2010年5月28日更新

「ゲームはもっと賢くなる」 人工知能でエンターテインメント

ラック・ターウォンマット
総合理工学院 情報理工学部・知能情報学科 教授
1965年タイ生まれ。工学博士。1987年タイ・チュラロンコーン大学電気工学科卒業後、国費留学生として来日。1994年東北大学大学院工学研究科博士課程情報工学専攻修了。理化学研究所特別研究員などを経て2004年から現職。「子供の頃から人間を相手にする対戦型ゲームが好きで、外出しては遊んでいましたね」

コンピューターゲームでは、得点とクリアしたステージを記録出来る。だが、戦いなどの場面を再現することは出来ない(ビデオのように全てを再生出来るゲームもあるが)。ラック・ターウォンマットが開発した「マンガ自動生成システム」では、プレイヤーが最もアクティブに動いた記録などを自動解析して、その場面を抽出。それをマンガのようにコマ割にした状態でプリントアウト出来る。だから?と、その価値を問うのではなく、まずは人工知能による基礎技術の一つとして理解してほしい。

「こうした開発にはゲームのデータが必要なので、まず2004年に『THE ICE』というオンラインゲームを独自に開発。今では『雪合戦』として知られていますが、学生たちがそれで遊ぶことで得られたデータをベースに、様々な人工知能システムを開発してきました」

プレイヤー同士でチャット(会話)も出来るので、この「マンガ自動生成システム」では“吹き出し”を入れることも可能。それを人工知能が自動的に判断することがスゴいのである。

「真剣にゲームに取り組む大学は日本では少ない。海外では普通ですが。ゲームメーカーも開発に用いる各種のツールを海外から購入している状態。人工知能のスキルを持つ人材育成が必要なのです」

ラックはまた、ゲーム内におけるプレイヤーの行動の分析に着目。これらの履歴を自動解析する「コミュニティ・マイニング」により、他プレイヤーのID詐取など、近年問題となっているオンラインゲーム上での不正行為の検出も可能になるという。

「でも、人間相手の人工知能は計画通りにいかない。1回目は必ず失敗。原因を考えて再挑戦してもほとんど失敗。これを何度か繰り返して思い通りに動いた時が一番嬉しい。これからゲームはもっと賢くなり、ユーザー個人に対応したスキルレベルやコンテンツに自動で調整される時代になると思います」

AERA 2009年3月30日増大号掲載 (朝日新聞出版)
運命の出会いは
ありましたか?
毎年の学生らとの初対面は運命の出会いだと感じています......(→続きを読む)
Q1

AERAでご紹介した研究を始められたきっかけは何ですか?

漫画生成の研究は、ある優秀なイスラエル人の研究者が書いた論文を読んでそれをさらに発展させようと思ったのがきっかけです。研究開発の世界では「巨人の肩の上に立つ」という言葉が有名ですが、まさしく言葉通りです。

Q2

今までに運命の出会いはありましたか?

大学教員になってから自分の研究室に毎年配属された学生らとの初対面は運命の出会いだと感じています。みんな異なるスタイルで成長していく姿を研究活動を通して身近に観察できるのが大学教員に与えられた特典といえるかもしれませんね。

Q3

最近の気になるニュースは何ですか?

やはり、経済状況の話しですが、これを機に世界がどのような方向にCHANGEするのかが一番気になります。

Q4

最近、何かオススメはありますか?

ごく最近、発酵乳の一種である、手作りのケフィアを飲み始めています。いろいろと健康に良いと言われていますのでお勧めです。

Q5

休日はどのように過ごされていますか?

休日は家族と過ごす時間を大事にしています。高速道路1000円の制度を活用してより遠いところまで家族と旅行したいと考えています。

Q6

先生が未来に残したいものは何ですか?

どのような経済状況においても十分に活躍できる卒業生です。


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