小さなダンゴムシ。どれくらいのチカラがあるのかな?

2023.10.02

なぜこの研究をしているの? どんなところが面白いの? 研究の源である「探究心」について先生に聞きました。

  • 小西 聡 教授
    立命館大学 理工学部
マイクロハンドを使ってダンゴムシの足に触れると、その脚力をデータ測定できる! 先生は一体どうしてこの研究をしようと思ったのですか?
触れる顕微鏡をつくりたかったから、といえばわかってもらえるでしょうか。顕微鏡を使えば、小さな虫を「見る」ことはできますね。すると次は顕微鏡で見える世界に、自分の手を入れて触ってみたくなったのです。だからといって顕微鏡の中に自分の指を入れても、大きすぎてなんだかわからないでしょう。そこで自分の手の代わりに動いて、触って、感覚を伝えてくれるマイクロハンドをつくれば、たとえば虫の小さな足に触った感覚を得られるんじゃないかと考えたのです。
ミクロの世界を見るだけじゃなくて、感じてみたい。そんなことができれば、確かに面白そう!
そうでしょ? 実際には、私たちの指は大きすぎるから、ダンゴムシの足のような小さなものに触ることなどできないわけです。けれどもマイクロフハンドを使えば、脚が動いている様子をデータで理解できる。おそらく誰もやっていない研究に、好奇心のままに取り組めるのは何より面白いですね。
もともとミクロの世界に興味があったのですか?
マイクロロボットというすごく小さなロボットや、もっと小さな細胞でつくるロボット「サイボー(細胞)グ」をつくりたいと、ずっと思っていました。おかげで今では細胞を、自動制御(じどうせいぎょ)で育てられるぐらいになりました。
サイボーグ!? すごい!
動きを感じるセンサーや、すごく小さなサイズのパーツを組み立てて、正確に動くマイクロマシンをつくる。これってすごく難しいと思うのですが……。
やわらかな発想と最新の技術による新しいテーマへの挑戦です。自分たちで考えて、つくって、失敗して、原因を考えてというサイクルをくり返す。確かに難しいですね。
いろいろな分野の知識が必要になりそうだなあ。
私は電子工学の出身ですが、マイクロマシンをつくるためには材料の知識からバイオのノウハウ、さらには生命科学から医学、薬学なども関わってきます。そこでまず自分の専門性をしっかり固めておき、その上でさまざまな専門分野の知識を融合、統合していくのです。決して簡単ではないけれど、だからこそマイクロマシンとして一つの形に組み上げられたときのうれしさは強烈です。
先生の研究は、将来どんなところに使われるのでしょうか?
ミクロの世界を触れる顕微鏡なんて、これまで世の中にはなかったわけです。今後は医療やバイオなどさまざまな分野で活用できると思いますよ。世の中には「アンメットニーズ」と呼ばれる、まだ解決されていない課題がたくさんあります。触れる顕微鏡へのニーズが、触れる顕微鏡が出現して初めて認識されるのではないかと期待しています。
そうやって先生が“探究”を続ける理由はなんでしょう?
マイクロハンドをもっともっと小さくできれば、やがて細胞の塊をつかめるようになるかもしれません。細胞を思いどおりに触れるようになれば、医療に貢献できそうですね。そんなアンメットニーズに応えたいし、一つ成功すれば次をやりたくなる。結局は好奇心を止められないから、探究を続けているのだと思います。

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