センター長挨拶
私たちは誰もが社会の中で生きていく上で様々なリスクにさらされることがあります。病気やケガ、失業や生活上の様々な課題に直面することもあります。こうした社会的リスクの一つが、「災害」です。
日本は「災害列島」と言われるように、地震・台風・水害・土砂災害や火事など様々な自然災害が頻発しています。それだけでなく、事故や公害などによる人為的災害もあります。
2011年3月におきた東日本大震災とその後の東京電力福島第一原子力発電所事故にともなう原子力災害は、これまでの自然災害だけでなく、未曾有の人為的災害も加わり、長期避難・広域避難を余儀なくされました。また、それにともなう二次被害も拡大し、急激な人口減少や地域の変化、介護需要の高まりや、災害関連死など、生活再建上の困難を多くの被災者がかかえることになりました。
災害は、自然の力の大きさや事故の規模などの「加害力」の大きさだけでなく、個人・家族・地域・社会がかかえる「脆弱性」が、その被害に影響を与えるとされています。逆に、この「脆弱性」を軽減し、そうしたリスクにさらされたとしても、そこから回復する力を備えている「回復力」(resilience)が、大事なテーマになっています。
私たちは、様々な困難にさらされるだけでなく、そこから回復し再起する力も備えています。様々な災害が多い日本だからこそ、このresilienceに関する研究が今後さらに重要になっていきます。
ただこうした社会的リスクは、災害だけではありません。世界をみると、紛争や暴力、あるいは気候変動などの社会問題が喫緊の課題になっています。また、長期にわたりリスクにさらされた個人や家族という観点で着目するなら、難民・国内避難民問題やガンや難病などの長期リスクにさらされた人びとの人権や尊厳をどう守っていくかも大事なテーマです。
2025年4月に立命館大学において新たに設立された「災害危機レジリエンス研究センター」は、災害を始め、様々なリスクに長期わたりさらされた個人や家族に着目し、そのresilienceを調査研究する組織です。
様々なリスクにさらされたとしても、一人ひとりが尊厳を持って地域で安心して暮らしていける環境を構築していくために、本センターはスタートします。
丹波 史紀