本を良く見るようになり、特に表紙に興味を持ったのが研究テーマに繋がりました。また、小説を書くという物書きの立場からだけでなく、自分が創作したり所属したりしている創作コミュニティのことを客観的に見られるようになりたいという思いもありました。研究という立場から、今自分がやっていることは何なのか、知りたかったのです。
趣味的な活動と研究の両立という点では難しい部分もありますが、研究を創作に活かすことはできるし、創作の経験も研究に活かすことができるはずだと考えています。どちらもいい方向に作用して充実させられたらいいなと思っています。どうしてもしんどくなってしまう時には、何か別の趣味を持つなど息抜きをしながら取り組んでいきたいです。

最近の小説やライトノベルを取り巻く状況について、今後研究に活かされそうな発見があれば教えてください

学生フェローとして加入したプロジェクトの影響で、ウェブ上のコンテンツを注意して見るようになりました。すると商業的でないウェブ小説でも、イラストレーターさんやネット声優さんとコラボするといったように、他ジャンルのクリエーターさんと交流して創作している方が沢山いらっしゃるんです。商業的に売れるかどうかという側面とは違うベクトルで人が集まってメディアミックスを展開する状況はとても興味深いと思います。
また、現在の私の関心はライトノベルの中でも女性向けのコンテンツに向いてきています。長年少年向けのイメージがあるライトノベルは、今まで少年向け作品に注目した研究がなされてきました。しかし最近では男女ともに読むようになり、感覚が変わってきていると思います。女性のコミュニティが広がって発展しているジャンルもあり、意外と性別で住み分けされているように感じられます。自分も女性の書き手であり読み手であるので、これまで研究がなされてこなかった女性向けのコンテンツに注目してみたいです。

中村由衣・先端総合学術 イメージ1

02NEXTフェローシップ・プログラム
について

NEXTフェローシップ・プログラムへの参加について教えてください

本プログラムへの参加は指導教員に教えていただいたのがきっかけです。学生フェローとして活動することで、例えやる気が出ない時でも自分を研究へ奮い立たせることができるのではないかと思い、参加を決めました。
実際に参加して、大きく2つの点に良さを感じています。
まず他の学生フェローとの交流ができる点です。小さな集まりも含めれば月一回程度で話す機会が設けられており、学生フェロー同士の仲も良いです。文系理系両方の学生がいるので異分野交流が盛んで、これを通して視野が広がるのを感じました。留学生も多いので海外事情も教えてもらえます。
もう一点は自分のキャリアについて深く考えるきっかけをもらったことです。最初は博士課程を出たら大学教員になるのか?、くらいにしかキャリアビジョンを持っていませんでした。しかし学生フェローについてくださるキャリアコーディネーターとの相談や、キャリアについて考えるイベントへの参加を通して多様なキャリアの可能性があることを知り、自分のキャリアについての考え方も変わり始めました。

学生フェローとしてどのような活動をされていますか?

私が参加しているのは2000年代のウェブコンテンツに関するプロジェクトで、ゲームや動画等のウェブコンテンツをアーカイブする活動をしています。特に私はウェブ小説の収集を担当しており、2000年代に小説投稿サイト等に投稿された作品を集めています。
個人でやっている研究とは違い、きちんと役割分担し、協働する研究に参加できていることは大きな経験だと感じています。一人で研究しているとその研究の目的や意義を見失いそうになることもしばしばですが、グループ研究では目的や意義をしっかり話し合い、コミュニケーションをとりながら進めることが非常に大事になります。こういうコミュニケーションをとりながら研究するというのがすごく貴重な経験だと思っていますし、それが今後の研究者としても必要な経験になるのかなと感じています。

03今後のキャリアプランについて

今後のキャリアについてどうお考えですか?

現時点では、大学に残るなど、何かしらの形でアカデミアの道に進み、研究者としてキャリアを積んでいけたらいいなと思っています。
キャリアについては、学生フェローとして受けたキャリア相談の中で構築していった部分もありますし、先端研の先輩たちをモデルケースにしている部分も大きいです。例えば取っている授業の担当教員が、実は自分と同じ先端研の卒業生で先輩だった、というようなことがありました。そういう先輩たちの姿を見たり、卒業後の進路の話を聞いたりする中でキャリアプランを描いているので、今はアカデミアでのキャリアが、自分にとって一番想像しやすい道ですね。
アカデミアのポストは全国どこで働くかが予測できないところが大きいので、仕事をする場所によっては全く関わりのないところに住むようなこともあると思います。そういう時に「どこにでも行ける」という柔軟なスタンスでいたいなと思っています。

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04学部生・院生への
アドバイス・メッセージ

学部生へのアドバイスやメッセージをお願いします

研究をしているとモチベーションの維持が難しいこともあります。そんな時、私は地元や学部時代の友人、家族等、周囲の人に「最近こんなことをやっているんだ」と自分の研究の話を聞いてもらいます。そうやって話していると、今自分が何をやっているのか、何がやりたくて進学したのか思い出すことができます。「こういう事がやりたくて私は大学院に来たんだな」と再確認して、やる気が出てきますね。研究について知らない人達なので説明に苦労することもありますが、それによって説明能力も鍛えられる気がしますし、何より素朴な質問が大きな気づきになることもあります。
私は大学院に進学して、好きなことを勉強して、突き詰めることができています。それを通して、社会に対しての視野も広がったと感じています。そういう点で、大学院生活を楽しんでいますし、そこが大学院進学の魅力だと思っています。皆さんにも大学院進学というものを一つ進路の選択肢に入れていただき、楽しんでいただけたらと思います。

(2022年9月 掲載)