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2006年度研究会報告

第6回(2006.12.16)

テーマ 文化遺産観光と災害 ─ ジャワ島中部地域の調査から ─
報告者 瀬川 真平(大阪学院大学国際学部)
報告の要旨

今夏の調査報告である。報告者は、インドネシアの観光の歴史を国内情勢とともに簡潔に説明し、いかに国内で観光地が社会的に創られてきたのかを①ethnic & local cultures, ②urban heritage, Old Jakarta,③agricultural landscapeの③側面から事例に即して紹介した。そして、創られる観光資源の例としてジャワ島中部に焦点を当て、ジョグジャカルタの観光資源(ボロブドウール遺跡を含む多様な遺跡と震災後の観光への取り組みと世界遺産登録後のボロブドウール史跡公園の観光空間としての特徴を指摘した。史跡公園として整備する以前に公園の300以内の空間で農業をして生活していた人たちは、整備の過程で追い出された。公園設置後、この人たちは外側で観光客相手の露天を営業することは認められた。史跡公園内(「囲い込まれた空間」と報告者は表現)には正式に認められた土産物・軽食などの屋台が設置されているものの、外には非公式な屋台・露店が並んでいる。この人たちをbocor(「漏れ」)と報告者は表現している。この社会的弱者に焦点を当て、観光客、代理店を含む観光関連産業、国家の関係から掘下げて調査を進め、この人たちにとって観光の持つ意味について考えていく。最後に、TouritsとTourist siteの大まかな関係が、図示・説明された。

江口信清

テーマ フィリピン国立公園開発委員会(NPDC)の公園美化プロジェクト:観光開発とのかかわりからの考察
報告者 四本 幸夫(文学部非常勤講師)
報告の要旨

本報告の目的は、フィリピン国立公園開発委員会の公園美化プロジェクトと観光との関係を描写し、問題点を抽出し、考察することである。21世紀になってフィリピンでは、観光を外貨獲得のための重要な産業と位置づけ、2003年にはVisit Philippines 2003が策定された。この一環として、国立公園の開発にも力が入れられた。報告者は、公園の中でも63ヘクタールからなるリサール公園に焦点を当てた。フィリピン国立公園開発委員会は1963年に設立され、国家のアイデンティティと伝統を豊かにすることに貢献するフィリピン人の健康的なレクレーションと社会・文化的教育を目的とした公園を提供することである。マルコ時代にリサール公園の整備が進み、マニラ市民の憩いの場になっていたが、政権の崩壊とともに、予算が削減され、公園は荒れ始め、浮浪者が住むところ隣、犯罪も多発した。ここが、2003年に新委員長が就任したことをきっかけに、公園の再生計画が実践され、浮浪者が追い出され、公園内の清掃を受け持つということを前提に、露店商人の公園内での営業が認められた。委員長は露天商らに組合の設立を進め、現在は175の露店が公園内で営業し、7つの組合ができている。報告者はその仲の数人の生活の事例を提示した。露店商人はこれまでつねに警察に追われていたが、合法的に営業できるようになり、生活に安全と安定がもたらされたという。しかし、組合の実態、個々の露天商の世帯の生活実態の中身、観光客との関係などさらに調査しなければならない課題も、報告後の質疑応答の中で明確にされた。

江口信清

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