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研究室の紹介

当研究室について

 当研究室は、日本の私立大学で唯一、地球の内部を主な研究対象としている研究室です。私立大学の利点を活かし、自主・自律的な教育・研究活動を目指しています。

地球内部物理学とは

 「地球内部物理学」は、地球の表層や内部で起こるさまざまな現象、また、それらの相互作用を、物理学的な手法を用いて解明する学問分野です。私たちが日々踏みしめている地球の表面がなぜ、どのように動くのか、そして、地球の内部がどのような構造をして、それがどのように時間変化するのかを理解するには、この分野の基礎的な事柄を習得する必要があります。

 地球誕生から現在までの約46億年間に、地球がどのような進化をたどってきたのか、巨大なユーラシア大陸の東に弓状の形として存在する日本列島がどのように形成されたのか、そもそもなぜ、太陽系の惑星で地球にだけプレートテクトニクスが存在し、海洋と大陸が存在するのか――といった、地球科学上の基本的な問題は、野外での調査・観測や岩石試料の解析を扱う地質学や地球化学といった学問が主役となることがほとんどです。しかし、それらの分野の研究から生み出される仮説や前提条件の理論的な裏付けには、やはり物理学的なセンスが必要とされます。

 地震や火山噴火、それに伴う津波は、私たちの生活や生命・財産を頻繁に脅かします。その反面、数十万年、数百万年以上の長い時間スケールの地殻変動によって生まれる多種多様な地形は、各地の観光資源となり、人々にダイナミックな地球の活動を連想させます。また、世界各地で採取される美しい鉱物や宝石、生活に欠かせない鉱物資源や化石燃料、日本人であればほとんどの人が好む温泉などは、まさに地球内部の大規模な活動が私たちにもたらす恵みです。
 世界の地形の分布(Amante and Eakins, 2009;ETOPO1モデル)。このような地球の「顔」となる地球表面の形は地球の内部の複雑な運動によって作られます。地球の表面はどのように、そして、どれくらいの速度で動いているのでしょうか?

マクロからミクロまでの視点で考える

 地球の内部はマントルとコア(核)に大別されます。地球の半径が約6371 kmに対し、岩石層であるマントルの厚さは約2900 kmで、その体積は地球全体の体積の実に約84%を占めます。したがって、マントルで起こる運動が地球の表層の運動を支配し、マントルの活動の行く末が地球の将来、ひいては、地球の環境変化を通して私たち人間を含む生物の運命を決めるといっても過言ではありません。

 マントルは固体でありながら、長い時間スケールでは流体的に振る舞います。プレート運動や大陸移動、造山運動はもちろん、地震や火山噴火も、ほとんど全ての地学現象の根底はマントルの熱対流運動、つまり、マントル対流にあります。その空間スケールは数千キロ以上に及び、時間スケールは数千万年程度と非常に長いものとなります。一方で、マントルの流れを支配するメカニズムは、突き詰めると、岩石をつくる結晶の原子配列の変化、結晶の粒径の変化などといったミクロな現象にまで議論が及びます。

 地球内部物理学では、そういった時間的にも空間的にもマクロからミクロまでの視点で、地球で起こる現象の謎を解き明かします。このためには、まず、どのような地球科学的な観測・実験結果があるのかを整理・理解し、次に、その観測・実験結果を理論的に説明するための数理モデルを考え、実際に数値解析や数値計算をして検証する必要があります。その先に本当の地球の姿が見えてきます。
 地球のもう一つの「顔」。地球儀では見かけないこの地図は、一体何の分布を表しているのでしょうか?この分布も地球の内部の複雑な運動と関係します。Lemoine et al. (1998)のEGM96モデルにもとづく。

当研究室が求める学生

 当研究室では数値シミュレーション実験や理論解析の手法を用いて地球科学の研究を行います。物理学、数学、英語の一定レベル以上の学力が必要なことはもちろんのことですが、計算をするにしろ、計算結果を可視化するにしろ、プログラミングに苦手意識がないことが重要です。長時間、机やコンピューターに向かうこと自体に抵抗感がある学生は大変な苦労をすることが予想されます。

 地球に対する理解を深めることの面白さや意義を自ら見いだして、自分の力で積極的に研究に必要な情報を収集し、長期的視野を持って貪欲に勉強することができる学生を募集しています。

 地球科学・地球物理学を専攻する学生に求められる能力としては、自然現象や地学現象を支配する物理過程を数学で徹底的に解き明かすことができる能力、教科書ですでに与えられている難しい数学や物理の問題を解くことができる能力というよりも、自然現象や地学現象の解明のために必要な「問題」を自ら設定できる能力の方が重要となることが多いです。前者は3回生までに勉強した数学や物理が大いに役立ちますが、後者は必ずしもそうではありません。

 特に、当研究室で研究する学生にとって大切なことは、数値実験モデルを構築する際、あるいは、得られた数値実験結果の検証の際に必要とされるさまざまな地球科学的な観測事実や観測データに関する知識量、そして、それらを生み出したさまざまな学問分野への理解や敬意です。したがって、3回生までに数学や物理の勉強にあまり一生懸命取り組んでこなかった学生も、新しいことを勉強したいという意欲、情報収集のためのコミュニケーション能力(これは単にお喋りが得意ということではない)、困難にぶつかってもそれを打開できる根性があれば、卒業研究で挽回できるチャンスは大いにあります。

 当研究室の学生には、観測が困難な地球の内部の活動と私たちが住む地表の運動との関係、そして、そういった地球全体の大規模スケールの活動と私たちの生活に密接に関わる地震や火山噴火などの自然災害の関係、さらには、気候変動や生命環境変化との関係まで興味・関心の幅を拡げ、卒業後・修了後も役立つ「一生もの」となる科学的知識を習得していただきたいと考えています。
 世界の地震の震央分布(2000年から2019年に起こったマグニチュード(M)≧5.3の地震、USGS Earthquake Catalogにもとづく)。丸印の大きさはMの大きさに比例し、赤色、緑色、青色の丸印はそれぞれ震源の深さが0~100 km、100~300 km、300~700 kmを表しています。私たちの生命や財産を脅かすレベルの大きな地震は地球のどのような場所で起こるのでしょうか?

卒研生の年間スケジュール

※下記のスケージュールは年によって異なります。

予定行事
前年度12月中研究室「仮」配属
前年度1月~3月仮配属者との顔合わせ・進路希望調査、研究室配属前課題の提出など
前年度3月上旬研究室配属者の確定
  
4月1日研究室配属
4月上旬春セメスターの卒研ゼミ開始(輪読)
4月中歓迎会
4~5月中卒研テーマの決定、研究開始
5月下旬日本地球惑星科学連合(JpGU)大会。学会参加など
7月下旬暑気払い
9月上旬~中旬卒研第一回目中間発表会(研究室主催、院生出席)
9月下旬秋セメスターの卒研ゼミ開始(研究進捗状況報告など)
9月頃日本物理学会年次大会。学会参加など
12月下旬卒研第二回目中間発表会(研究室主催、院生出席)
12月下旬忘年会
1月中旬卒業論文初稿提出締切
2月上旬卒研最終発表練習会(研究室主催、院生出席、2週実施)
2月中旬卒研発表会(学科主催)
2月中旬卒業論文最終版提出締切
3月下旬卒業式・学位授与式・送別会

研究室の設備

  • PIV流体解析ソフトウェア
  • 4Kビデオカメラ
  • ハイスピードカメラ(学科共有)
  • 流体実験用デジタルホットプレート
  • FDM式3Dプリンター
  • 流体解析用パソコン
  • ストレージサーバー
  • Linuxワークステーション
  • ラバランプ(対流運動を観察するおもちゃ)
  • さまざまな岩石の標本

地球内部物理学研究室

〒525-8577
滋賀県草津市野路東1-1-1
立命館大学
びわこ・くさつキャンパス
ウエストウイング5階

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連絡先:
masakiy○fc.ritsumei.ac.jp
(○はアットマーク)