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2013年度研究会報告

「グローバル化とアジアの観光」研究会(2013.6.16)

テーマ マレーシア, Cameron Highlandsにおけるhill stationの形成と蔬菜栽培の展開
報告者 白坂蕃(しらさかしげる) (帝京大学 経済学部 観光経営学科・教授)
報告の要旨

 熱帯や亜熱帯にはhill stationsとよばれる山地集落が形成されている。
 簡潔にヒル=ステイションを定義すれば「宗主国が植民地の山地部に標高にともなう気候条件の利用を目的として建設した都市空間である」。そのアイデアーはヨーロッパの宣教師たちが生みだしたものらしい。
   イギリス領マラヤでは、このようなヒル=ステイションの探索は1880年代に始まった。Cameron Highlands(標高1500m前後)は測量技師William Cameronによって1885年に見いだされた。そこには個人の別荘(バンガロー)が多数でき、その使用人の多くは華僑であった。彼らは母国から種子を取り寄せ、いち早く蔬菜栽培を始めた。
 またBoh Tea(1929年設立)によりチャの栽培も開始され、the Smokehouse Hotelも営業(1937年)を始めた。このために居住者に蔬菜を供給する必要があった。
 さらに1930年に低地へのアクセス道路が開通し、蔬菜生産は急速に増加した。日本軍は、この高原の蔬菜栽培とその移出のポテンシャルをあまり評価しなかった。
 第二次世界大戦後、アジアのヒル=ステイションの多くは国民が定住したり、さらには国内から多くの観光客が訪れて国民化した場合が多い。ヒル=ステイションには独特の景観があり、雰囲気がある。Cameron Highlandsもその例にもれない。
 こんにち、Cameron Highlandsは観光地と蔬菜生産の機能を併せ持っている。とくに蔬菜生産はマレーシア国内で消費される50%を生産しているといわれる。そのために外国人労働者が13,000人も雇用されている。バングラディッシュ(85%)、ネパール(7%)、インド・ヴェトナム・ミャンマー(7%)などがその供給国である。Cameron Highlandsの蔬菜栽培は外国人労働力なしには考えられない状況になっている。

テーマ マレーシア・パハン州FELDA(連邦土地開発公社)ジュンカ地区の外国人労働者問題と農村観光 ――ホームステイ・プログラムの現状と課題
報告者 平戸 幹夫(拓殖大学名誉教授)
報告の要旨

 この数年の間にパハン州のFeldaジュンカ地区の外国人労働者の状況に大きな変化がみられる。パハン州ジュンカ地区にはFelda入植者家族が約1万5千世帯いて油やしやゴムを栽培、生産している。今ではジュンカ地区では多くの入植者たちが外国人労働者を求め雇用している。入植者の約2割が外国人労働者を雇っている。外国人労働者の住居は劣悪であったが近年住居条件は改善されている。住居はバラック家屋で水はけの良くないところが多く屋内もきれいとは言えないもので狭い2人部屋が一般的だった。しかし今回見たFeldaジュンカ13のアスラマは1人部屋で構造も基礎ができていて水はけも良くセパタクロー場も設置されている。労働についての規制は強化されていて休日に有給で働くことは厳しく禁止されている。休暇についても現在は2年の労働に対して3か月の母国への帰国休暇が規定通りに与えられている。外国人労働者の言語、教育の変化も大きく変化した。ジュンカではインドネシア人労働者が大半だが無教育ないし初等教育の者が少なくなかった。10年前には労働者相互のインドネシア語の会話ができない者が少ならずいたが今ではインドネシア人については大半が労働者相互および現地人との会話も成立し仕事上の理解の支障はない。
 入植者の主業・副業の様子も変化している。ジュンカの入植者の中で主業を行っていない者もあるし他方で副業に力を入れている者もある。牛や水牛の飼養、魚の養殖、ローゼル栽培、菓子、衣服の生産販売など多様な副業が広がっている。とくにこの数年ジュンカ地区に目立つのがホームステイの広がりである。ホームステイはFeldaジュンカ25の先覚的な入植者に始まった。ホームステイは最近ではFeldaジュンカ21に広がり、昨年からはFeldaジュンカ13にも拡大した。ホームステイは入植者の中で各種の副業が広がってきた中での新しい動きである。ホームステイの本来の活動とは異なり結婚式の宴会や参加者の宿泊や長期にわたる宿泊や安宿としての利用もある。簡便なホームステイが生まれて村の姿は変化している。

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