ネットワークLSIシステム研究室においては,「通信ネットワークにより相互に接続されたLSIシステム」に関連する研究を行ってきました. 近年では,多様なLSIシステムがインターネットに接続されるようになり, IoT(Internet Of Things)という名称で呼ばれており,IoTを用いて生活を便利にする,IoTで収集したデータを人工知能技術等を用いて解析して役立てる,ということが実現されつつあります. 一方で,IoTに使われているコンピュータは,「機器の種類や用途が多様」「PCやスマートフォンと比較すると,計算リソースが格段に少なく,セキュリティ対策が困難」かつ「自動車や社会インフラへのハッキングは,生命の危機や社会全体に与える影響が甚大」であるため,ハッキングの危険性が高まっています. 当研究室では,現在,このようなIoTセキュリティ,特に,ハードウェアセキュリティに関する研究をおこなっています .
研究紹介
セキュリティ向けハードウェア(LSI設計・LSI利用)技術
・2009年~2015年まで,文科省系国プロ「CREST」で研究(産総研・三菱電機等と共同)し,以下2つのハードウェアセキュリティ技術で日本トップレベルの技術力を持っています.
(1) サイドチャネル攻撃対策AES暗号回路:暗号回路が動作している際にサイドチャネル情報(消費電力や漏洩電磁波)から暗号鍵情報を不正に窃取する攻撃手法に対する対策回路
(2) PUF(Physically Unclonable Function):LSIの個々のデバイスの製造ばらつきを使用して,デバイスの指紋となる固有IDを生成する技術
・2017年より,再び経産省系国プロ「NEDO」でPUFの研究を実施開始(産総研・パナソニックSCS等と共同)
プロジェクトでは,ブリルニクスジャパンと共同で,カラーイメージセンサを使ったPUFの技術(CIS-PUF)の研究を実施中(図1)
(図1)
車載セキュリティ技術とセンサーフュージョン
・自動車の自動運転技術の研究が進んでいるが,これが実現されると,自動車は走るコンピュータとなり,万一ハッキングをされると自動車が走る凶器になる懸念がある.当研究室においては,実車を用いて車載CANバスに侵入しコンピュータから制御を行う技術と攻撃対策を検討している.(図2)
・また自動運転においては,周囲の状況を把握するために,測距センサなど各種のセンサを使用して,運転制御をおこなっている.測距センサに偽の測距値を計測させるハッキング方法に関する技術と対策を研究している.(図3)
・複数のセンサからのセンシング情報を使って,正確に周囲状況を判断するための「センサーフュージョン技術」をおこなっている.例えば可視光カメラに加えて赤外線カメラを使用すると,夜間にヘッドライトで逆光状態となった人物も正確に判定できる(図4)2つのセンシング情報から人物を抽出するために,人工知能処理(ディープラーニング)の研究もおこなっている.本技術は低消費電力な赤外線アレイセンサやミリ波センサを用いた介護用途にも適用可能であり研究を開始している
(図2)
(図3)
(図4)