2013年1月12日更新

学生の様々な学びのスタイルを可視化 「ぴあら」としてデザイン

八重樫 文
立命館大学経営学部准教授
八重樫 文(立命館大学経営学部准教授)
修士(学際情報学)。1973年北海道生まれ。1997年武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業。2005年東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。デザイナー、武蔵野美術大学助手、福山大学専任講師などを経て、2007年より現職。主な研究分野は、メディアデザイン論、デザイン・マネジメント論、学習環境デザインなど。研究室の書棚には研究書とあわせて、多数のCD、DVD、マンガ、フィギュア(人形)が飾られているほか、エレキギターも。「バンドを組んでライブをやっていた時期もありました。音楽でも映画でもマンガでもフィギュアでも研究でも特定分野にこだわらずいつでも自由でいられるように、週末の余暇は思考の枠を拡げることに奔走しています」
教育デザイン

立命館大学には「ぴあら」と呼ばれる新名所がある。とはいっても派手な施設ではなく、ちょっとのぞいただけなら何の変哲もない空間に見えるかもしれない。

「ぴあら」とは、ピア・ラーニング・ルームの略称であり、学生同士(ピア)が自由に集まってお互いに学びを深めるという新しい発想の学習空間だ。2011年4月に衣笠キャンパスで初めて設置。翌年はびわこ・くさつキャンパス(BKC)にも導入された。この空間のデザイン・マネジメントを担当したのが、八重樫文である。

「僕が学んだ美大では、ディスカッションやプレゼンテーションなどアウトプットを中心とするグループワークが日常的にありました。これをアクティブラーニングともいいますが、そうした学生同士の主体的な学びを支援する空間を『ぴあら』としてデザインしたのです」

パソコンやプロジェクターなどの最新設備はもちろん、グループで議論できるエリアや、ガラス張りのプレゼンルームも備えているが、キャスター(車輪)付きで自由に動かせる机とイスが「ぴあら」を象徴する存在といえるだろう。中でも天板が雲型の「まが玉テーブル」は、それを組み合わせることで参加人数を増減できる。最初は2~3人で始めた議論を次第にグループに拡大していくことも可能だ。先生の指示に従うのではなく、学生が自ら使いこなす空間なのである。

びわこ・くさつキャンパスの「ぴあら」
びわこ・くさつキャンパスの「ぴあら」

「こうした空間は過剰にオシャレである必要はなく、自然とそこに行きたくなる雰囲気が大切。ですから、その気分を邪魔する要素を徹底的に取り除きました。禁止事項の掲示はできるだけ避け、オープンなつくりで、他の学生たちの学習の様子も見えるようになっています」

2つのキャンパスともに「ぴあら」の稼働率は極めて高く、学生たちが活発に議論する姿が実に格好良く見えた。様々な学びのスタイルが見えることが、学生の刺激につながるのだ。

「デザインをプロダクトやアートの世界だけでなく、経営学から組織や制度設計などにも拡げていきたい。2015年には僕の所属する経営学部が大阪茨木の新キャンパスに移転するので、ここでも新しい学習環境デザインにチャレンジします」


ピア・ラーニングルーム「ぴあら」の動画はこちら
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AERA 2013年1月12日発売号掲載 (朝日新聞出版)

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