2006年度研究会報告
第3回(2006.7.21)
テーマ | ウルリッヒ・ベック(本前利秋・中村健吾訳) 『グローバル化の社会学』(国文社、2005年)を読む |
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報告者 | 関口 剛(社会学研究科) |
報告の要旨
ベックは、グローバル化を単に市場主義のグローバル化といった経済面からではなく、メディア、政治、市民社会といった多次元的な領域で進む過程としてとらえた。またそれは、領域的な広がりだけではなく、一領域内でも進む過程とも捉えていた。このように理解したうえで、ベックは新自由主義化として進むグローバリズムをグローバル化と区別し、新自由主義的でない国民国家を越える民主主義的な新たな政治的意思形成の可能性を、ベックはむしろグローバル化の中に積極的に見いだしていた。②ヘルドもまたグローバル化が多次元的な過程であることを確認した上で、リベラルな権利論に依拠しつつ、グローバル化の中でいかに民主主義的な法と制度を作り出していくべきかを問うている。かれにとって重要なのはグローバル・ガバナンスを社会民主主義的な諸価値において再編することである。
篠田武司
テーマ | デビッド・ヘルド(中谷義和・柳原克行訳) 『グローバル社会民主政の展望―経済・政治・法のフロンティア』(日本経済評論社、2005年)を読む |
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報告者 | 岩満 賢次(社会学研究科) |
報告の要旨
本報告では、デビッド・ヘルドの最新著書の書評を行った。ヘルド自身が本書の念頭においているものは、9・11事件におけるテロリストの蛮行、そしてイラク戦争へのアメリカの単独攻撃論にある。その背景には、グローバル化があること認めながらも、決してグローバル化に反対するものではなく、社会民主政をグローバルなレベルまで高めることによる改革案を提示したものである。彼が論じるところによると、たとえ各国が異なった政治レジームをとろうとも、グローバルなレベルにおいて共通して認識されている価値や原則がある。つまり、「コスモポリタンな考え方」を念頭においた新しいグローバルのアジェンダが必要であるということである。彼が注視しているものは、経済、政治、法であり、これらをグローバルなレベルでのガバナンスに社会民主政を取り入れることの具体的な改革案を示した有意義な書であると言える。
岩満 賢次