アイシン×立命館
びわこ・くさつキャンパス初の共創プロジェクトで
自動車部品のグローバルサプライヤーと
アイデアを事業化するプロセスを共創!
OUTLINE
7月27日、真夏の日差しの中、びわこ・くさつキャンパス(BKC)に、1台の電動キックボードを順番に試乗する16名の学生の姿がありました。エクセル1北側通路に、片道約40メートルのコースを確保しての試乗会。ヘルメットとインナーキャップ、グローブを着用した学生は、最初は恐る恐る低速で、慣れるにつれてスピードを上げて、コースを往復しています。最初からフルスピードで走行しているのは、普段から電動キックボードに乗り慣れている学生でしょうか。試乗が終わるたびに拍手が起き、とても和やかな雰囲気です。
これは、BKCをフィールドに初めて実施された社会共創プロジェクト「学生向け電動キックボードリースサービス事業化検討プロジェクト」のひとコマです。モビリティ分野で幅広い製品・技術を展開するグローバル企業、株式会社アイシンの技術者2人が、学生向け電動キックボードリースサービスを事業化検討するにあたり、学生の移動の実態やニーズを知るため、立命館との共創を希望されました。電動キックボード未経験の学生も多いことから、「実際に乗ってみよう」と、この日、試乗会が行われたものです。
「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」を経営理念に掲げ、移動そのものを楽しい体験にすることを目指すアイシン社と、JR南草津駅~キャンパス間の移動に日々苦労するBKCの学生。レクチャー、ディスカッション、アンケート調査、試乗などを通して、双方が、「移動」について深く考え、ビジネスのアイデアをどのように検証し、具体化し、普及させるのかを追究するプロジェクトです。
EPISODE
EPISODE01
「移動に関する課題」「解決に必要なこと」を
実態把握とニーズ調査のアンケートに活かす
学生向け電動キックボードリースサービスのアイデアは、株式会社アイシンの西園寺 且裕 氏と、鈴木 信太郎 氏によるものです。技術職のお二人は、事業化に向けた検討の経験が少ないため、数年前から親交のあった経営学部の後藤 智教授に相談したところ、TRY FIELDのRINC会員として、社会共創プロジェクトを立ち上げてはどうかとアドバイスを受けたといいます。「我々の仮説を検証するには、現場に出向くことが必要だと考える一方で、大学に行って学生さんの声を直接聞くのは簡単なことではないとも考えていました。そんな中、こうした機会をいただけたのは、とてもありがたいことでした(鈴木氏)」。
BKCは理系学部が多く、男子学生の比率も多いキャンパスです。ここをフィールドとする初めての共創プロジェクトに、他キャンパスからの学生をふくむ約20名が参加しました。
6月10日、アクロスウィング 1F Across Lounge Bエリアとオンラインで行われたDay1では、「移動に関して感じている課題」「課題を解決するためには何が必要か」などについて、全員でディスカッションが行われました。BKCは、最寄り駅のJR南草津駅から徒歩35分、バスでも20分かかることから、学生からは、日々の移動で感じている不便や困りごとが次々と挙げられました。

課題の解決にあたっては、アイシン社の掲げる企業理念「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」に合致した内容や「環境・社会課題に具体解を示しながら事業として成立させ利益を生むこと」も考慮することが求められました。1日、しかも3時間という短い時間内で、さまざまな内容を検討し、アウトプットとして仕上げる必要があります。
「企業人は、限られた時間内で成果を出さなければなりませんが、学生の皆さんには、この短い時間内でのアウトプットは難しいかなと考えていました。しかし、グループ内でさっと役割分担を決め、ファシリテート役を中心にそれぞれが自分の役目を果たし、すべてのグループがアウトプットまでたどりついてくれたことに感銘を受けました」(鈴木氏)。
学生から出されたアイデアに対しても「我々が思いつかないような意見、例えば『駅から大学までの動く歩道がほしい』なんていうアイデアも出てきて、すごく面白いと思いました」(西園寺氏)。
「技術者なら、最初から無理だと考え、無意識に排除してしまうアイデアなので、すごく刺激を受けました。また、抽象度の高い企業理念から、具体的な手段にまで落とし込んでアウトプットしてもらえたことにも驚きました」(鈴木氏)。
この日のアウトプットは、事業化を検討するうえで必要となる、実態の把握とニーズ調査のためのアンケート作成に活用されました。学生の意見も聞きながら調整を重ねて完成したアンケートは、参加学生から友人や家族に配布され、約100人分の回答を集めることができました。「大変だったと思います。素直に感謝しています」(西園寺氏)。

EPISODE02
アンケート分析結果、実現可能性の検証結果を共有
新しい仮説をもとに、次のフェーズへ
プロジェクトのDay2、最終日となる7月27日には、実施したアンケートの分析結果が共有されました。アンケートの設問の意図や、集計の方法、分析の進め方については、任意参加のワークショップでも紹介されていましたが、改めて参加者全員へ説明される機会となりました。
結果の分析にあたって、お二人は、大阪いばらきキャンパス内のMicrosoft Base Ritsumeikanを訪れ、効率的な分析の手段について相談したそうです。「ソフトウエアの専門家ではない我々でも、結果を視覚化して分析するツールを簡単に作ることができ、本当にすごいと思いました」(鈴木氏)。
事業内容に関わる設問への回答からは、求められるサービス内容や、誰に向けて何をアピールすべきかなどが見えたこと、それに基づく新しいビジネス仮説が立てられたこと、仮説の裏付けや実証のために関係者への協力を求めるフェーズに移行したいと考えていることなどが報告されました。さらには、サービスの社会的需要に至るまでに必要な検討の具体的なポイントについても、アンケートから得られたことが紹介されました。


また、主に理工学部の学生に向けて、お二人が取り組んだ概念実証の紹介もありました。概念実証とは、新しいアイデアや技術を本格的に開発する前に、実現可能性や有効性を検証するプロセスのことです。詳細なデータと共に検証結果が示され、このサービスに対して技術を提供することは、アイシン社としても大きな意義があるというお二人の考えが述べられました。加えて、秋学期にも引き続きプロジェクトを続けるため、社内で交渉中であることも明かされました。
その後、電動キックボードへの乗車体験から何を感じるかを自分自身で確かめるため、屋外での試乗会が実施されました。
EPISODE03
乗車体験で感じたことを次の一手に活かす
プロジェクトは一旦終了後、秋学期へ継続予定
試乗会を終え、アクロスウィング 1F Across Lounge Bエリアに戻った学生は、グループごとに「試乗の感想」「秋学期のプロジェクトで何がやりたいか」を話し合い、発表し合いました。電動キックボード初体験の学生が多かったことから、「楽しい」「案外速い」「操作しやすい」「爽快感がある」など、ポジティブな感想が寄せられた一方で、バッテリーや駐輪スペースへの不安、長時間乗車による疲労度への懸念、珍しさから見られることの恥ずかしさなどについても正直な感想が寄せられました。また、秋学期にやりたいこととして、多くのグループが、人目が気にならないようにするための施策や集客のためのイベントをあげました。
学生の発表を聞いた西園寺氏からは「駅からキャンパスなどへの『ラストワンマイル』のための乗り物が必要だという価値観は今後広がっていくと思います。どのような乗り物が残るかはわかりませんが、皆さんからいいヒントをたくさんいただきましたので、引き続き立命館との共創を続けられるように頑張りたいと思います」とのお話がありました。
プロジェクトはこの日で一旦終了となります。秋学期に向けて、西園寺氏、鈴木氏から締めくくりの言葉がありました。「私はエンジニアなので、学生さんの前でフラットに話をするのは初めてのことでした。その意味で、このプロジェクトは、私にとって、新しいビジネスを作るチャレンジであるだけでなく、学生さんとどう接するかというチャレンジでもありました。この素晴らしい経験を、秋学期にもう一度やってみたいと、素直に思っています」(西園寺氏)。


「あっという間に終わっちゃったというのが正直なところです。もっとこうすれば良かったという思いはたくさんありますが、このプロジェクトを通して、とても有益な情報や気づきを皆さんからたくさんいただくことができました。部品メーカーの技術者にとって、このような、ものづくりではないところから始まる仕事はほぼありません。このプロジェクトは我々にとっても大きなチャレンジです。続けて参加してみたい方がいたら、ぜひ一緒にやりましょう」(鈴木氏)。
頭、身体、体験から得た感覚。それらをフルに使って第一線の技術者に食らいつき、アイデアを事業化するためのリアルなプロセスを体感するプロジェクトとなりました。
REFLECTION
プロジェクトを終えて、関わった方々の
振り返りをお聞きしました
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株式会社アイシン 製品開発センター 技術開発本部 第1先行開発部 企画統括室 室長
西園寺 且裕氏
このプロジェクトに参加してくれた学生さんは、電動キックボードなどの乗り物に 興味がある方、駅から遠いという通学の困りごとをみんなで考えてみたいという方など、動機が明確な方が多い印象でした。だからこそ主体的に取り組んでくれるだろうという期待感がありましたし、実際にどんどん意見を出すなど積極的に参加してもらうことができました。
新しいサービスとは、そう簡単に社会に普及できるものではありません。いくつも打ち上げた結果、よいものが生き残っていくことになります。しかし、とにかく世に出さないことには何も始まりません。その打ち手の一つとして、今後も引き続き頑張っていきたいと思っています。
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株式会社アイシン 製品開発センター 技術開発本部 第1先行開発部 企画統括室 主査
鈴木 信太郎氏
今、このプロジェクトを何としても続けていきたいという思いを強く持っています。社会的な課題に対して具体的な解を提供でき、しかも収益も見込める事業になる可能性があると思うからです。そのためのヒントを、学生さんたちの意見やアイデアと、アンケート結果から得ることができました。
このプロジェクトは、学生の皆さんに、通常の就職活動だけだはわからない当社の雰囲気を知っていただく貴重な機会にもなりました。また、我々も、学生さん一人ひとりのポテンシャルを肌で感じることができました。企業が優秀な人材を確保することが難しくなっている中で、大学との共創プロジェクトには、採用面での価値もあると考えています。
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立命館大学デザイン・アート学部/研究科 社会共創推進本部 副本部長
中山 郁英准教授
皆さん、お疲れさまでした。
Day2では「体験することの価値」をすごく感じました。電動キックボードに実際に乗ってみることによって、ポジティブな感情になるということもありますし、安全面での懸念に対する具体的な検討も進むのではないかと思いました。私の専門であるデザイン学の分野でも、プロトタイプを作ることの意義を改めて感じています。
駅からキャンパスまでの移動やモビリティというテーマは、BKCだけでなく、衣笠キャンパスにとっても大事です。このプロジェクトをきっかけに話が広がる可能性もあるかもしれないと思いました。
VOICE
イベント参加者の声
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本坊 匡祟さん(経済学部 3回生)
社会共創プロジェクトへの参加は初めてです。学部や回生が違う人とディスカッションしたり、社会人の方の生のお話を聞いたり、座学の授業とはまた違う、大きな学びになる経験でした。参加して良かったと思います。技術的な話はわからないのですが、企業理念を実現するためにさまざまな試行錯誤をすることが面白いと感じています。秋学期も開催されるならぜひ参加したいと思います。

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武井 アンリさん(スポーツ健康科学部 2回生)
社会共創プロジェクトの存在は知っていましたが、参加する機会がありませんでした。今回はBKCで初めて開催されると聞き、楽しそうだなという軽い気持ちで参加しました。短い期間でしたが、それぞれの回で、初めての経験や、初めて得られた知見がありました。社会の仕組みや、企業の中で大人がどのように働いているのかなどを実際に知ることができたのも良かったと思います。
普段は、どうしても同じ学部の人と関わりがちになるのですが、プロジェクトではいろんな学部の人がいて、ディスカッションの中でも「この人はすごく論理的だな」「自分ではできない話し方をする人だな」など、色々と感じるところがあり、視野も広がりました。
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植田 光咲さん(産業社会学部 3回生)
キックボードに乗るのは初めてです。原付みたいに重いのかなと思っていたのですが、意外と軽くて、小回りも効いたので、移動手段として受け入れられるんじゃないかなと思いましたし、乗ることの快感も味わうことができました。乗車経験のある人が増えていくことによって、だんだん社会に受け入れられていくのかなと感じました。
普段は衣笠キャンパスで学んでいますが、このプロジェクトのために初めてBKCに来ました。就活に向け、グループワークが良い練習になると思いましたし、課題解決のためにメンバーの意見をまとめていくプロセス自体が、社会に出てからも活かせる経験になるのではないかと思ったからです。BKCは理系の学生が多く、回生が違う人もいるので、考え方やディスカッションの方法にも違いがあります。アンケート結果から社会的背景などを考察することは社会系学部の領域ですが、データ分析などは理系学部が強い部分。お互いの強みを生かせるのが、グループワークの良いところだと思いました。すごく楽しかったので、秋学期も絶対参加したいです。
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益川 雄貴さん(理工学部 4回生)
私が専攻する交通工学の分野では、今、電動キックボードなどのマイクロモビリティが注目されています。公共交通機関ではカバーしきれない、駅やバス停から家や職場などまでの「ラストワンマイル」を、マイクロモビリティや、乗合タクシーなどのオンデマンド交通によって補う可能性が探られているのです。一方で、個人の利便性を優先してマイクロモビリティの利用が広がると、交通渋滞や、公共交通機関の利用者減による衰退など、社会全体にとっての損失につながる可能性もあります。私は、このような社会的矛盾についても考えながら、プロジェクトに参加していました。
今は、参加できて本当に良かったと思っています。ディスカッションの中で、交通工学の知識がない状態から出されるフラットな発想が、私にとってはとても新鮮で良い学びになりましたし、他学部の人と専門外の話ができたこともすごく楽しかったです。マイクロモビリティと関係がないような学部、例えば薬学部の人なら、この事業を「健康」という視点から考えることができるかもしれません。これこそが総合大学の良さだと思いました。

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