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支援を必要とするすべての人が学びやすい環境を考える
病いや、老い、障害など、ままならない身体と共に生きること。
それは、福祉や医療の援助対象である前に、人々が生きていく過程であり、生きる知恵や技が創出される現場だといえます。
「生存学」とは、そういった人々の経験を集め、社会との関わりを調べることで、
人々の生き方やあるべき社会・世界を実現するための方法を示す学問分野です。
そんなグローバルCOE生存学拠点でご自身も弱視でありながら、研究に従事されている
青木慎太朗さん(先端総合学術研究科一貫性博士課程3回生)に自らの研究についてお話をうかがいました。
MOVIE このインタビューはムービーでも紹介しています(5分49秒)
先端総合学術研究科
一貫性博士課程3回生
青木慎太朗 さん

青木さんはなぜ研究者という道を目指されるようになったのでしょうか?
  また、これまでどのような研究をしてこられたのか教えてください。

私自身、高校生の頃から漠然と「将来は研究者になりたい」という希望はもっていました。また、事実として私のように目が不自由だと企業に就職しにくいということもあり、研究者を目指すようになりました。学部時代は主に福祉について学び、障害者支援の制度面について研究しました。そこで気付いたのが、「障害者支援の現場では、支援を受ける側ではなく、支援者側がさまざまな決定をしてしまっている」という現実でした。なぜ、支援者側が決定をしているのかというと、支援者の方が支援を受ける側よりもたくさんの情報をもっているからです。

この気付きからうまれたのが、現在運営している大学公式サイトの「障害者支援情報データベース」[→リンク]というホームページです。このホームページでは、どの大学で、どのような障害者支援を行っているかという情報を集約して発信しています。私は現在、立命館大学の先端総合学術研究科に在籍しています。立命館で学ぶことを選んだのは、現在指導してくださっている立岩真也教授の指導をどうしても受けたかったからです。立岩先生は障害についての研究の第一人者といわれるほどの研究者ですし、障害をもつ学生にも理解をもって、研究の支援をしてくださっているので、研究をする環境としてはこれ以上の環境はないと感じています。

 

学部時代の研究を経て、この分野のトップランナーである立岩先生のもと、研究されることになったのですね。現在はどのような研究活動をされているのですか?

現在は、「大学の障害者支援の手立てと負担」について研究しています。「手立て」については、ITを活用して具体的にどういう支援が出来るのか、また、それにはどのような技術が必要なのかということ、実際にITを使っての支援をする際にはどのような障壁があるのか、といったことを研究テーマにしています。

「負担」についてはこれからの研究課題ですが、簡単にいうと「障害者支援にかかる費用を誰が負うべきなのか」ということが大きなテーマとなります。これには3つの選択肢があり、1つ目は「大学に通う障害者自身やその家族が負担する」という方法で、これまで多く実践されてきました。2つ目には「大学が支援する」という方法があります。立命館大学には障害学生支援室[→リンク]がありますが、支援室がある大学は全国を見渡してもまだまだ一部に過ぎません。例えば、支援の形として視覚障害者に対して、教材をテキストデータにして提供するというものがあります。教材をデータにすると音声ソフトを利用し、パソコンに音読させることが出来るので、音声で本の内容を聞くことが出来るのです(動画インタビューでは音声ソフトの利用の様子もご覧いただけます。[→リンク])。現在はこの支援を大学が行っていますが、本を読みたい視覚障害者は学生だけではありません。今後は学生以外の障害者のためにも、このような支援は大学という枠組みを超えて、社会全体で行われる必要があると考えています。そこで3つ目の選択肢として、「社会全体で負担する」ということが考えられます。では、そのコストは誰がどのような方法で負担するのか。これからはやはり、社会的な負担や支援、社会制度という観点が重要視されてくると思います。

 

これからの目標を教えてください。

これからの目標としては、現在研究している障害学生への支援のあり方について、さらに研究を深めていきたいと思います。また、この研究成果を実際に使って、支援を必要としている障害者に還元し、支援していきたいと考えています。前にも述べた障害者に情報発信する大学公式サイトの「障害者支援情報データベース」も、私の研究の成果を還元している一例だと思います。今後はこのデータベースもさらに充実させていきたいですね。

私は今、障害者支援についての研究を行っていますが、大学で学ぶにあたり支援を必要としている人は障害者だけではありません。実際に社会人学生のご年配の方や、外国人留学生など言語的に支援を必要としている人たちから「講義中に聴覚障害者のための文字表示があって助かった」という声を聞いたこともあります。さまざまな立場の人の声を聞いたうえで障害者支援を意識することにより、多くの人にとってもより良い環境をつくることができることに気づかされました。将来の目標としては、大学で学ぶことを希望し、支援を必要とするすべての人に対して、適切な支援をできるシステムや環境をつくっていきたいと思っています。

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取材・文 李 亘(法学部2回生)
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