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2013年度研究会報告

「グローバル化とアジアの観光」研究会(2013.12.7)

テーマ 災害と関連したダークツーリズム―函館大火と慰霊祭を事例に―
報告者 麻生 将(立命館大学 非常勤講師)
報告の要旨

 本発表は1934(昭和9)年3月21日に北海道函館市で発生した大火(以下、函館大火と呼ぶ)の記憶を継承する実践とダークツーリズムとの関わりについての予備調査報告である。具体的には(1)函館大火という過去の災害の記憶・記録が現代の函館市の観光においてどのように表象されているか分析するとともに、(2)函館大火慰霊祭への参加者に関する出身地、居住地などのデータの分析を通じて慰霊祭を「巡礼」あるいは「慰霊の旅」として位置づけることを試みる、という2つの方面から過去の災害と現代のツーリズムとの関連を考察する可能性と妥当性について検討する。(1)の点については現在発行されている函館観光のポスターやパンフレットをテクストとして用いるとともに、慰霊堂を管理する市職員からの聞き取り調査の結果を参照する。また、(2)については函館市が把握しているデータとともに慰霊堂と関連する二つの仏教系団体(函館仏教会と心和会)の関係者からの聞き取り調査の結果を用いる。
 なお、函館大火、慰霊堂、慰霊祭、心和会について簡潔に説明しておく。函館大火では2000名以上の犠牲者が出るとともに、市街地の大半が焼失した。その後日本各地から寄せられた義捐金によって犠牲者の鎮魂のための慰霊堂が建設され、80年余り経った現在も毎年3月21日に慰霊祭が函館仏教会と函館市によって営まれている。また、慰霊堂での日常的な供養や法要を1980年代終わりに設立された心和会と呼ばれる団体が積極的に行っている。

テーマ 東アジアの歴史記憶とツーリズム
-中国東北部における朝鮮民族独立運動関連史跡の保存をめぐって
報告者 佐々 充昭(立命館大学 文学部教授)
報告の要旨

 植民地期において朝鮮の民族独立運動家の多くは、中国東北部へ渡り抗日独立運動を展開した。その中で最も激しい抗日武装闘争が行われた地域が、かつて「間島」と呼ばれた豆満江以北の中朝国境付近地帯であった。この地域は、現在、延辺朝鮮族自治州となっている。1992年に中韓間の国交が樹立された後、延辺朝鮮族自治州で展開された抗日独立運動跡地の中で、重要なものが韓国系資本によって復元・整備された。
 この地域はまた、白頭山(中国側名称は長白山)登山やユネスコ世界文化遺産にも指定された高句麗遺蹟巡りが楽しめる場所でもある。そのために、同地で復元・整備された抗日独立運動関連史跡は、韓国発の定番観光コースに組み込まれ、今や多くの韓国人が訪れる有名な観光地となっている。中国側当局も、外資導入による同地域の経済発展と韓国との友好関係を維持するために、これら抗日独立運動関連史跡の保存・管理に協力している。また、これらの事業を下支えしているが、中国語と朝鮮語を話すバイリンガルとして現地で暮らす朝鮮族の人々である。
 しかしその一方で、中国では「東北工程」(通称)と呼ばれる学術プロジェクトが推進され、高句麗や渤海の帰属問題をめぐって韓国側と歴史認識摩擦を起こしている。本報告では、中韓間で生じている歴史認識問題が、中国東北部の韓国系独立運動史跡の観光地化に対してどのような影響を及ぼしているのか、地元の朝鮮族コミュニティーの動向を踏まえながら考察を行う。日本・中国・韓国を含めた東アジアにおける歴史認識の在り方が、現代中国観光(ツーリズム)の中でどのように表出しているか分析するのが、本報告の目的である。

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