EIZOVOICE

自分の「軸」をみつけられた貴重な8ヶ月間!~カナダUBC留学から帰国・鈴木玲奈さん~

2018.05.21

去年の7月、EIZO VOICEに登場し、「秋からカナダに留学します!」と教えてくれた鈴木玲奈さん(2018年度4回生、宋ゼミ)【鈴木さんの前回のインタビュー記事はコチラ】。


出発前
 
 その後その宣言通り2017年8月から今年の4月まで、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(以下「UBC」)に留学。8ヶ月間の滞在を経て、先日帰国されました。


帰国後

 そんな鈴木さんに留学中の様子や、留学して変わったこと、また帰国後の思いや後輩へのメッセージをお伺いしました!

***

 「ジェンダーやメディアリテラシーについて研究活動が活発なカナダで、人々がそのような文化的背景の中でどのように暮らしているのかを知りたい」と留学先にカナダを選んだ鈴木さん。彼女が参加したのは、「立命館・UBCアカデミック・イマージョン・プログラム」という立命館大学とUBCが提携する留学プログラムで派遣先大学の学生と共に授業を受講することを目指すプログラムです。

 プログラムでは、語学スコアによって、個人のレベルに応じた履修が可能となり、一定の語学要件を満たせば、プログラム科目以外のUBC正規選択科目を自らの関心・専門分野に応じてUBCの学生と一緒に受講することができます。また、キャンパス内の学生寮で他国からの留学生を含むUBCの学生との共同生活を送ります。同年代の学生との日々の異文化交流を通じて、幅広い人間関係を構築する事ができます。



-語学面で苦労したことはありましたか?
 まず、最初にぶち当たった壁が「授業で何を言っているかわからない」でした。それはすごいストレスで。もっと渡航前に語学力を上げておけば…なんて後悔しても、行ってしまっているので意味がない。どうすればいいかって結構メンタル的にも追い込まれて辛い時期もありました。

 向こうの授業ではただ聞くだけではなく、聞いた上でそれについての自分の意見をどうプレゼンするかが重要になります。ここでわかったことは自信がなくても、どれだけ意欲をもって自分を発信できるかで力の差がついてくるということです。そこに大きく関わってくるのが「自分の意見を相手に伝えたい」という自分の内側から出てくる意欲だということに気付くとても大きな出来事がありました。
 
 それは、とある留学生同士のパーティーに参加した時のこと。台湾出身だという女子学生に声をかけられました。その時、私は大好きなアニメ「ハイキュー!!」のロゴが入ったパーカーを着ていたのですが、彼女はそれを見て自分も同作のファンであることを教えてくれました。「へぇ、台湾でも『ハイキュー!!』が見れるんだ」「え、海賊版なの?」「日本では『ハイキュー!!』の2.5次元舞台があるんだよ」などなど、大好きなアニメの話となると自分も伝えたいことがどんどん湧いてきて、不思議と会話がうまくいき、すごく盛り上がりました。


意識を大きく変えるきっかけとなったInternational party。
 
 そこからは、なぜか気持ちが吹っ切れて、「まずは自分ができることをやろう」と発想を転換しました。あえて一人の時間を作り、興味があることについて文献を調べたり、関心のあるテーマのイベントに参加したりして、自分とゆっくり向き合っているうちに、授業で話せる話題も増え、徐々に語学力もついてきたように思います。


UBCの音楽科生を中心に構成される吹奏楽バンドに所属。作曲の授業で演奏者ヘルプとして参加した時の写真。

-渡航前に研究したいと言っていた「ジェンダー」や「メディアリテラシー」についての研究は進みましたか?
 はい。カナダは想像していた以上にジェンダーへの意識が高かったです。調べると小学校からジェンダーについて様々な教育が展開されているようです。ですから、自身がLGBTQ(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー、Q=クエスチョニング、またはクイア)であるということを普通にカミングアウトすることも多く、また周囲もそれを自然に受容するという環境にあります。


HOLIという春の訪れを祝うヒンディー教の祭りに参加した時の写真。色とりどりの粉を投げ合い一日中踊りました。

 興味深かったのは「オールジェンダートイレ」の存在です。これはカナダで増えてきていて、男女の区別はなく、ずらっと個室が並んでいるトイレです。このトイレに対しては、カナダの中でも国籍や文化的な背景の違いなどから反応は実に様々でとても差があります。カナダは多様に人種が存在し、「ダイバーシティ」が根付いている代表的な国の一つです。セクシュアリティの多様性についても「受容」できるのは、そういった社会背景が影響していると思います。日本にとって大きな課題は、マジョリティからの無言の圧力が様々な多様性を抑制してしまっていることだと強く実感しました。それはジェンダーの問題だけに限りません。


大学内にあるオールジェンダートイレ。

 もう一つ、向こうに行ってからみつけたテーマがあります。それは先ほどの台湾人女子学生と盛り上がったアニメ「ハイキュー!!」の話からですが、日本のアニメや映画は海賊版として世界中の国々で翻訳され、インターネットで瞬く間に広がり、いろんな国にそのファンがいることをカナダでも実感しました。ただ、やはり海賊版で出回っているということで、日本のコンテンツ事業にとって実質的な利益には繋がらず国外にいるファンも公式に行われるイベントなどの少なさに物足りなさを感じています


時差16時間を乗り越え、日本時間の4限ゼミにスカイプ参加した時の写真。
 
 一方で、おとなり韓国はアイドルグループやドラマを世に出す時、既に海外に進出させることを前提に、SNSを巧みに用いた戦略を練っています。聞くところによると、韓国のコンテンツ産業の国内市場規模は日本の20分の1程度であるにも関わらず、その輸出率は日本を大きく上回っています。また、それによって「韓国ブランド」がアジア圏を中心に根付き、重工業などさらに利益の大きい産業の発展に繋がっています。イギリス人の友人も韓国のBTSというグループが大好きで、ライブ映像をみんなで観ようと呼びかけたら実に多様な国籍のファンが集まりました。そこで「クールジャパン」の至らなさを痛感しました。それがきっかけに自分に何かできないか、と思い立ち、今そこを意識して就職活動を始めています。

-留学に興味のある人、海外に行くことに躊躇している人にメッセージをお願いします。
 迷っているなら絶対に行ってください。映像学部の中では得られない知識や経験が得られます。一方で、意外なところで映像学部で培った知識を活かすこともできます。例えば、先ほど話した「Korean Wave」と呼ばれる韓国の対外戦略は、環太平洋の歴史と経済発展を研究する授業で学んだのですが、これは一度映像学部で取り上げられたことのあるテーマでした。ただ、技術系の仕事をめざしている人にUBCプログラムは向いていないと思います。コンテンツビジネスや映像ツールを使って世の中に発信したいと思っている人は、同じトピックが地球の向こう側で日本とまったく違う視点で捉えられていることを実感し、またその視点を得ることができます。


バンクーバーアジア国際映画祭にボランティアスタッフとして参加した時の写真。
 
 今回の留学は自分にとって、今後の研究や人生に必要な「材料集め」をする期間だったと感じています。自分を窮地に追い込んで初めて自分の至らなさを知ることができたことも大きかったですし、いろんな挫折を乗り越えたことで自分の「軸」をみつけられた貴重な8ヶ月間でした。

 是非、立命館大学の留学制度を調べて、実際に行った人の体験談・感想などを聞いてみてください!私もいつでも相談に乗りますよ。

***
 
 鈴木さんありがとうございました!現在は映像人類学を研究する宋ゼミで、「日本におけるLGBTQの問題」として「性別二項対立的な概念の限界と不可能性」というテーマで現代日本におけるセクシュアリティ・ジェンダーの多様性についての認識の欠乏やその問題点を探る研究をおこなっているそうです。セクシュアルマイノリティをテーマに活躍する5人グループのYouTuberをドキュメンタリーで追いながらの研究だそうで、京都と東京を何往復もしているとか。その成果を2月の立命館映像展で皆さんに観ていただける日を楽しみにしています!鈴木さん、頑張ってくださいね!

一覧へ