1982 京都大学薬学部 卒業 1984 京都大学大学院薬学研究科修士課程 修了 1990 薬学博士(京都大学)
高校から大学への進学、富山での研究生活、米国ボストン(ハーバード大学)での留学生活や、ニューヘイブン(イエール大学)での研究生活など、節目節目でいろいろな先生方との出会いやご指導を受け、ご縁やめぐり合わせを経て、今の自分があると思います。京都大学時代(教養部)に、 DNA二重らせんの発見者である J.D. Watson博士のMolecular Biology of the Geneの輪読会を行い、「生命も分子機械」ということに強い衝撃を受けました。また、当時 得体の知れなかったイオンチャネルやポンプ、トランスポーターなどの遺伝子が次々にクローニングされて、タンパク質分子として実体が分かるようになることにも強いインパクトを受けました。さらに胃酸分泌を行うプロトンポンプという相手に取り組み、基礎研究者としてプロトンポンプ阻害剤(PPI)の創生に立ち会えたことなども、研究を続けてきたきっかけかもしれません。今はこれも縁あって線毛に魅せられて線毛の発生や運動に関する研究を行っています。
生体防御の最前線:線毛の発生や運動のメカニズムを研究して、線毛機能を調節する遺伝子産物や小分子を探索します。
気道、脳室の線毛について発生や運動の分子メカニズムを研究します。線毛機能を調節する遺伝子産物や小分子を探索します。
ヒトは1日に20,000リットルもの空気を吸い込むとされています。この際に吸入された細菌、ウイルスや微粒子などは粘液によって絡めとられ、線毛運動によって体外へと排出されます。この働きは「粘液線毛クリアランス」と呼ばれ、呼吸系における第一線の生体防御機構です。私たちは気道細胞の初代培養などを用いて、線毛発生や線毛運動の調節機構について研究しています。また、新型コロナウイルスは、スパイクタンパク質によって線毛細胞にあるACE2(アンギオテンシン変換酵素2)タンパク質と結合して感染を開始します。私たちは、ACE2の働きが線毛運動にどのように働くかについても検討しています。また、気道の線毛と同じように脳室の表面を覆う上衣細胞にも線毛があり、脳脊髄液を流動させるのに働きます。私たちは脳室の上衣細胞を培養して、線毛の発生機構や線毛運動を制御する分子の探索に向けた研究を行っています。
それぞれの未来を目指して歩むみなさんの力になりたい
薬学科のみなさんには「医療人としての薬剤師」として活躍することが期待されています。創薬科学科のみなさんには「薬に関わる研究者」として活躍することが期待されています。 それぞれの未来を目指して歩むのはみなさん自身ですが、時に道程を示し、時に手を取り、時にお尻を押せるような形で少しでも力になりたいと考えています。 授業(生化学・人体の構造と機能など)を通じては、私たちの体の中で起こっていることの不思議さや、精緻な コントロール、できれば生命の素晴らしさを伝えて行きたいと考えています。無機的な言葉(専門用語)や構造式だけの記憶とならないように、「しっくり、適当な」たとえ、あるいはクイズ、そして少し「寒ーい」つまらない駄洒落、おやじギャグなども程ほどに織り込んでメリハリやインパクトのある授業を心がけたいと考えています。研究についても、「あれ?」という疑問や、「はっ」とする気づきを大切にして、線毛や上皮組織のバリア機能を中心にして生命現象の精緻なコントロールの解明に向けて進めて行きたいと考えています。