研究・産学官連携ニュース

2011年09月のニュース

2011.09.15

理工学部 教授・道関隆国 研究室 非可視化トリミング技術を用いたARアプリケーションを開発

理工学部 電子情報デザイン学科教授・道関隆国研究室において、非可視化トリミング技術を用いたスマートフォン用のARアプリケーションを開発いたしました。

 新聞や雑誌の欲しい情報を保存する手段として、記事等をはさみで切り抜いてスクラップする手法やカメラ付き携帯電話で撮影する手法があります。前者の場合は、量が増えると自由に持ち運べないなどの問題が、後者の場合はカメラが不要な情報を取り込んでしまう、斜めから撮影すると記事が歪んでしまうなどの問題がありました。特に、後者の手法は、記事等にトリミング用の切り取り線を付けておけば携帯電話内で解決するのですが、切り取り線が記事に入ってしまうので見栄えが悪くなるという問題がありました。

 今回、理工学部の道関研究室では、非可視化画像(人の目では認識できない画像)で作成した切り取り線で囲まれた画像をスマートフォンで読み取ることのできる「非可視化トリミング技術」を開発することで、上記の問題を解消することを実現いたしました。また、併せて、本トリミング技術を用いてスマートフォン上で画像を動かすことのできるARアプリケーションを開発しました。
つきましては、本研究成果をお知らせいたします。

【本件に関わるお問い合わせ先】
  立命館大学総合理工学院理工学部教授 道関隆国 研究室
  研究室 HP:https://www.ritsumei.ac.jp/~douse/
  立命館大学リサーチオフィス(BKC) 
  TEL:077-561-2802

研究内容はこちら

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2011.09.06

発光の「巻き」を化学刺激によって増大~イオン応答性を有する発光性有機分子による円偏光発光の制御~<研究成果がNature Asia Materials電子版に掲載されました>

 立命館大学総合理工学院薬学部の前田大光准教授らの研究グループ、および奈良先端科学技術大学院大学の内藤昌信特任准教授らの研究グループと河合壯教授らの研究グループは、アニオン(負電荷種)との会合によって円偏光発光が劇的に増大する発光性有機分子の開発に成功しました。
この研究成果はJ. Am. Chem. Soc.に採択され、9月5日付けでNature Asia Materials電子版に掲載されましたので、ご報告いたします。


■概要
 発光性有機分子はパソコンや携帯電話などの次世代ディスプレイに欠かせない有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子など、将来のナノエレクトロニクス用基幹材料として注目されています。一方、発光現象の一つである円偏光発光(CPL)は、消費電力を抑えるための高輝度液晶ディスプレイ用光源をはじめとして、3次元ディスプレイ、光暗号通信など高度な光情報技術への応用が期待されています。
しかし、円偏光発光を示す分子の開発は端緒についたばかりであり、その円偏光発光を制御する技術(たとえば、物質が発している蛍光に対する円偏光発光の割合を増減させる技術)はほとんどありませんでした。本研究では世界に先駆けて、円偏光発光の特性を有する新しい発光性有機分子を創り出し、さらに単純な化学刺激(負の電荷を持つイオン)でその円偏光発光を制御することに成功しました。
 本研究は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ・構造制御と機能(研究総括:岡本佳男)「アニオン応答性組織構造の創製と機能探索」(研究代表者:前田大光)、同・ナノシステムと機能創発(研究総括:長田義仁)「NanoからMicroへの精密自己組織化で拓く円偏光有機レーザーの創製」(研究代表者:内藤昌信)、および科学技術振興機構 研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラム「分子キラリティー顕微鏡の開発」(研究代表者:河合壯)の支援を受けて実現しました。


■研究の背景
 不斉環境に配置した発光性素子から観測されうる円偏光発光(CPL)は、将来の3次元ディスプレイや光暗号通信の開発を指向した基礎的な技術要素として期待されています。上記技術の実現には、高輝度・高円偏光材料の創製と並行し、円偏光発光の制御が可能な分子素材の開発が不可欠でした。また、これまでに化学刺激に対する応答性を示す円偏光発光挙動に関する報告例はなく、適切な発光性分子の設計・合成が必要でした。


■今回の研究成果
 前田大光准教授らの研究グループで独自に開発したアニオン(負電荷種)に対して高い会合能を有する発光性有機分子(レセプター分子)を基盤とし、今回、レセプター分子への不斉ユニットの導入および周辺置換基の精査など、分子構造の最適化を検討しました。得られた不斉レセプター分子に関して、非極性溶媒中でのアニオンとの会合によって、室温における電子状態および発光挙動の変化を各種分光法によって検証しました。最適化されたレセプター分子の場合、円二色性(CD)スペクトルにおけるg値が2.0  10–4から4.9  10–3へと増大し、さらに円偏光発光スペクトルにおけるg値はほぼゼロから2  10–3へと劇的に増大することが観測されました。


■波及効果と今後の展開
 化学刺激応答性の円偏光発光の増大を実現した本研究は、新たなイオンセンサー開発の先駆的なものとして評価されており、今後、同様の研究が追随することが期待されています。今回、溶液中における単分散状態の発光性分子の挙動を検証しましたが、複数の分子が規則的に集合化した状態(結晶やソフトマテリアルなど)ではより高い円偏光発光を発現することが期待され、その化学刺激応答性の発現・制御に関しても継続して展開を検討しています。


■掲載論文
Maeda, H.; Bando, Y.; Shimomura, K.; Yamada, I.; Naito, M.; Nobusawa, K.; Tsumatori, H.; Kawai, T. “Chemical-Stimuli-Controllable Circularly Polarized Luminescence from Anion-Responsive -Conjugated Molecules” J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 9266–9269.


【内容についてのお問合せ】
立命館大学リサーチオフィス(BKC)
TEL.077-561-2802

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