「Joint Degree Programの設置の経緯と現在」
2023年12月8日に、本プロジェクトの第2回ワークショップとして、
「Joint Degree Programの設置の経緯と現在」を開催しました。
2回目の開催となった本ワークショップには対面・オンラインを合わせて151名の教職員が参加。
Joint Degree Program(以下、JDP)設立に至るまでの経緯や当時のノウハウ、成果と課題について本学教職員が知見を共有。
今後の国際交流の在り方やJDP等の国際教育プログラム設立に必要な学内外の調整について議論が交わされました。
はじめに、山下範久常務理事(グローバル教養学部 教授)よりプロジェクトの概要と本日のねらいを参加者に説明しました。ワークショップの目的は「新たな国際連携ネットワーク構築」と「グローバル人材の育成に向けた高大連携」。山下常務理事は「本学JDPの成果や、JDPに参加した学生の成長、その可能性を感じていただき、今後の国際化促進の参考になることを願っている」と述べ、講演へと進行しました。
一人目の講演者は、中戸国際部長(国際関係学部 教授)。内閣官房「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ(第二次提言)」と照らし合わせ、JDPの意義や重要性について説明しました。2大学に2年間ずつ在籍するダブルディグリープログラムとは違い、JDPでは2つの大学に4年間在籍するため、入学から卒業まで両大学の施設やサポートを利用できるといった重要なメリットがありますが、この点の理解が進んでいない現状を指摘。「高等教育においてJDPを普及させるには、このメリットを日本および国際社会が認識する必要がある」と提言しました。
二人目の講演者の片岡衣笠国際課長は、本学が日本の大学で唯一、学士課程にJDPを設置できた要因を分析。アメリカン大学と本学が全学規模で教職員を巻き込んだ協力体制を敷けたこと、教職員交流等を通して両大学には厚い信頼関係があったこと等の6つの点を挙げました。制度や文化などの差異を乗り越え協働した両大学の志は、日米パートナーシップの象徴である桜にちなんでつけられた“Sakura Scholars”という愛称に込められていると語りました。
三人目の講演者は新野人事課長。多くの国際交流プログラムが中止を余儀なくされたコロナ禍において、JDPがいかに学びを提供し続けたかを共有しました。一般的な留学や海外大学への直接進学の場合と比べ、ラーニングスケジュールの変更等を通して、学生に選択を提示し、危機を乗り越えた事例を紹介。「こうした危機にスピーディーに対応できたのは、JDPに向けて築いてきた本学とアメリカン大学の信頼関係の賜物だった」と当時を回想しました。さらに、コロナ禍を契機に両大学の協力関係がさらに強固になったと述べ、今後のJDPのさらなる発展に向けて期待を寄せました。
四人目の講演者の浅岡国際関係学部事務室事務長補佐は、JDPの成果と課題を共有しました。これまで本学がアプローチできていなかったインターナショナルスクール生の進学先となりえたことや、アメリカの留学生を多く受け入れることでアジア系に偏りがあった本学留学生の多様化が進んだこと等、JDPが大学全体の国際化を促進したと強調。「学生募集やコストの面で課題は残るが、JDPは大学の国際化や参加学生の成長を促進する、重要な教育プログラムだ」と締めくくりました。
最後に、本学国際関係学部アメリカン大学・立命館大学国際連携学科4回生海堀が、JDPで学んだ体験談を語りました。通常の留学ではビザや住居の手配、履修の相談などの手続きを自力で行う必要がありますが、JDPではIRオフィスの手厚いサポートがあったため、学修に集中できたという利点を挙げました。また、履修や就職活動に関する両校のサポートを柔軟に受けられたこと、志の高いクラスメイトと共に学んだことで、将来の選択肢が大きく広がったことを強調しました。
Q1)Dual Degree ProgramからJoint Degree Programになってどのような発展を遂げているのか、現在の様子なども伺いたく参加を希望します。
A1)JDPでは、学生は2つの大学の学籍を持ち、1つのプログラムの中で学ぶことができます。入学時点から立命館大学とアメリカン大学の2つの学籍を有せる点は意義があると考えています。アメリカン大学のeジャーナルや図書館を利用することもできます。
Q2)アメリカン大学から立命館大学に派遣されている学生の状況や受入学生からの感想、課題等もうかがってみたいです。
A2) アメリカン大学から派遣されている学生(AUホームの学生)の人数は、プログラム開設当初の予想を大きく上回り、毎年20名ほど在籍しています。課題としては、日本人の学生(RUホームの学生)が比較的少ないことです。JDPのメリットや魅力を発信することで参加学生の人数を増やす必要があると考えています。
Q3)学士課程でJDPに参加するには、高校生の間にある程度の準備や意識付けが必要だと思いますが、どのような取り組みをされていますか?
A3)JDPは英語基準で授業を実施するため、英語の語学力など、一定の水準の学習レベルが求められます。入試合格者への面談や、模擬授業の実施など、高大接続を強化しています。
参加者が2グループに分かれ①新たな国際連携ネットワーク構築、②グローバル人材の育成にむけた高大連携の各テーマについてディスカッションを行いました。講演を行った本学関係者5名がファシリテータとなり、各大学の取り組み状況や課題を共有。全国から参加者がオンライン上に集まり、活発な議論が行われました。
海外大学と交流協定を結ぶには全学的な連携が必要だという共有がなされました。しかし、さまざまな理由で大学側あるいは学部側のコミットメントを引き出すのに課題があるケースもあります。全学単位を基本としながらも、学部などでの個別の取り組みも尊重し、さまざまな経路でネットワークを構築することが重要でしょう。また、活発な学部協定を全学協定に引き上げたり、一大学との協定を他大学に広げたりと、既存のネットワークから輪を広げる取り組みが鍵となるでしょう。
JDPなどの国際教育プログラムには、グローバル系コース以外の高校生が進学しづらいという課題が共有されました。そのため、語学検定のスコア向上等に向けて、高校時に早めに動機付けを行う取り組みが有用でしょう。特に附属校においては、高校時に先に学んだ内容を大学入学時に単位認定する制度などの好事例があります。また、大学から附属校への意見は権威的に感じられやすく、グローバル人材育成に向けて歩調を揃えづらいという課題もあります。生徒・学生間だけでなく、教職員間の交流も必要でしょう。
・今回のイベントに参加された理由をお聞かせください。
・今回のイベント全体に対する満足度を教えてください。