第2回
〈テーマ〉大学や企業が求める人材?
仕事とは何か? 社会で活躍するために必要な力とは?
〜企業が求める人材像をともに考える〜
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田中 剛 氏
フューチャーアーティザン株式会社
代表取締役社長 CEO兼CHRO
INDEX
変化し続けることが大事
1989年の世界時価総額ランキングを見ると、世界のトップ50社の3分の2は日本の企業でした。それが35年後の2024年には、43位にトヨタ自動車が入っているだけで、トップにいるのはApple、Microsoft、Amazon、Alphabetなど、ほとんどがITの企業です。そのIT業界の中でも、この20年間で大きく変わっています。IBMが世界の白い巨人と言われたメインフレームの時代、オープンシステムの時代、ソフトウェアの時代から、サービスの時代になり、GAFAと呼ばれる企業が出てきました。社会の変化は激しく、変化の周期もどんどんどんどん短くなる時代にあって、企業も変化し続けることが重要です。
AIとの共存も避けられません。当社では、ウェブ会議をする時に、AI君を1人入れています。彼にこのプロジェクトの目的、背景、進捗状況などを教えてくれというと、プロジェクトのフォルダファイルにある膨大な資料の中から、直ちに引っ張ってきて、要約してくれます。人の代わりにAIがすでに十分活躍しているのです。
私は、AIに一番恩恵を受ける国は、日本ではないかと思います。まず言語の壁がなくなります。それに、日本は人口が減少していくので、もうAIを使わざるを得ないです。AIの導入によって、なくなる仕事がある一方、医者、看護師、介護士、保育士、教員、営業コンサルタントなど、人との接点を持つ仕事は残る可能性が高いと言われています。当社はIT企業であり、プログラミングも行っている会社ですが、誰でも作れるようなプログラムを書くプログラマーは不要になるかもしれません。それでも独創的なプログラムを作れるスーパープログラマーは残るはずです。AIと共存する社会では、「考える力」がとても大事なのです。




社会で活躍するために必要な力って?
皆さんには、将来の夢や、なりたい自分のイメージをしっかり持ち、何のためにその仕事をするのか、その仕事をすることで自分はどういう夢をつかみたいのかをしっかり考えてほしいと思います。仕事は「手段」です。勤務する企業の規模よりも、自分が仕事を通して何をしたいか、どうなりたいかが大切です。
社会で活躍するために必要なのは、「論理的思考力」「非認知能力」「リーダーシップ」の3つだと考えています。「論理的思考」とは複雑なものをシンプルにする力でのこと。「非認知能力」とは、自己肯定感や協調性、創造力などの内面的なスキルを指します。実は、社会に出て求められるのは、IQや偏差値など数字で表しやすい認知能力ではなく、この「非認知能力」です。
「非認知能力」の中でも、特に大事な力の一つは「受容性」。人の話を聞いて自分の行動を変えられる力のことです。話を聞いても、自分の行動を変えられるのは約2割。8割の人は「なるほど」で終わってしまうのです。もう一つは「プロアクティブ行動=マインドセット」。率先して組織に影響を与える行動を起こす力です。この力を上げるには、学校生活を充実させること。参加型授業を楽しみ、学校外のコミュニティにも参加して、広い世界で仲間をたくさん作ることもポイントです。他人の成功を心から喜べる「成熟」力も重要視されています。

「リーダーシップ」とはなんでしょう。私は、マネージャーは決まったことを正しく遂行する役、リーダーは常に正しいことを探しながら推進していく役だととらえています。何が起こるかわからない時代となり、日本でもリーダーシップが大事だと再認識され始めました。自分がどう成長したいのかを考え、目標達成に向けて主体的に行動するセルフリーダーシップも大事です。リーダーシップの基本3要素は、「ビジョンと方向性を示す力」「共感してくれる仲間を作れる力」「さまざまなステイクホルダーに対して、組織として継続的に価値を提供していく力」とされますが、私は、「楽しめる力」も加えたいと思います。リーダーは、明るく楽しくやっていくべきだと思います。皆さんも、部活動や生徒会などでリーダーを務める時はぜひ「楽しくやる」ことを心がけてください。日本にはリーダーが必要です。ぜひリーダーを目指してください。
最後に、「あなたには失敗する権利がある」ということをお伝えしたいと思います。日本の若い人はあまり挑戦しません。それは「失敗したら次はない」と思っているからです。しかし、失敗しなければ成長はできません。そもそも、挑戦の中で「失敗」なんてないんです。「上手くいかなかった経験」です。そして、それは、次に活かせるチャンス。いろんな挑戦をして、いろんな上手くいかない経験もたくさんしてほしいと思います。


講義を終えて
田中 剛 氏
フューチャーアーティザン株式会社 代表取締役社長 CEO兼CHRO

- 共催
2024年度GPSP(R2030 推進のためのグラスルーツ実践支援制度)採択 「オール立命館で取り組む新しい創発性人材育成プロジェクト「Rising Stars Nexus」の創設」
キーワード
- #人材育成
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子ども達は未来です。学びの形がどんどん変わっている今、社会とのつながりを持ってほしいので、今日は相互にコミュニケーションが取れたらいいなと思って来ました。今の日本は、少子高齢化、貿易赤字、自然災害…暗いニュースばかりだと感じている人に「案外そうでもないよ」ということを伝えたつもりです。未来に明るい夢を持ち、考えて行動してほしいなと思っています。
講演後に質問に来てくれた高校生がいたことにも感銘を受けました。それも、メモを取った上で、しっかりした意図を持って質問してくれていることをすごく感じました。「将来の夢がないのですが、どうしたら持てますか?」と次のアクションにつながる質問もありました。講演でもお話ししたように、人の話を聞いて自分の行動を変える「受容性」は大切だと思います。自分の行動を変えるために質問してくれた人がいたことが素晴らしいと感じています。
「今までどんな失敗をしてきましたか?」と聞かれたら「失敗したことはありません」と答えます。うまくいかなかった経験は山ほどありますが、それは単にうまくいかなかった「経験」。次に活かせるチャンスです。「失敗したくない」と行動しないのではなく、どんどん行動して失敗してほしいと思います。うまくいかない経験を積み上げることで、最終的な成長につなげてほしいと思います。