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キーワードから見る生命科学

生命科学は総合科学で幅広い科学の領域を含み、それぞれの分野が密接に関連しています。
キーワードから見る生命科学では、キーワードを起点に生命科学部での学びの一例を紹介します。

関連する講義・実験は広報活動を目的とした一例です。また、年度により情報が変更します。
実際の学修にあたって講義・実験の詳細内容は、オンラインシラバスをご確認下さい。

新物質創成

この世界はさまざまな物質を基礎としていますが、原子の種類やその組み合わせ、並び方によって、物質の特徴は劇的に変えることができます。また原子は分子を構成することから、分子の並び方によっても物質の性質は変化します。生命科学部では、物質を設計し、最新の技術を駆使して合成を検討することで、これまでに誰も見たことのない機能を示す新しい物質の創成に挑戦しています。新物質を開拓することによって、医薬品や電子・光材料、エネルギー材料などの開発への展開が可能になります。

関連する講義・実験

ナノテクノロジー

「ナノ(n)」は10-9を意味する接頭辞です。すなわち、ナノテクノロジーとは、10-9m(=1nm)の領域で物質の構造を制御する技術です。1nmというのはどの程度の大きさでしょうか?炭素原子同士の結合(C–C結合)の長さはおよそ0.15nmなので、1nmは小さな分子一個分くらいの大きさです。つまり、分子と同程度のスケールで物質を創製し、構造を制御する技術がナノテクノロジーです。
物質をナノメーターのサイズまで小さくすると、それよりサイズが大きなときとは全く異なる性質を示すことがあります。小さな物質が示す特殊な性質を活用すると、これまでにない新しい機能や高い性能をもつ材料を生み出すことができます。しかしながら、材料を大きな塊から砕いたり、削り出したりすることで、分子スケールの物質を創製し、構造を制御することはとても困難です。化学の知識を活用すると、分子が自ら判断し、分子同士が協力し合いながら、精密に制御されたナノメーターサイズの構造体を分子自身に自発的に作らせることが可能となります。生命科学部、応用化学科ではこのような技術の開発に取り組んでいます。

エネルギー・次世代電池

生命活動でエネルギーを利用することは必須であり、特に現代社会では、これを作り、貯めて、あらゆる場所で使用することが、ごく自然に行われています。エネルギーを貯めて、移動することが可能な二次電池により、スマートフォン、ノートパソコン等の電子デバイスは急速に普及し、この用途がますます拡大しています。今後は、再生可能エネルギーの有効利用や、二酸化炭素の排出を削減可能な電気自動車での利用できる次世代電池の開発が求められています。

光機能・人工光合成

光機能とは、光のエネルギーを活用して化学反応や電気エネルギーへの変換、着色変化や発光などを生じる特性のことで、光触媒や太陽電池、フォトクロミック(光で物質の色が可逆的に変化する)材料などが挙げられます。人工光合成とは、植物が光エネルギーを化学エネルギーに変換する際に行う光合成を別の材料を用いて実現する技術をいいます。

生命化学

生命活動は複雑な化学反応から成り立っており、タンパク質・核酸・生体膜などの多くの生体分子が関わっています。例えば、タンパク質はアミノ酸から合成される高分子ですが、その構造はどのように決められており、どのように機能するのでしょうか。生体内反応を理解するためには、これらの生体分子の構造・物性・機能などを詳しく調べる必要があります。生命科学部では、物理化学・生化学・無機化学などの「化学」の視点から生体分子に関する研究を進めています。

関連する講義・実験

微生物

私たちにとってとても身近な存在なのに、肉眼で見えないからあまり気づかれない微生物。そんな微生物の中には、病気を引き起こす厄介者もいますが、腸内環境を整えて免疫力を高めてくれる頼もしい味方や、発酵食品や発酵飲料を作るときに欠かせないコウジ菌や酵母など役立つものも沢山います。微生物は、地球上の生命の起源や進化の謎を解く鍵を握っているとも言われています。小さな微生物の細胞の中には、大きな可能性とロマンが潜んでいるのです。

環境浄化

高度経済成長期の日本は、「水俣病」や「四日市ぜんそく」など多くの公害が発生し、1971年に環境庁(現環境省)が設置され多くの法律が整備されました。その後、ゴミ焼却場から出るダイオキシンなど土壌の環境汚染も深刻化し、土壌汚染防止法が制定されました。一方、世界に目を向けると中国のPM2.5など、まだまだ深刻な環境汚染が進行しています。これらの問題を解決するため、微生物や生物機能を用いた環境浄化技術また新しい浄化装置の研究・開発が進められています。

関連する講義・実験

生物資源

生物資源は文字通り生物的な資源のことであり、すべての生き物を資源と言う切り口で捉えた言葉です。身近な例ですと、私達が日々糧にしている魚介類や海藻は水産資源、野菜や穀類は植物資源、そして牛・豚や鶏は動物資源に分類されます。また、エネルギー源としての未利用森林資源や食料廃棄物も人類が目指す持続可能な発展には重要です。生物資源の効率的生産法、活用法等を研究する学問は生物資源学と呼ばれますが、生物学、化学および物理学を基盤とし、生化学、分子生物学、微生物学など多くの基礎学問の上に成り立っています。

関連する講義・実験

バイオエネルギー

植物などの生物資源を利用して生産されるバイオエネルギーは、再生可能エネルギーであり、カーボンニュートラルであることから、環境にやさしいエネルギーとして注目を集めています。石油、石炭、天然ガスに次ぐエネルギー資源になっています。しかし、生産コストが高い、トウモロコシなど食糧が原料になっている、など問題を抱えています。各国で、非食糧資源を原料とする低コストなエネルギー生産法の開発など、研究開発が進められています。

関連する講義・実験

バイオテクノロジー

「バイオテクノロジー」という用語を三省堂の大辞林で調べると、「生物を工学的見地から研究し、応用する技術。近年は特に、遺伝子組み換え・細胞融合などの技術を利用して品種改良を行い、医薬品・食糧などの生産や環境の浄化などに応用する技術をさす。」とあります。近年のバイオテクノロジーの進展は目覚ましく、人類はあらゆる生物の遺伝子を自在に改変する技術を手にしつつあります。

関連する講義・実験

AI・創薬

AIとは人工知能、簡単に言えばコンピュータのプログラムの一種です。近年、AIは、将棋や囲碁でトップ棋士を打ち負かし、一流私大の入試も突破できるようになったりと、脚光を浴びています。今後、自動運転を始め、医療診断や法律・税務といった多くの分野で活用が期待され、その一つが創薬です。薬は、効果的かつ安全に生体分子の機能を制御する物質(具体的には分子)ですが、ここでもAIとビッグデータを活用し、薬の設計を効率化する研究が進んでおり、本学部でも挑戦しています。

人工生命

生命活動に関する主要な要素が解明されたのであれば、解明された要素を組み上げれば生命が作れるはずです。このような考え方から、人工的に生命を作る試みが始まっています。人工生命の研究には、実際に人工的に作られた細胞膜の中にDNAやタンパク質を入れて生化学的な細胞を作る試みや、コンピュータのソフトウェアとして、細胞や臓器のモデルを作る試みなどがあります。

ビッグデータ

ビッグデータは、典型的なデータベースソフトウェアが把握、蓄積、運用、分析できる能力を超えたサイズのデータを指します。生命科学においては、現在、ゲノム情報を始め生命にかかわる情報が爆発的に増えています。

植物品種改良

我々が日々食べている野菜やお米は、よりおいしく、より栽培に適した品種を作る目的で、栽培品種を掛け合わせることによって生み出されてきました。異なる品種を掛け合わせることによって、ある品種が本来持っていなかった遺伝子を他の品種から得ることができ、その結果として植物の形質が変化します。

関連する講義・実験

ゲノム

ゲノムとは、ある生物の遺伝情報すべて、つまり生命活動を営むのに必要な一通りの遺伝情報であり、親から子に伝えられる生命の設計図ともいわれます。遺伝子geneと総体を表すomeを合わせた造語です。

iPS細胞

iPS細胞は、英語ではinduced pluripotent stem cellと表記され、人工多能性幹細胞とも呼ばれています。大人の体の中にある細胞に、初期化4因子とよばれる特定の遺伝子をはたらかせることで、様々な細胞に分化する能力をもつ(=pluripotent)幹細胞(=stem cell)を作ることが出来ることを京都大学の山中伸弥教授が発見し、以後、再生医療、創薬、難病解明など先進医療の有用なツールとして期待されています。

神経科学

我々の心や魂はどこにあるのか?小学生のとき大好きだった先生の顔を今でも覚えているのは何故か?デートでうきうきするときや、試験前に憂鬱になるとき、身体の中で何が起きているのか?一方で我々の身体は脳も含めて物質、細胞で成り立っています。抗不安薬を飲むとスッと不安が消えますし、抗うつ薬でうつ病が治るなど、化学物質で気分が変わるって、考えてみるとすごいことです。神経科学は、物質的実体を持つ神経細胞と、記憶や気分などの精神的現象との関係に迫ります。

関連する講義・実験

生活習慣病

世の中が豊かになった今日、過食や交通の発達による運動不足などにより生じる生活習慣病が世界中で問題となっています。生活習慣病には糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症)などがあり、これらは肥満と深く関係しており、お互い悪化する作用があります。これらの生活習慣病は完治することは難しく、一生付き合っていかなければならない病気であり、食・運動習慣を見直すことで病気の改善や悪化の防止、あるいは予防することができます。

関連する講義・実験

予防健康医学

医学・医療の目的は、単に生存期間を延長することではなく、生きている間のQOL(生活の質)を高く保つことにあります。そのためには、家族歴からみてその人が罹りやすい病気についての検診を優先的に受けたり、それらの病気にかかりにくい生活習慣を普段から身につけたりすることが大事です。つまり、病気にかかってから対処するのではなく、なるべく長く健康な状態で寿命を全うできるにはどうすればよいかを考える学問が予防健康医学です。

遺伝子治療

わたしたちの体を作るためには何が必要でしょうか?いちばん大事なのは設計図となる「遺伝子」です。遺伝子はDNAからできており、わたしたちの体のすべての細胞の中にDNAが入っています。遺伝子をもとにタンパク質が作られて、それがわたしたちの細胞と体を作るのです。もし遺伝子のはたらきに何か異常があってタンパク質が作られなかったら、病気になってしまいます。遺伝子の異常を直して、正しくタンパク質を作る方法が遺伝子治療と呼ばれる治療法です。

関連する講義・実験

有機化学I~IV

生命体の産物である天然物の化学から出発した有機化学は生命科学の基礎となる学問分野であり、有機化学I~IV では2年間をかけて有機化合物の性質・構造・反応を理解することを目標にしています。有機化合物は炭素骨格を基本にし、その他の原子(水素や窒素、酸素など)との並び方を変えることによって、その特徴が大きく変わることを習得します。有機化合物に関する内容を学ぶことで、我々の生活を支える医薬品や香料、化粧品、繊維材料だけでなく、半導体や発光ダイオードなどをつくる機能性材料の開発が可能となります。

有機・高分子材料化学実験、無機材料化学実験

この二つの科目では、座学で学んだ有機材料、高分子材料や無機材料を実際に合成・創製し、その物質の構造を観察し、物性測定を行い、材料としての機能を評価することで、応用化学の一分野である「材料化学」に関する理解を深めていきます。
例えば、チューインガムの基材となる物質や紙おむつなどに利用されている高吸水性材料などを、原料となる分子から合成し、機能を調べます。また、機能材料の薄膜作製技術なども身につけます。
この二科目で習得する分子合成、材料創製、構造観察、物性測定、機能評価などの技術は、卒業研究や大学院での研究を行うために必要不可欠であるばかりでなく、将来、技術職や研究・開発職として社会で活躍するために求められるスキルです。

エネルギー変換化学

電気エネルギーと化学エネルギーを相互に変換可能なデバイスである二次電池を中心に、それらがどのようなメカニズムでエネルギーを変換し、実際に利用できるかについて、無機化学、有機化学、物理化学、分析化学で学んだ知識をもとに体系化します。そのうえで、二次電池の性能向上には、何が必要か、現在は何が求められているかを学習します。さらに、エネルギー変換の重要なデバイスである太陽電池や原子力発電についても取り上げ、その利点や問題点について解説します。

分子分光学

分子分光学とは、物質(主に分子)に光を当てた際の応答を解析することにより、目で見ることのできない分子の構造や特性を解析する学問です。光を当てるだけで物質を検査できる、つまり非破壊で検査できる手法であるため、果物の糖度測定や薬物の構造解析、更には電池の特性評価まで、様々な産業で実際に用いられています。物質に光を当てたときの応答は光機能を理解する上で極めて重要であり、この学問を通じて光機能性特性の基本的な概念について説明します。

生物物理化学

生命現象は原子・分子レベルでみると、タンパク質・核酸・生体膜などの生体分子が繰り広げる物理化学現象です。本講義では、生体分子およびその集合体の構造や基本的性質を物理化学の視点から学ぶことができます。例えば、タンパク質はアミノ酸が連結した鎖状分子ですが、きちんと機能するためには決められた立体構造に変化する(タンパク質の折り畳み反応)必要があります。なぜ固有の構造に折り畳まれるのかやできあがったタンパク質の物性、さらに核酸・生体膜の構造や性質などを物理化学的原理から理解し、またそれらを解析するための実験法について学習します。

微生物学

微生物学に関する変遷や歴史を概説し、微生物の分類や細胞構造(原核細胞と真核細胞)、また増殖や物質代謝に関する微生物共通の項目について解説します。その後、微生物の一般的な取り扱い方法や分離・同定方法に触れるとともに、病原微生物の特性とそれらによる感染症の感染・発症機序並びに病態生理を学び、その対処方法の科学的基盤を知ります。また微生物の応用的側面の観点から、最近のバイオテクノロジーにおける微生物利用・応用に触れます。

環境微生物学

環境中に生息する微生物は、地球上の物質循環を担っている主役です。これら環境微生物は、有機物の分解・代謝を行うだけでなく、植物の成長や動物の生活にも深く関わっています。環境微生物学は、これらの微生物について深く学んでいく講義です。具体的には、環境微生物の分布や特徴を知り、様々な環境中に棲む微生物の姿を見ていきます。そして、これらの微生物を応用した環境浄化(バイオレメディエーション等)についても詳しく学んでいきます。

酵素学

生命活動は、多くの化学反応が効率よく、かつ、秩序をもって制御されることにより営まれています。一般に“代謝”と呼ばれるこの生体内の化学反応を進め、制御しているのが酵素と呼ばれる生体触媒です。酵素学では、タンパク質である酵素の構造的特徴、酵素の触媒作用に必須な要素としてのビタミンの役割、種々の酵素反応の特徴および酵素反応の触媒能力の解析法に関する基礎的事項を解説します。様々な生物資源を利用するうえで酵素は重要な役割を担っています。この講義では、酵素を利用するための基礎を身につけます。また、「酵素ドリンク」や「酵素ダイエット」と言う様な意味不明な言葉に惑わされないように、この講義を通して酵素に関する正しい理解を身に付けて頂きたいと思います。

基礎環境学

環境学は、地球環境をトータルに捉える学際的な学問分野です。環境学を学ぶには様々な分野を学ぶ必要があります。この講義では、エネルギー・資源・食糧問題に関わる地球環境問題を理解するための生命科学に関わる基礎知識を習得し、解決すべき環境問題を認識していきます。バイオエネルギー生産の仕組みや問題点を認識できるようにします。生物資源や倫理的問題が生じにくいバイオテクノロジーを活用して経済活動を行うバイオエコノミーの概念も紹介します。生命科学が挑むべき未解決環境問題を探り、環境問題に挑む世界の潮流を紹介します。

遺伝子工学

遺伝子工学とは、DNAレベルで遺伝子操作する技術の総称です。分子生物学の発展に伴って、遺伝子工学が進歩してきました。遺伝子工学は、物質生産、品種改良、および遺伝子治療など、幅広い分野で利用されています。本講義では、遺伝子工学で用いられる基本的な手法について概説します。「DNAの切断、連結、および増幅を行うための方法」、「DNA、RNAおよびタンパク質を分離して検出するための方法」、「組換えタンパク質の作製法」、および「遺伝子組換え植物の作製法」などを解説します。

細胞システムシミュレーション実験

この実験科目では、シミュレーション技術を習得し、コンピュータを用いた分子モデリングと創薬の基礎、さらにニューラルネットワークについて学びます。高度な分子モデリングのソフトウェアを使い、薬のような低分子だけでなく、タンパク質やDNAなどの生体分子を原子レベルで表示し、その複雑な構造を、わかり易く理解し、さらに分子の動きや安定性、分子間相互作用など創薬の基礎になる複雑な計算を実習します。またニューラルネットワークは、脳の情報処理を真似した仕組みをコンピュータ上に作り上げたもので、最近のAIにも使われている深層学習を可能にします。

生体機能シミュレーション

生体を形作る基本要素である細胞と、細胞の集合である組織に焦点を当て、細胞が持つ恒常性維持機構や、組織や臓器がどのような仕組みでその機能が実現されているかを、詳細なメカニズムから説明します。その上で、現在までに解明されている様々な要素を、簡単な数式で表現することで、数式の組み合わせを使うと細胞の機能がうまく再現できることを学習します。

バイオアルゴリズム

近年、大腸菌のような下等生物からヒトのような高等生物まで様々な生物種のゲノム配列が決定されており、今後も配列情報は増えつづけていきます。これらの膨大な量のデータから何らかの有益な情報を引き出すためには生化学的な情報を効率良く処理するための高度なアルゴリズムが必要です。本講義では、特に基本的かつ重要なアラインメント・系統樹作成・クラスタリングなどのアルゴリズムについて理論的に解説します。

ゲノム科学

ヒトゲノムが解読されて以降、さまざまな植物種についてもゲノム解読が進められてきました。このようなゲノム情報は、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析といったポストゲノム解析だけにとどまらず、ゲノム編集といった最先端の解析技術など多岐にわたって利用されています。本講義では、ゲノム科学を学ぶ上で基本となる分子生物学の基礎知識から、ゲノム配列の解読に必要な技術、ゲノム科学に関わる最先端の解析技術やトピックスについて学びます。

バイオインフォマティクス

生命科学におけるバイオインフォマティクスの必要性はますます強まってきています。本講義を通じて、バイオンフォマティクスとは、どのような分野なのか、何の役に立つのか、どのように発展していくのかなど、初心者にわかりやすいように、配列解析アライメント、ゲノム塩基配列解析、分子系統樹、データベース等、基礎から最近の知見までを紹介します。

発生ゲノム医科学

生命は1個の細胞つまり受精卵から始まります。これまでの研究により、体の臓器や組織を形造るために必要な分子が同定されてきました。そして、それらの役割が解明され、発生プログラムの謎が解き明かされてきています。本講義では、このような発生のしくみを解説します。また、今世紀に入ると、ヒトゲノム計画により遺伝子の塩基配列が完全に解読され、病気の原因となる変異について多くの情報が得られました。本講義では、遺伝学の歴史から、さらにマイクロアレイや次世代シーケンサーといった21世紀の技術革新により発展した先進医療についても解説します。

薬理学

神経科学で取扱う神経系でもそうですが、ヒトを含む生体や細胞は、常に外界との相互作用を伴う生命活動を行っています。薬物などの化学物質のみならず、神経回路で情報伝達を行う神経伝達物質や、ホルモンなどの生理活性物質、さらには温度や振動や光などの物理的刺激に対して、生体および細胞は受容体を介してシグナルを受け取り、応答します。薬理学は化学物質との相互作用を通じて生体を記述する学問です。薬物の動態と作用メカニズムについての理論を学んだ上で、さまざまな薬物についての各論を人体生理と関連させながら理解します。

人体の機能と病態3

「人体の機能と病態1~5」は、本格的な医学への導入となる専門科目です。「人体の構造と機能1, 2」で、私たちヒトの体内で起きている生理現象や臓器や組織の構造などの生理学や解剖学を学び、そこで習得した学問を基礎として、さまざまな病気の病態や診断基準、治療について学びます。「人体の機能と病態3」では、生活習慣病の中で代表的なものである糖尿病や脂質異常症、肥満などについて、どのような病気であるのか、どのようなことが原因で発症するのか、どんな治療法があるのか、を学び、身近な病気に対する知識を深めます。

医療システム論

予防から病気の治療、終末期のケアまで、本当に必要とする人が医療を公平に受けられるようにするための仕組み(システム)を考える機会を与える講義です。また、医療に使われる資源は地球上に無限にあるわけではないので、医療を効率的に供給するシステムも構築しなければなりません。つまり、この講義では、効率的かつ公平な医療が可能となるシステムを考えるのに必要な知識を提供したり議論をしたりします。世界中の国々の様々な政策的工夫を学んだり、それらを参考にしたりしながら日本に適した医療システムはどのようなものかも一緒に考えます。

分子生物学

遺伝子治療をしようと思っても、どのようにして遺伝子(DNA)からタンパク質ができるのかを知らなければ、何もできません。分子生物学では、DNAからRNAができてタンパク質となるプロセスを理解します。これを「遺伝子の発現」と呼びます。遺伝子発現がうまく調節されればさまざまな生命現象が起こります。遺伝子の集まりをゲノムと呼び、ゲノムには多くの情報が入っているとともに、異常もあります。また目的の遺伝子を発現させるためには、異なったDNAをつなぎ合わせる組換えDNA技術も必要です。これらのことをくわしく理解するのが分子生物学です。

有機化学実験

有機化学は、分子に対して化学反応を行うことによって、単純な構造から機能を持った複雑な構造をつくりあげることができる学問分野であり、有機合成によって高い付加価値を持つ有機化合物への変換が実現できます。有機化学実験では、講義で学んだ有機化学の基礎的な内容を基盤とし、実際に合成反応を経験し、有機化合物を合成する技術を身につけます。さらに、合成した有機化合物が、想定どおりのものであるかを、さまざまな分光法(物質に光をあてて特有の応答を見ることができます)によって明らかにしていきます。

有機材料化学、無機材料化学

この二つの科目では、有機化合物や無機化合物を基盤とした材料の合成・創製法、構造とその制御法、物性と機能などについて学習します。また、実社会で利用されている電子材料(誘電体、強誘電体、半導体、電気伝導体、イオン伝導体)、磁性材料、光機能材料、構造材料、力学機能料材料などを例に挙げながら、材料の機能・性能と構造の相関などについての理解を深めていきます。有機・無機分子複合材料、元素ブロック高分子材料などの超最先端材料についても解説し、将来、新材料開発に従事するための基礎から最先端の知識を習得します。

無機材料化学実験

二次電池では、無機化合物中にイオンを貯蔵することによって、エネルギーを蓄えます。そのため、無機化合物の性質を把握して、それを使いこなすことが重要となります。本実験では、無機化合物を使いこなすための、合成実験や分析実験を行い、さらにエネルギー変換の基礎となる電流―電圧の測定を通した実験を行います。さらに私立大学唯一学内で保有する放射光施設SRセンターを用いて、無機化合物中の原子レベル、電子レベルの構造情報を取得する実習を行い、最先端の研究を体感します。

エネルギー創成化学

この講義では、特に「光」に重点を置き、光合成、太陽電池、光触媒、光機能性材料などの光エネルギー変換材料について説明します。3名の教員がそれぞれの専門分野を基に、無機化学系光変換材料、有機化学系光変換材料、自然界における光変換材料についてそれぞれ講義を行い、最後に現代社会におけるエネルギー問題とその展望について説明します。

生物無機化学

私たちの体の中で起こっている様々な化学反応には、多くの金属イオンが関与しています。本講義では、生命現象における金属イオンの役割を、化学の視点から学びます。多くのタンパク質は金属を含んでおり、例えば、酸素分子を捕捉し運搬するヘモグロビン、細胞内で生成した有毒な過酸化水素を分解するカタラーゼは、鉄ポルフィリン錯体と呼ばれる鉄イオンに有機分子が結合した化合物を有しています。これらの反応に金属イオンがどのように関与しているのかなど、金属イオンが生体内で担う役割を理解する上で必要な平衡論、速度論などの基本的概念や、それらを解析するための実験手法の原理について学習します。

応用微生物学

微生物を知らなかった遥か古から、人類は経験的に微生物を利用してきました。微生物の存在が明らかとなり、その実体が科学的に解明されるにつれて、微生物の機能を利用する工業が発展し、酒類、調味料などの発酵食品、医薬品や工業原料等のさまざまな化合物の発酵生産に加え、エネルギー生産、環境保全などの分野にまで、その利用範囲は拡大しています。本講義では各種の微生物利用技術を解説します。

反応工学

生物が作る酵素反応、生物自体の反応、また化学反応を応用し、工学的な物質生産やその仕組みについて学んでいく講義です。この講義の中には環境浄化の項目があり、産業界から排出されるさまざまな廃棄物や廃水の処理・浄化技術、さらにはそれらの有効利用技術について詳しく学びます。具体的には、水処理装置である活性汚泥法、また産業廃棄物の利用や付加価値化に関するものです。これらの技術の歴史的背景や反応メカニズム、また構築された技術が世の中でどのように応用されているかを学んでいきます。

酵素工学

酵素工学は、無機触媒や低分子有機触媒では見られない高分子生体触媒としての酵素の特徴を生かして、食品、医療、環境改善等の諸分野へ酵素を利用するための技術です。特に、食品と環境分野においては、様々な生物資源の有効活用と言う点で、酵素は様々に利用されており、まさに、生物資源と酵素工学は密接な関係にあると言えます。酵素工学の講義では、酵素の調製法および分析法などの取り扱いに関する基礎的事項を解説した後、食品、医療および環境の各分野において酵素がどのように利用されているかについて、具体的に見ていくことになります。

生化学

生物は細胞を構成単位として構成されています。その細胞は、糖質、タンパク質、脂質、核酸などあらゆる分子から構成されています。それらの分子の構造や性質についての知識を習得します。それらの分子の細胞内での反応(代謝と言います)により、生物は生命を維持しています。その代謝についての知識も習得します。生命を理解する出発点となり、「農学」「医学」「微生物学」「環境学」などあらゆる生命科学分野の基礎になる学問分野です。高校の化学基礎・化学と社会で実践されている分野をつなぐ学問分野です。

植物細胞工学

遺伝子組換え作物は、世界中で毛嫌いされています。なぜでしょうか?そもそも遺伝子組換えとは何でしょうか?本講義では、植物を題材として、遺伝子組換えと非遺伝子組換えの境界について考えます。「外来小分子RNAの発現」、「組換えウイルスを用いた開花促進」、「接ぎ木によるエピゲノム編集」、および「Cas9を用いたゲノム編集とヌル分離個体」について解説します。これらの手法を用いて品種改良された植物は、遺伝子組換え植物でしょうか?科学的な根拠を元に、みなさん自身で考えてもらいたいと思います。

分子シミュレーション実験

遺伝情報は、アミノ酸配列情報に翻訳され、特有の構造と機能をもつタンパク質として働くことで、生命現象を支配しています。このとき異なる種の同じタンパク質のアミノ酸配列の違いから、進化に関して知ることもできます。また配列がわかっていて構造は未知のタンパク質でも、配列の類似性があり、構造がわかっているタンパク質がある場合、構造の予測を行うことができ、創薬において重要な役割を果たします。こうしたアミノ酸配列の解析、タンパク質立体構造の予測、構造と機能予測に関する実習を通して、生命情報学の基礎技術の習得を行います。

システムバイオロジー

単細胞生物は、細胞膜で囲まれた内部に、細胞質、染色体、核、ミトコンドリアなど、数多くの部品を持っており、これらの部品が様々な形で相互に連携を行うことで細胞としての機能を発揮しています。この講義では、遺伝子の発現から、タンパク質の機能まで、細胞を機能させる仕組みを、様々な部品の相互作用として理解していきます。

ゲノムシミュレーション実験

バイオ関連のデータベースを紹介し、簡単な解析をインターネットを用いて行ないます。さらに大規模データを取り扱う解析アルゴリズムの実装までを、C言語にてプログラミングします。バイオインフォマティックスの代表的アルゴリズムを理解し、C言語を用いてプログラムを作成できることを目標としています。

生物学基礎実験

今日の生物学の知識は様々な実験によって発見、検証されてきました。生物や生体試料は多様かつ柔軟で、時間や環境とともに容易に変化します。そのため、物理や化学の実験と比較して、生物学では実験条件や反復回数が制限されることが多く、再現良く実験結果を得るには相応の知識背景と技術の熟練が不可欠になります。本実習では、生物学的な研究において日常的に行われている実験を通して、今日の生物学実験を安全に遂行するための基礎的な知識と、定量実験、微生物の培養実験、生物試料の顕微鏡観察といった技術を修得します。

ゲノムシミュレーション実験

バイオ関連のデータベースを紹介し、簡単な解析をインターネットを用いて行ないます。さらに大規模データを取り扱う解析アルゴリズムの実装までを、C言語にてプログラミングします。バイオインフォマティックスの代表的アルゴリズムを理解し、C言語を用いてプログラムを作成できることを目標としています。

幹細胞・再生医学

分子生物学・遺伝学・発生学などが20世紀に急速な進歩を遂げたことで、幹細胞やこれを用いた再生医療に関する分野が新たな学問として日進月歩の勢いで発展しています。20世紀末にはヒト胚性幹(ES)細胞が樹立され、核移植によるリプログラミング(初期化)の技術を用いてクローン羊ドリーも誕生しました。21世紀に入ると、遺伝子導入によるリプログラミングが可能となり、体細胞から、ES細胞と同様の万能性を持つ人工多能性幹(iPS)細胞が樹立されました。本講義では、幹細胞生物学や再生医学の歴史的背景、基本原理、基礎研究から臨床応用まで最新のトピックスをわかりやすく解説します。

薬理学実験

薬理学の講義を通じて学習した薬物の作用機序などの知識について、みずから実験を行うことを通じて体得します。細胞、臓器、動物、ヒト(被験者)を対象にして薬物の作用を評価します。投与した薬物の体内での濃度と作用の強さとの定量的な関係をシミュレーション実験で体得し、細胞を用いた実験で確かめる。動物に投与したとき、それらをどのように評価するのか。例えば循環器であれば、血圧や脈拍数といった明確な指標がありますが、鎮痛薬の場合は痛みを定量的に測るためにはどうしたら良いのか、などを考え、試します。薬効を正しく評価するための二重盲検法も実際にヒトで行います。

生理学実験

生理学実験では、みずからが実験対象者となり、ヒト対象の調査や研究を行います。まず、健康とはどのような状態をいうか、調査票を用いて定量化することにより健康度の評価を行います。生理機能指標として、血圧、心拍数、心電図の測定、また血糖値の測定を行うことにより、自律神経機能や循環器機能、糖代謝について体験により理解します。また、このような測定により把握される生理現象が、病気の際に用いられる治療薬によりどのように変化するのかを実際に実験動物を使用して確認することにより、病態と治療のメカニズムについて理解を深めます。

医療社会論

医療を受けることは個人的な問題でもありますが、同時に社会的な問題でもあります。ある人やある集団だけが優れた医療を無理に受ければ、どこかでまともな医療を受けられずに泣く人々が出るかもしれません。医療や福祉、介護に関わる様々な関係者(ステークホルダー)を毎回、日本全国からゲストスピーカーとして招聘し、様々な視点から医療と社会との関係を論じていただきます。具体的には、学者、医師、助産師、薬剤師、患者、医療保険の専門家、メディア、施設の経営者、弁護士などを招聘しています。講義の後半では、学生と質疑応答を通じて議論を深めてもらいます。

分子生物学実験

分子生物学の内容を、みなさんが実際にやってみて理解します。この実習では、プラスミドと呼ばれる輪になったDNAを使います。この環状DNAが大腸菌に入ると、抗生物質に対して耐性となり、菌が死ななくなります。そこで、特別な酵素(制限酵素とDNA連結酵素)を使って、特定のDNAをプラスミドDNAにつなげる組換え実験をしてみます。そして、プラスミドを大腸菌の中に入れて、菌の性質を変えてみます。大腸菌を増やしてプラスミドDNAを取り、DNAの塩基配列も調べます。口の中の粘膜を取って、PCR法をつかってDNAを増やす実験もしてみます。

高分子化学

有機材料の基盤となる高分子化合物について、その構造や合成法について学習します。
高分子は、プラスチック、ビニール、繊維、ゴムなどとして、現在、私たちの身の回りで多用されており、高分子を抜きにして日常生活を維持することは不可能です。また、生体を構成する細胞や組織にも糖質、タンパク質、核酸などの生体高分子が含まれていて、生命活動に重要な役割を果たしています。この科目では、「高分子とはどの様な物質であるか?」という概念の定義からはじめ、高分子の構造、合成(重合)などについて基礎的なことを学びます。
高分子は、1 nm程度の小型の分子が数多く連結した「巨大分子」です。高分子化合物の構造制御は、まさに「ナノテクノロジー」であるといえます。

微生物学実験

微生物取り扱いの基本となる無菌操作について理解した上で、人体の正常細菌叢を形成する常在菌、土壌、水中、空中浮遊菌あるいは付着菌等の環境中の微生物等を培養し観察します。細菌のグラム染色を始めとする各種染色操作を通じ、代表的な細菌の同定を行います。また、ファージを感染させた細胞の観察を通じ、ウイルス感染の宿主細胞への効果を観察します。その他、各種滅菌法による微生物の滅菌操作を学び、微生物の応用についても実習します。

生命倫理

近年、医療技術の急速な進展にともない、従来の倫理的原則では対応できない困難な問題が生じるようになりました。本講義では、生命や医療にまつわる倫理的課題について、「自ら考えて解決の方策を探り、実践する能力」を身につけ、実践行動型の医療者や研究者になることを目標としています。具体的には、まず医療の構造や医師患者関係の歴史的変容などについて学び、次に、「考える枠組みを使って問題を検討する、議論を通じて解決策をたてる、実践方法を考える」という対処法を、人間の尊厳に関わる問題や先端医療の問題などの実践の事例をもとに検討し、議論を通じて習得します。