2007年度JASRAC寄附講座
音楽・文化産業論U
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2007.12.22
講師:山本裕治(やまもと・ゆうじ)先生


1948年広島生まれ。
1972年広島大学政経学部卒業。野村證券鞄社。その後リース会社、商社を経て、1991年椛謌鼡サ商入社。社長室長、制作本部長を歴任。
現在、常務取締役音楽ソフト事業本部長兼社長室長。




「カラオケ文化論」



【冒頭に、椛謌鼡サ商のTVコマーシャル企業編・DAM編・ビッグエコー編の3編が流れたのち
授業が始まりました。




はじめに



 今見ていただいたCMは、カラオケの楽しさを世の中にどう訴えていくか、カラオケの在り方をどう考えて広めていくかということを考えて作った今年のCMです。今日は、カラオケがどのようなきっかけで誕生して、どのようにしてここまで広まってきたのか、またカラオケと音楽業界とのかかわりや著作権の問題などについて、幅広くお話したいと思っています。そして、カラオケというものを少しでもご理解いただければと思います。



1.カラオケの誕生と発展の理由



(1)カラオケの誕生

 1960年代後半、カセットテーププレーヤーにマイクを付けてオリジナルの歌に合わせて歌うというカラオケの原型のような装置をスナックに置いたことが、カラオケの始まりだといわれています。当時、カラオケ専用ソフトなどはまだありませんでした。最初の専用ソフトとなった8トラックテープが神戸で誕生したのは、1970年代の初めです。当時車のカーステレオに使われていたのですが、カセットテープの普及でだんだん使われなくなり、その廃品利用として始まったとされています。

8トラックテープは文庫本くらいの大きさで、その名の通りテープのトラックが8つありました。その頃は1曲で2トラックを使用していたので、その8トラックテープは1本に4曲入ります。その8トラックテープにボーカルを抜いた伴奏用の楽曲を入れ、スナックなどで始めたサービスがありました。始めたのは井上大祐さんという方です。この方は、アメリカの『TIME』誌に「20世紀にもっとも影響力があったアジア人」として紹介されたり、パロディー版のノーベル賞「イグ・ノーベル賞」を受賞したり話題になった方です。

それまで、日本人はシャイだから人前でマイクを握って歌うなんてできないというのが当たり前の考えでした。しかし酒の勢いもあってか、意外に気持ちがいいということで、おじさんの酒の席での娯楽として全国に広がっていきます。最初はバーやスナックなどの飲み屋から誕生したので、対象はおじさんが大半でした。しかし1985年にカラオケボックスが誕生し、現在のように女性や10代の若者も参加できるようになりました。



(2)カラオケが日本で誕生し定着した理由

カラオケが日本でこれだけ定着した理由には、いろいろな背景があります。日本には民謡や大衆歌謡などが愛されてきたという歴史があり、歌は本来自分たちで歌って楽しむものだったということが一つです。その後文化の発達とともに専門職としての歌い手が生まれたことで、いつの間にか歌い手と聞き手に分かれていきました。また日本の音楽教育は高水準で、とくに歌唱については諸外国と比べると教育が行き届いていたので、誰もが最低限歌うことの出来る環境が整っていたということも挙げられます。そして日本人や中国人、韓国人など東南アジアの人々は、仲間内で集まるのが好きで、そこにお酒が入れば当然盛り上がり、ストレス発散にもなるカラオケは比較的受け入れられやすかったという背景もあります。本来は農耕型で行動範囲の狭い日本人の手軽な娯楽として、カラオケは非常に便利な娯楽になったんですね。また戦後、日本が復興するにつれてなかなか余暇を楽しむことができない時代になっていきます。とくに昭和初期の人たちは仕事一辺倒でしたが徐々に生活も豊かになり、自分の娯楽や楽しみを求めるようになりました。そういう時代にカラオケは適合したのだと思います。ほかにも日本独特の習慣である「仕事帰りの一杯」が、日本のカラオケ文化を支えた背景にあると思います。

われわれ第一興商も、1980年代後半に日本でカラオケが大流行した時期にアメリカをはじめとした欧米諸国にカラオケ普及のために子会社を出したのですが、日本とは生活習慣が違うためになかなか定着しませんでした。やはり日本独特の生活文化が、カラオケとぴったり合ったことが大きな要因でしょう。

毎年発表されるレジャー白書によると、外食、海外旅行、国内旅行、ドライブに次いで、カラオケが余暇活動の上位として挙げられています。今ではカラオケは、国民的に定着した娯楽ですね。



(3)おじさんの娯楽から国民的娯楽へ

カラオケがおじさんの酒席での娯楽であった段階では、国民的娯楽までは発達していませんでした。それがここまで発達するには、カラオケ機器の進化が大きなきっかけとなってきます。

8トラックテープのカラオケは音だけしかなかったので、歌詞本を必死でめくって自分のリクエストした曲のページを探し、そこに載っている歌詞を見ながら歌っていました。当然歌いだしもわからないし、非常に歌いづらいシステムだったわけです。そんな中、1980年前半にレーザーディスクが登場します。レーザーディスクが生まれたことによって、画面上の歌詞はもちろん、色変わりテロップも出てきました。さらにジュークボックスと同じように、機械が自動的に対象曲のレコードをピックアップしてくれる仕組みがカラオケにも登場します。オートチャンジャーカラオケです。これが発明されたことで、リモコンさえあれば利用者が簡単に操作できるようになりました。

1980年代半ば、たまたま人手不足で困っていたお店が、不要になったコンテナにオートチャンジャーカラオケと1曲100円のコインボックスを置いたところ、これがたちまち流行りだしました。1980年後半にかけて、郊外の道路沿いには多くのコンテナが並び、カラオケボックスブームが全国に広まっていきました。それまでバーやスナックだけにしかなかったカラオケは、お酒と関係ない場所でしかも仲間内だけでも楽しめるようになり、10代の若者や女性に大ウケしました。スタート時点では郊外型が多かったのですが、またたく間に都心などでもビルのインドアタイプが増えていきました。現在みなさんが利用しているようなカラオケボックスが沢山できて、1990年代前半は週末になると1時間待ちでも入れないくらいのブームになります。カラオケだけの影響ではないと思いますが、レコードの売り上げもそれを境にぐんぐん上がり、新譜が出たらすぐにCDを買って歌う練習しカラオケに行くという循環ができました。カラオケも音楽も1990年代は非常に華々しい状況でした。



(4)カラオケがビジネスとして成功した理由

カラオケがビジネスとして成功した理由にも、さまざまなものが挙げられます。

技術や文化は、経済的裏づけがないと広がりません。例えばレーザーディスクなども、カラオケというコンテンツがなければ広がらなかったと言われているメディアです。カラオケも、8トラックテープからレーザーディスク、そして通信カラオケと、技術革新によって発展してきました。

また、カラオケを楽しむ人のニーズを的確に捉えて市場を拡大してきたこと。つまりカラオケをもっと楽しんでいただくためには、どういう機能や技術を導入すればいいのかということを考えて提供してきました。例えばカラオケで歌ったら気持ちいいと感じるのは、エコーという機能があるからです。それに、キーコントロールという機能もあります。カラオケのソフトは、オリジナルの曲からボーカルだけを抜いて作られているのではなく、カラオケ専用に作られているソフトです。オリジナル楽曲だけではメロディラインもないし、オリジナルのキーで素人が歌うのはなかなか難しい。われわれは皆さんに歌いやすいと感じてもらえるように、ボーカルのメロディラインをうまく出して捉えやすくしたり、キーをコントロールして歌いやすくしています。あるいは、映像に関しても同様です。レーザーディスクが最初に登場したとき、当然歌詞のテロップは必要だろうということは分かっていましたが、映像が必要かということに対しては議論もありました。初期の映像には、わけのわからないコント風の映像が使われているものもありましたが、現在ではアーティスト本人の映像や、その曲調に合った映像を使うことで、その曲の雰囲気が盛り上がるようにしています。ほかにも採点の機能をつけたり、いろいろな場を演出できるように多様なスタイルのカラオケボックスを考えたり、歌う人のニーズを的確に捉えたということも、カラオケがビジネスとして成功した大きな理由だと思います。

もう一つは、カラオケが1曲100円というシステムから始まったことで、カラオケは有料コンテンツサービスとして定着していることです。カラオケが事業として定着できた非常に大きな理由です。またカラオケを設置する店も、それによってお客さんが増えます。歌ってもらうことによってさらにお金が入ります。お店によってはカラオケを導入する資金力が無い店もありますが、定額でレンタルすることによって導入時に大きな負担がかからないシステムも導入しました。また、毎月リニューアルされるコンテンツに対して、お店も対価を払うというビジネスがきちんと確立しています。権利者や著作権の問題としても、カラオケに新譜が入ればレコード会社のCDの売り上げにも寄与するということで、権利者やレコード会社からも歓迎されました。権利関係などがクリアでない時期もありましたが、JASRACと連携して前向きに処理してきたことが、カラオケがビジネスとしてうまく成功した理由でしょう。



(5)カラオケの利用動機

 カラオケの利用動機は非常にシンプルで、歌うのが好きだからというのが最大の動機です。その他、ストレス発散のため、親睦を深めるため、お酒の延長線上で、嫌だけど付き合いで、歌の練習のため、聞いてもらう快感があるからといったものがあります。自分の歌唱を聞いてほしいというニーズも結構大きいようです。



(6)やがて世界が歌いだす

 日本では定着しているカラオケですが、海外ではどうなのでしょうか。1980年代後半、日本でこれだけ盛り上がっているカラオケだから海外でもビジネスになるだろうと、当社だけではなく日本のカラオケメーカーの多くが積極的に海外進出しました。東南アジア、欧米などです。欧米では、勤務帰りにみんなで一杯やるという習慣もないしそういう店もない。それにカラオケボックスはドラッグなど治安の問題などが難しく、海外では非常に足かせがありました。しかし今や、カラオケという娯楽自体は着実に世界に広まっていて、韓国、台湾は日本並みで、中国の北京や上海などには大規模なカラオケボックスが次々にできつつあります。ニューヨークやロンドンでも、パブなどでカラオケが流行っています。この場合のカラオケは、ディスクジョッキーが誰かをステージに引っ張り上げてみんなで盛り上がるというスタイルで、日本の自己陶酔型とは少し違ってみんなで楽しむという感じです。最近はプレイステーションやWiiを使ったゲームソフトとしてのカラオケも、アメリカなどでヒットしていて、日本のアニメと同様に日本発の文化として全世界に広がっています。



(7)民生用カラオケの歴史

これまでは、バーやスナックなどにおけるカラオケの話をしてきましたが、次に家庭におけるカラオケについてお話します。

 民生用のカラオケは早い時期からいろいろなメーカーから出ていて、業務用カラオケと同じ進化をたどっています。8トラックカラオケからカセット、CD、LD、ビデオCDという流れで、カラオケ機器、ソフトともに発売されています。普及はしたものの、難しい面もありました。カラオケを楽しむ一つの動機としてのストレス発散などは、とくに家庭では住宅事情等で実現が困難です。しかし5〜6年前、タカラが「e-Kara」という、テレビに接続するだけでカラオケができる商品を売り出し、成功しました。マイクの形をしていて、その中にすべての機能が入っているカラオケです。カラオケボックスに行けない小学生などにも、おもちゃ感覚で使えるということで広がったようです。最近はジャパネットたかたなどでもマイク形カラオケを宣伝していて、結構売れているようです。



(8)カラオケ参加人口とルーム数の推移

 左のグラフを見てください。1996〜7年をピークに、16万室あったカラオケボックスのルーム数は13万室まで落ちています。参加人口も同様に落ちていて、2000年ぐらいからは横ばい、昨年から若干上向きにも感じられます。ルーム数の減少については、1990年代に膨大な数に膨れ上がったカラオケボックスも、供給過剰で過当競争により、運営状態が悪化した店舗が増加したことが要因です。その後、われわれビッグエコー、シダックスや関西のジャンカラなど大規模チェーンが伸び、中小店が淘汰されてきたことも原因となったようです。

利用する側にとっては、大規模チェーンの躍進でお店や部屋がきれいになり、飲食も充実して機械も使いやすくなったりと、内容的には良いルームが増えてきたのではないでしょうか。今後も皆さんにとって、快適に楽しんでいただける施設が増えてくるだろうと思います。



2.カラオケの現状と音楽業界



(1)カラオケの普及台数

 現在全国には、カラオケの機械が41.7万台あると言われています。そのうち、バーやスナックなどの居酒屋市場が19.4万台。カラオケボックス市場は13.1万台です。そのほか、ホテルや宴会場などの宿泊市場が2.8万台。その他市場として老人施設などにも可能性が広がっています。

この普及台数もピーク時には50万台を超えていましたが、現在は若干減少しています。もっとも減ったのは、酒場市場です。とくに近年では、バーやスナックで飲酒運転の規制が強まったことで店舗数の減少も見られ、同時に設置台数そのものも減っているという状態です。



(2)カラオケの歌唱とレコード売り上げ

 カラオケの歌唱とレコード売り上げは、密接な関係にあります。カラオケボックスが登場するまでは演歌や歌謡曲がカラオケの主流で、カラオケで歌うことがヒットにつながる傾向はそんなに顕著ではありませんでしたが、90年代には相関関係が非常に深まってきました。それまでは、CDが売れてからカラオケで歌う「歌唱度数」には多少ずれがあったのですが、90年代はほとんどイコールでした。人より早く歌うために早くCDを買ってカラオケで歌うという現象が起こったんです。しかしそれが加熱し、90年代後半には新曲をいち早く覚えて歌うことに対して、疲れたという声が聞かれるようになります。

また90年代半ばから携帯電話が普及し始めます。それまでカラオケボックスは、若者のコミュニケーションの場でした。しかし今は、物理的に集まらなくても携帯電話でコミュニケーションがとれます。つまりカラオケのような場が必要とされなくなってきたことによる「カラオケボックス離れ」が起こってきました。やはり生活や文化の変化は、娯楽にも大きな影響を与えます。

 実際に、レコード売り上げとカラオケの関連性を、下のグラフを通して見てみましょう。さきほどの、カラオケ参加人口のグラフと似たラインを持っているのが、レコード生産額の推移です。カラオケボックスのピークは1996年。レコード生産額は1999年がピークです。このときの市場は6,000億近かったのですが、昨年度は3,500億円にまで落ちています。一方で、JASRACの著作権料の分配額も書かれていますが、これは年々上がっています。その理由は、演奏権・録音権です。カラオケなど歌唱をビジネスにしている施設では、演奏権が発生します。小さなスペースに対しては免除処置がありましたが、それが徐々に解除されてすべての施設が払わなければならなくなったために、増えていったんですね。音楽とカラオケの関係には面白い関連性があるんです。



(3)ミリオンセラー作品数の推移

 1990年代は、ミリオンセラーがたくさん生まれた年でもありました。1999年には、ミリオンセラーのアルバム作品は30作品。それが昨年度には6作品、シングルは1作品しかありません。これは、音楽の楽しみ方が変わってきたからだと思います。これまでの一般的な日本人は、1人が「これが良い」と言えばみんなそれが良いと言う傾向がありました。しかし今の若い人はそうではありません。自分だけが好きでもいいし、他人の言うことはあまり意識しない「個の文化」が強いんです。音楽においても、売れる枚数は少ないのに種類は多いという傾向があります。たしかに音楽は好みだし、その人の感性で選ぶものです。そういう状況が、だんだん顕著になっています。



3.カラオケのメディアの進化と今後



(1)カラオケとメディアの進化

 最初に登場した8トラックテープカラオケの時代は、バーの棚に8トラックテープがズラリと並んでいて、曲をリクエストするとバーのママが探してガチャンとセットするというスタイルのものでした。1982年にレーザーディスクが生まれますが、レーザーディスクは機械そのものが大きく、最後のほうになると業務用冷蔵庫ぐらいありました。そんな時期に通信カラオケが出てきます。通信カラオケは、残念ながら当社から出たものではありませんが、まさに「イノベーション」という言葉そのもので、業界にとっても大変なことでした。当時、われわれ第一興商はレーザーディスクでトップを走っていたので、通信カラオケが出てきたときは「レーザーディスクのほうが楽曲のクオリティもいいし、映像もきれいだし、通信なんかに負けるわけがない」という判断をして、しばらく様子を見ることになりました。結果的には通信カラオケが支持されたのですが、その理由は次のとおりです。

それまでのレーザーディスクでは、私たちは毎月1枚の新譜を出していました。しかしレーザーディスク1枚の中には28曲しか入りません。しかもそのうちの半分は演歌で、Jポップは十数曲しかない。80年代後半から大ブームになったカラオケには、当時若い人がどんどん来ていたにもかかわらず、です。それにレーザーディスクは、お店に新曲が届くまでに最低でも1ヶ月かかっていたんです。それに対して通信カラオケは、毎月100曲以上を配信することができました。しかも通信は電話回線なので物理的な距離がなく、1日で届けることができます。これが新曲を早く、たくさん歌いたいという当時の若者に支持されて、急激に人気が高まりました。技術革新やインフラの変化は、企業にとっても大きな変化なんですね。そのあたりの動向をどう捉えて商品開発をしていくかということは、非常に大事な問題です。

その後、2002年に当社から出た「デンモク」というリモコンが大ヒットしました。通信になって楽曲の数は増え続け、それを掲載している目次本は電話帳のように厚くなっていたので、電子的に検索してリクエストできる商品は非常に便利だったんです。今はこの「デンモク」がほとんどの店に普及しています。

あとは2003年に登場したブロードバンドカラオケ。初期の通信カラオケはナロー回線が多く、配信できる容量が少ないためコンテンツに限界があったのですが、今は光ケーブルやADSLが多くなりました。通信のハンディは、楽曲配信は速いけれど、容量の多い映像は基本的に配信できなかったことです。ですから、レーザーディスクでは本人映像が多かったのですが、通信になってからは極端に少なくなってしまいました。しかしブロードバンドになり、本人映像やライブ映像もまた配信できるようになりました。

 このようにわれわれは、日々次のメディアに向けての研究を続けています。



(2)通信カラオケの仕組み

 通信カラオケはMIDI音源と呼ばれる、実際の楽器音をサンプリングして作った音源ボードをパソコンで作成した演奏情報を配信して演奏させます。MIDIにはさまざまなフォーマットがありますが、うちの会社の通信カラオケDAMではヤマハのエレクトーンやクラヴィノーヴァなどの音源ボードをカラオケ用にカスタマイズしてチューンアップしています。バックコーラスなどの人の声はMIDIでは出せないので、生音をMPEGで圧縮しています。現在は毎月約1,000曲の新譜を、ホストサーバーからお店に、光ファイバーなどで配信しています。背景映像は基本的に端末に蓄積されていて、その曲調に合わせた映像が出るようになっています。



(3)最新のカラオケでのサービス

最近の当社のカラオケではさまざまなサービスをしています。例えば毎月1,000曲を新しく配信したり、歌唱検定というサービスも行っています。歌唱検定は、当社の機械を使って歌った音声データをセンターで吸い上げ、○級あるいは○段と検定するサービスです。また、自分の歌を録音してCDが作れたり、ランキングバトルではその曲を全国で歌っている人たちの中で自分が何位なのかランキングされます。本人映像を配信するサービスはもちろん、歌スタオーディションではテレビ番組のオーディションへの参加が、その機械を通して可能です。ほかにもジュークボックスや、それらの有料コンテンツを電子マネーで課金できるシステムなど、さまざまなサービスがあります。

このように、カラオケはいろいろなメディアで進化していて、当社でもインターネットでのカラオケサービスやCATVでのサービス、CS、携帯電話、ゲーム機やカーナビでのカラオケサービスも充実しています。



4.カラオケの著作権



(1)カラオケに関する著作権

 カラオケに対する著作権は、レーザーディスクやCDの頃は普通の音楽CDやLDなどのパッケージの著作権と同様に処理されていました。しかしカラオケが通信になり、多くの問題が出てきます。その頃は音楽配信もほとんどなく、まさに新しいメディアで前例がなかったんです。通信カラオケが登場したのは1992年ですが、それに関する権利契約ができたのは1997年、つまり5年間もかかりました。

1971年以前の著作権法が施行される前は、作家やアーティストをレコード会社が抱え込んでいて、当然作った曲の権利も全部レコード会社が持っているという時期がありました。「銀座の恋の物語」などその当時の楽曲は今でもレコード会社が管理をしているものがあります。その場合直接レコード会社と許諾交渉をしなければなりません。しかも許諾料は相対取引なので、規定の料率も無く話し合いによります、もちろん許諾を得られない場合もあります。

また、カラオケボックスやお店では演奏権がかかります。昔はお店の人たちも権利に対する知識が希薄で、なかなか払ってくれないことがJASRACの悩みでもありました。われわれカラオケ業者は設置のために必ずお店に行くので、カラオケ業者とJASRACが協力し、以前はナイト店での支払い率が50%くらいでしたが、現在はほぼ90%、ボックスにおいては95.5%という徴収率を達成しています。



(2)業務用通信カラオケ

 業務用の通信カラオケには、演奏権、複製権、公衆送信権が発生します。通信カラオケでは現在約10万曲の楽曲を提供していますが、複製権においては基本使用料として1曲あたり月額約100円がかかります。10万曲ということは、月1,000万円ですね。公衆送信権に対しての課金は、月ぎめでカラオケソフトの使用料をお店からいただくという形になっていて、機種によって、利用料は月1万円〜2万円くらいで、その利用料の10%または950円のいずれか多い額と決められています。ほかにも、お店には演奏権という権利がかかります。



(3)カラオケの今後の可能性

 カラオケの最近の傾向ですが、ボックスでの利用が増えています。ボックスのサービス向上はもちろん、年配層の方でもカラオケを楽しんでいただくために、居酒屋の延長線にあるようなボックスも増えています。お年寄りの施設でのカラオケ導入も増えています。私どもの会社のエルダーカラオケでは、健康に良い音楽や体操が取り入れられていたり、歌詞が見やすいようにテロップが大きく表示されるようになっています。こういったソフトを開発することで、老人施設などへの導入を促進しています。

われわれの責務として、歌うことをもっと楽しめるコンテンツの充実、歌う場が快適な施設の開発、また学校などの教育機関、老人施設などへのカラオケの活用を、積極的に考えています。



さいごに



カラオケは日本が生んだ文化ですが、音楽を楽しむエンターテインメントとしての文化を確立できているのではないでしょうか。カラオケはこれからもまだまだ進化していくだろうし、われわれも、今後もカラオケがもっと楽しまれるよう努力していきたいと思います。皆さんからもなにか提案があれば、ぜひご意見を頂きたい。そして、もっともっと音楽を楽しむということを忘れないでほしいと思います。


以下、質疑応答

Q.採点機能は、歌が下手なほうが点数が高いのは本当?

A.採点のシステムにはコツがあって、きちんと丁寧に発声すること、ある程度音階に忠実に歌うことで高得点を期待できます。プロは崩して歌うので採点システムからすればいい点は出づらいかもしれないけれど、上手な人が丁寧に歌えば、確実に高い点が取れます。


Q.エルダーカラオケなどのこれからのカラオケビジネスに関して、具体的な営業活動などの方法について聞かせてほしい。

A.最近は全国的にそういう施設が増えているので、提案しやすい体制を整えているところ。バーやスナックが減少している一方で、老人施設が増えているというのは社会的な現象だし、その中でもカラオケが役に立つと思えるのは、カラオケを歌うことで失語症が治ったり、昔の映像を見て懐かしいと感じることで脳機能が活性化されたり。ほかにもいろいろな工夫をして、このマーケットでのカラオケ活用を促す努力をしていきたい。


Q.DAM以外にもいろいろな機械がある中で、DAMが選ばれるような工夫は?

A.当社がもっとも大切にしているのは、オリジナルの楽曲に忠実にかついい音でカラオケを作っていること。そして歌うことをもっと楽しく出来る機能を提供する。たとえば、採点ゲーム。これはやはり盛り上がる。良い音源、良い映像、そして楽しめること。この3つの要素を大切にしています。


Q.カラオケの料金は一人いくらとか、一部屋いくらとかさまざまだが、著作権法的には歌われる曲数によってきちんと決められているのか?

A.昔は1曲いくらという料金体系が多かったと思いますが、今は室料や人数で料金が変わるようです。現在カラオケでの演奏権は歌唱回数は考慮されないで定額です。それを回収したJASRACがどういう基準で分配しているのかというと、カラオケ各社のデータをもとにして大体どの曲がどの程度歌われたかで配分されます。ちなみに当社の機械は全国で21万台、月に2億回以上の歌唱があります。


―参考文献・HP―

カラオケ文化産業論 野口恒編著 PHP研究所発行
カラオケ白書2007 全国カラオケ事業者協会発行
株式会社第一興商HP http://www.dkkaraoke.co.jp
社団法人日本音楽著作権協会HP http://www.jasrac.or.jp
社団法人日本レコード協会HP http://www.riai.or.jp



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