2010年5月28日更新
コンピューターゲームでは、得点とクリアしたステージを記録出来る。だが、戦いなどの場面を再現することは出来ない(ビデオのように全てを再生出来るゲームもあるが)。ラック・ターウォンマットが開発した「マンガ自動生成システム」では、プレイヤーが最もアクティブに動いた記録などを自動解析して、その場面を抽出。それをマンガのようにコマ割にした状態でプリントアウト出来る。だから?と、その価値を問うのではなく、まずは人工知能による基礎技術の一つとして理解してほしい。
「こうした開発にはゲームのデータが必要なので、まず2004年に『THE ICE』というオンラインゲームを独自に開発。今では『雪合戦』として知られていますが、学生たちがそれで遊ぶことで得られたデータをベースに、様々な人工知能システムを開発してきました」
プレイヤー同士でチャット(会話)も出来るので、この「マンガ自動生成システム」では“吹き出し”を入れることも可能。それを人工知能が自動的に判断することがスゴいのである。
「真剣にゲームに取り組む大学は日本では少ない。海外では普通ですが。ゲームメーカーも開発に用いる各種のツールを海外から購入している状態。人工知能のスキルを持つ人材育成が必要なのです」
ラックはまた、ゲーム内におけるプレイヤーの行動の分析に着目。これらの履歴を自動解析する「コミュニティ・マイニング」により、他プレイヤーのID詐取など、近年問題となっているオンラインゲーム上での不正行為の検出も可能になるという。
「でも、人間相手の人工知能は計画通りにいかない。1回目は必ず失敗。原因を考えて再挑戦してもほとんど失敗。これを何度か繰り返して思い通りに動いた時が一番嬉しい。これからゲームはもっと賢くなり、ユーザー個人に対応したスキルレベルやコンテンツに自動で調整される時代になると思います」
AERA 2009年3月30日増大号掲載 (朝日新聞出版)このページに関するご意見・お問い合わせは 立命館大学広報課 Tel (075)813-8146 Fax (075) 813-8147 Mail koho-a@st.ritsumei.ac.jp