2007年度研究会報告
第3回(2007.12.8)[公開セミナー]
テーマ | 『観光開発と文化の保存-チャム族の伝統織物-』 |
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報告者 | タン・ファン(ベトナム国立人文社会科学大学ホーチミン校ベトナム・東南アジア研究センター副所長) |
報告の要旨
今回は公開セミナーという形で研究会が実施され、学生や一般の人の参加もあった。ファン博士が英語で発表し、共同研究者の池本幸生氏が日本語で逐語訳し、また補足説明も入れた。ベトナム政府は少数民族の貧困対策として、観光開発のための伝統織物の振興を図ってきた。 今回の発表の目的は、少数民族、とくにチャム族の女性に焦点を当て、政府の振興策の効果を、所得ではなく、人々の暮らしぶりの良さ(well-being,福祉)の観点から考察することであった。結論としては、①伝統織物は、伝統的技術によって織られ、女性の仕事であり、結婚式のような儀式や日常生活でも用いられている。主に村内や近隣の村との間で交換され、たまに訪れる観光客や研究者が買っていく。それは暇なときの労働を布の形で「貯蓄」しているとも言え、誰か買ってくれるとき、現金化される。②新たに持ち込まれた「伝統」織物は、省政府とNGOが関わっている。このプロジェクトに関わった女性たちは多くの問題を抱えている。貧困は解消されるどころか、余計な負担を背負った女性たちの生活は悪化している。さらに、「伝統織物の保存」という目的にも反していることが調査の結果判明した。 これらのことから、開発に関して「効率主義」だけを強調することの危険性や、女性の生活の質にもっと目をやる必要性を指摘し、単数の変数(所得)だけではなく、人々の暮らしを考慮して、多数の変数を用いて「開発」を考えるべきことの重要性を強調した。
NGOの役割、ケイパビリティ・アプローチについての議論を含め、参加者のフィールドの事例を交え、活発に意見が交換された。
江口信清