EIZOVOICE

あの細田守監督に・・・!-「TYO学生ムービーアワード」審査員特別賞受賞した村井ミチルさんにインタビュー

2019.03.25

「きっかけは充光館のラックに置いてあったチラシでした。」


ふと手に取った1枚のチラシから、彼女は大きな夢を掴むことになりました。

20190325_1

映像学部2回生の村井ミチルさんは、昨年秋、テレビCMの制作などを手掛ける株式会社TYO(ティー・ワイ・オー)が、大学生・専門学校生などを対象にした「TYO学生ムービーアワード」を初開催するというチラシを学部でみつけました。

第1回目となるそのアワードの審査員には、もっとも憧れていたアニメ映画監督細田守氏の名前が書かれていて、彼女の目は釘付けになりました。

募集作品: 「走る」から発想した60秒のショートフィルム

尺が1分ならもしかしたら勝負できるかもしれない。
そして、もしかしたら私の作品を細田監督に見てもらえるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、村井さんは応募を決意しました。

構想を練り始めます。

「私は元々宮崎駿監督作品などジブリアニメが大好きで、自分もあんな風に、『大衆向けだけど、メッセージ性や社会性を感じる映像作品』を作りたいと思ってきました。

テーマは『走る』でしたが、ただ普通に走っている映像ではダメだと感じていました。1分という短い尺からも、ストーリーを追わなくても流れがわかり、また観ている人に何かメッセージが伝わるよう、起承転結を意識して構想しました。」

そんな中で、構想を相談していた両親から「そういえばこんなニュースがあったよ」と教えてもらったのが、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新薬が開発された」という報道。ALSに関して予備知識もほとんどありませんでしたが、調べるうちにふと頭の中で、“走りたい”というキーワードが浮かんできたそうです。

「私が今回、走るというテーマで表現したかったのは、『自分の理想や夢に向かって走り続ける姿』です。動画に登場する女性はALSという病と闘いながら、体を思い通りに動かせず車椅子での生活をしています。でも、いつか自身の体を自由自在に操れるようになると信じて、ひたすら筆を走らせます。純粋に、彼女のただ走りたい、自由でありたい、という衝動を感じてほしいと思い制作しました。」

構想を完成させ、制作スタッフを召集しました。「自分はすごいコミュニケーション苦手な人間なんです」と語る村井さん。口下手な自分が少しでもやりやすい環境で制作できるようにと、気心の知れた仲間を6人集めました。

撮影は予定していたスケジュールが様々な事情でずれ込み、ロケハンも入れてなんと2日間。撮影を終えて、編集に入りましたが、ここでもトラブルが発生。音楽を担当する約束をしていたクリエーターが突然の音信不通となりました。MV風の映像を構想していたため、音楽が入れられないとわかった瞬間、目の前が真っ暗になったと当時を振り返ります。

結局音楽の部分は鉛筆を走らせる効果音などでカバーし、提出期限ギリギリまで作業は続きました。

「もう応募やめようかな、って思いました。正直、出来上がりは自分の中では納得いくものではなかったし、達成感もなかった。でも、仲間がみんな一生懸命一緒にやってくれたので、そんなみんなの為に出さないと申し訳ないな、そう思い直して提出しました。」

高校までは引っ込み思案で自分を出すことも苦手。友達とワイワイすることもなく、アニメ好きということを誰かに話すこともなく、高校3年間を過ごしてきましたが、入学した映像学部では周りが同じような趣味を持つ学生ばかりで、彼女にも変化が起きました。

「アニメが好きで、アニメ制作をしたいとこの学部を選びましたが、1回生でお世話になった先輩たちがみんな実写映像を制作していて、それがすごくかっこよくて、憧れて、ちょっとでも尊敬する先輩たちに近づきたいという思いで実写制作に没頭するようになりました。」

初めて映像作品の最後に自分の名前がエンドロールで出てきた時の達成感は、今まで感じたことのないものだったそうです。

そんな村井さんが、大学に入って心から信頼できる仲間と出会い、自分が監督となって一緒に制作したこの作品『希望に夢を走らせて』は、見事、「第1回TYO学生ムービーアワード」で審査員特別賞を受賞しました!
応募数は603点。その中で受賞したのはこの賞を含めたった5点でした。



2月に東京の恵比寿ガーデンプレイスでおこなわれた受賞式では、事務局から「どうぞ私服で来てください」と言われたことを真に受けて、「本当に防寒重視で普段愛用のジャンパーを着ていってしまった」というお茶目な村井さん。周りがスーツやワンピースなどで身を固めている中、逆に彼女の素朴さが輝きを放っていたように感じました!


受賞式当日は残念ながら細田守監督は欠席となりましたが、会場でビデオメッセージが上映されました。

「僕がいいと思ったのは、村井ミチルさんの作品『希望に夢を走らせて』です。」

自分の名前と作品が細田監督の口から発せられた瞬間、喜びは頂点に達しました。

「なぜ走っているのかがすごく伝わりました。」

ずっとずっと憧れていた雲の上の人から、自分の作品を誉められるという夢のような時間は、彼女にとってきっと一生の誇りになったと思います。

受賞式ではもう一つ大きな獲得がありました。

「受賞者でアニメーション制作に奮闘する同じ京都の学生とも仲良くなりました。今度一緒にアニメーション作品を制作しようという話にもなって、実写制作の経験を経て、やっぱりアニメ制作にも挑戦したいと思っていたので、とても貴重な出会いになりました!」

満面の笑みで話す村井さんからは、引っ込み思案だった高校生時代などまったく想像もつかないくらいの前向きで周囲を巻き込むパワーをひしひしと感じました。

皆さんもどこにチャンスがあるかわかりません。
是非ともスマホだけでなく、いろんなところにアンテナを張って、チャレンジしてみてください!

村井さん、本当におめでとうございました!!

一覧へ