サービスラーニングとは
Service Learning
センター長挨拶
山口 洋典
やまぐち ひろのり共通教育推進機構教授
模範的な市民へと自分を磨く
サービスラーニングセンターは、他者へのサービスを通して学び成長する場と機会を提供しています。ここでのサービスとはボランティア活動を指します。アメリカ合衆国において1980年代に大学進学率が高まる中、学生が頭でっかちにならず、模範的な市民として生きていく態度や姿勢を携えて卒業していくことができるように、という観点から研究・開発が進められてきた教育・学習の方法論です。日本では阪神・淡路大震災の際、全国から神戸のまちの復旧・復興を支えようと駆けつけたことを受け、1995年が「ボランティア元年」と呼ばれたのですが、その後、そうしたボランティア活動を通した学習プログラムへの関心もまた高まるようになっていきました。
立命館大学では、2008年に衣笠キャンパスとびわこ・くさつキャンパス(BKC)で、さらに2015年には大阪いばらきキャンパス(OIC)にサービスラーニングセンターを設置しています。これは1995年に阪神・淡路大震災の支援のために期間限定で「ボランティア情報交流センター」が設立された後、1999年には産業社会学部により京都市社会福祉協議会との連携のもとで「ボランティアコーディネーター養成プログラム」が開講(2007年からはBKCでも滋賀県社会福祉協議会との連携のもとで開講、いずれも2012年度で閉講)、そして2004年にはボランティアセンターの設置という、大学と地域とをダイナミックかつアカデミックに往復することを促す取り組みが着実に取り組まれてきたことを継承・発展してきたことによります。運営には教職員のみならず、学生のピア・サポーターとして起用した「学生コーディネーター」も携わっています。
コロナ禍を経て、模範的な市民として生きていく態度や姿勢をどう磨くか、その手段と到達点は極めて多様になりました。学習や生活の空間は物理的なリアルな社会だけでなく、オンラインでのバーチャルな空間もまた対象となったためです。哲学や現代思想の理論的な観点を用いれば、客観的に存在する「リアル」な世界での学びだけでなく、現実として主観的に認識することができる「アクチュアル」な時間と空間において、確かに自分が他者とのコミュニケーションを通じて学びと成長がもたらされているという「リアリティ」が求められるようになっています。
SNSはもとより生成型AIなどにより、身近ではない環境や未知の現場についての情報収集が容易になる中、立命館大学のサービスラーニングセンターでは豊富な実体験を得ることに加えて、それらの体験の意味や価値を自らが言葉にできるようになることに力点を置いています。社会がよりよい方向へと導かれると同時にその担い手の市民的な成長がもたらされるということ、この2つの変容が同時にもたらされることが「サービス・ラーニング」と呼ばれる教育の理論と方法論の本質です。そしてその機会は誰かが用意して提供されるだけでなく、一人ひとりが日々の暮らしの中で一期一会によって見出すことができます。
ボランティア活動を通して学ぶ上では、何をするか(doing)だけではなく、どう振る舞うのか(being)も大切だ、と言われています。もちろん、日々の暮らしの中のモヤモヤを放っておけないけど、最初の一歩をどう踏み出していいか悩む場合もあれば、例えば令和6年能登半島地震の報道などに触れることで遠くの誰かの何かを支えたという思いに駆られている人もいるでしょう。サービスラーニングセンターは、未来の社会や自らのよりよい姿を実現すること(Futurize)への、一人ひとりの志を授業や各種の学習プログラムや地域から寄せられる各種の情報で、さらには学生からの自主企画などの提案を受け入れる、ネットワーキングとパートナーシップのための窓口ですので、どうぞ気軽にアクセスしてください。