日本電気株式会社(NEC)石原孝通

Biographi
  • 2007年理工学研究科 情報システム学修
  • 2007年日本電気株式会社に入社
  • 趣味 ゴルフ、今に一回くらいでラウンドしている。

IT技術を駆使し、社会基盤設備に貢献する。

システム開発の全体像をつかんだ入社1年目

 火災、もしくは急病人が出た時に、私たちは119 番をダイヤルする。通報を受けると、司令室は出動部隊に場所や状況などを伝え、消防車や救急車が迅速に現場へ向かう。このプロセスをスムーズにし、かつ確実な人命救助を行う上で、IT の有効活用が欠かせない。いわゆる“消防防災ソリューション”。このシステム開発の経験を持つのが、石原孝通である。

 「入社して最初に配属されたのが、消防防災ソリューション事業部でした。正式配属されてしばらくは、設計書の作成、開発、テストとひと通りの開発プロセスを経験し、協力会社と共にプログラムの改造なども担当していました。その後は実際の作り込みよりも、エンドユーザーとなる消防署のご担当者とお打ち合わせした要望に従い、協力会社に指示を出しながら開発作業を推進させる役割を担っていたのです」

 システム開発にはいくつかのプロセス(工程)があり、一般的には“上流工程”、“下流工程”といった役割分担がされる。そして、石原が語るように、上流はユーザー(お客様)との調整によってシステムの全体像を描き、そこからの指示に合わせて、下流とされるシステム開発会社がプログラム作成を進める。つまり、石原は入社1年目の早くにすべての開発プロセスをOJT として経験した。

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1秒、1.5 秒の違いで、人命の安否が左右される

 「2年目からは本格的に一プロジェクトの担当者となりました。消防システムは機能ごとにサブシステムが分かれていて、その中の『地図検索システム』を担当しました。これは消防の指令センターで運用されるものです。たとえば、NTT の固定電話からの通報だと、電話番号からひもづいて地図上に場所を示してくれます。さらに、周辺にガソリンスタンドや工場など、発火物や危険物を有する場所があるか否か。中には現場や近隣住宅に寝たきりの方が暮らしているといった情報を収集できる機能を持つケースもあります」

 石原が扱うシステムは簡単に言えば、汎用性の高いパッケージソフトのような形で構成されている。そのため、ユーザーとなる各消防署のニーズに合わせて機能の追加や変更といったカスタマイズが可能なのだ。また、これはあくまでも地図検索が主な機能であり、消防車等に搭載されるナビシステム関連の開発は別のセクションで行われている。

 「この仕事では第一にユーザーであるお客様との調整やお問い合わせへの対応が主な役割。もちろん、入社2年目では実現が難しい技術的なハードルなどわからないことも多いので、自社の先輩だけでなく、協力会社の先輩エンジニアからアドバイスをもらうこともありました。また、他機能の開発チームと連携を密にすることで、システム全体が熟成します。そのため、技術的なノウハウだけでなく、開発全体の潤滑油となるコミュニケーション能力が問われるポジションなのです。そして、結果的にユーザーから『システムのリニューアルによって、現場到着が1~ 1.5 秒も早くなった』なんて言われると、心から嬉しくなります(笑)」

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位置情報の研究が実り、ついには特許を取得する

 人命に関わる仕事だからこそ、その責任は非常に重い。ひとりでも多くの命を救えるならば、どんな努力も惜しまない。そんなモチベーションを彼は大学時代に見いだした。

 「大学では西尾先生のユビキタス環境研究室に所属していました。当時、“子供の見守り防犯プロジェクト” を産・学・民の連携で行っていたのですが、そこへ私も参加したんです。ここではIT を有効活用した防犯の研究を推進していました。自動販売機にネットワーク装置を設置したり、ボランティアの家庭に無線基地局を作って、子供の位置情報を取得するといったさまざまな試みをしていたのです。これをきっかけに、私自身は位置情報の研究を始めましたし、将来はIT を使った世の中に貢献できる仕事がしたいと強く意識するようになった。言わば、私の人生観が立命館で大きく変わったのです」

 そう語る石原の学生時代で最もスポットを当てられるのが、特許の取得に関わったことであろう。 「ある電機メーカーと、先生と私の三者でPHS 端末を利用した“見守りブザー” の開発を行いました。これはPHS を使って子供の位置情報を取得して、防犯に役立つという趣旨でしたが、これが何と特許を取得できたんです。試行錯誤して、何度も実証実験をしての結果でしたが、うれしいというか、驚きもありました」

 学生時代に追求した位置情報の研究が認められ、冒頭で記したように石原は自身の知識や経験が活かせるセクションに配属された。しかし、入社3年目の今、彼は別の領域でエンジニアとしての技術フィールドを広げようと奮闘する毎日だ。

 「現在は公共ソリューション事業部へ異動し、主に役所で運用される人事・給与システムの開発に携わっています。公共とは言え、防災関係とは作る中身が違いますが、エンジニアとしての仕事に大きな変化はありません。もちろん、新しい技術を吸収するチャンスですし、後には役所を利用される人々の利便性を向上させるシステムを開発できる可能性もあるので、これからどんな案件に関わるのかと楽しみにしています」

 IT をうまく使って人々の安全を守り、社会に安心や利便性をもたらす――石原のようなIT エンジニアはひとつの理想像と言えよう。

GIS

Geographic Information System:地理情報システムの略。詳細な位置情報を持つ視覚データから的確な分析や判断することが可能になる技術。
防災技術に活用されるなど、幅広い分野での研究が進められている。

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