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2006年度研究会報告

第2回(2006.5.20)

テーマ 『本物』を語る権利は誰にあるのか:北タイトレッキング・ツアーとローカル社会
報告者 石井香 世子(名古屋商科大学外国語学部専任講師)
報告の要旨

本発表の目的は、「エスニック・マイノリティが、エスニック・ツーリズムの生み出すマイノリティ・イメージを、飼いならし/再構築している」という議論に対して、以下の3点を提示することにある。① ツーリズム・イメージを飼いならせるマイノリティは、マイノリティの中でも、近代都市社会に適応している人々である、② 飼いならしたツーリズム・イメージを「自分のもの」として担えるマイノリティと、担えないマイノリティという2つの立場が生まれている、③ 主流社会からはマイノリティと見なされる一方で、マイノリティであることを主張する人々からも排除される「狭間の人々」が生じている。

本発表では、まず、「山地民(chaw khaw)」という官製概念成立と普及の変遷を確認した。つぎに「山地民」をめぐるイメージを、① 政治・外交の文脈からつくられたイメージの側面、② 観光産業の文脈からつくられたイメージの側面の2つから検討した。

石井香世子

テーマ ドミニカのカリブ人と観光現象:「キャピタリスト」と呼ばれた人物をめぐって
報告者 江口 信清(文学部教授)
報告の要旨

本報告の目的は、カリブ海のドミニカ国のカリブ人観光をめぐる植民地政府・独立後の政府、観光客、マスメディア関係者、カリブ人の中の伝統重視派と近代化を選択する人たちの間の関係性の変容を4期に分けて考察することであった。 1492年以降「人食い人種」というラベルを貼られ、それを正当化の理由として虐殺されたカリブ人がドミニカの居留地に生活している。1978年の独立後、政府はカリブ人を国民として同化を促すが、同時に二流市民扱いした。アフロ系住民もカリブ人を未開人視するが、同時にこの人たちの身体的特徴を憧れた。 外部者が作るガイドブックはカリブ人の伝統性を強調したものの、カリブ人はバナナなどの換金作物を栽培する生活を営んでいた。1980年代半ばころから親族や近所の人に工芸品を作らせ、自ら販売して利益を得ることから「キャピタリスト」と伝統を重視する人たちから称される人物が居留地に登場した。「人食い人種」の子孫である自分たちを対象にした観光を逆手にとって、商売をし始めたのである。 しかし、この時期には国全体でバナナの栽培が難しくなり、観光が重視され始める。国も観光立国化を目指すことになる。カリブ人居留地内でキャピタリストをコピーする人たちが増え始め、2004年には、かつての「キャピタリスト」が居留地の過半数の人たちに支持され、首長に選出される。しかし、2005年に、ドミニカがディズニー社の『カリブの海賊』第二・三部の撮影現場として選ばれ、「カリブ人が浜辺で人を食っている」演技を依頼されるが、首長が断った。 ファウストになることを断ったことで、若者らから猛烈に異議申し立てを食らい、現在に至っている。この一連の過程で、観光現象がカリブ人の自立にとってどのような意味を持つのかを、今後考えることが報告者の課題の一つである。発表後の議論は活発に行われた。

江口信清

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