対人援助学の展開としての学習学の創造 | 対人援助学から学習学へ、新たなディシプリンを創造する。

「積極的学習者」であることを支援する新たな対人援助

これまでの10年間、「対人援助」すなわち「人を助ける」という実践的行為について科学的にアプローチし、「対人援助学」という新たな学範(ディシプリン)づくりを進めてきました。対人援助における目標は、一般に、何らかの「障害性」を持つ個人に対し、「当事者(被援助者)の自己決定に基づく社会参加のための選択肢の拡大」と設定されます。すなわち当事者がやりたいことや行動を自分で選べる範囲を増やしていけるよう支援するための哲学や方法論、技法を扱うのです。

次なる展開として、私たちは新たに「当事者が絶えず『積極的学習者(アクティブ・ラーナー)』であり続けること」を支援するという、より普遍的な目標を設定しました。これには、当事者が行動の選択肢を拡大したり、決定したことを遂行する際に、援助者の支援、あるいは指示を待つのではなく、うまく達成できるよう自分で工夫するなど、当事者自身が主体的にコミットしていくことが想定されています。

こうした対人援助の試みは、障害性の有無にかかわらず、大学の学生、一般企業の社員など、より普遍的な“キャリア支援”にも応用可能です。私たちは、対人援助の実践とともに、社会におけるさまざまな領域、とりわけ「大学」をフィールドに、対人援助(サービス)と学習(ラーニング)の両方にかかわる個人が「積極的学習者」であり続けることを可能にする方法論の確立を目指しています。最終的には、「学習学(Learner’s Science)」という新たな学範を構築し、それをも包含したこれまでにない「対人援助学」を普遍化した学範として評価されるところまでを展望しています。

学生ジョブコーチを通じて積極的学習者を支援

プロジェクトでは、対人援助学の実践と教育の一つとして、2004年から行ってきた「学生ジョブコーチ」を活用します。これは、障害のある個人に対する職場適応作業の一端を学生が担う試みです。学生の役割は、障害者が特定の職業スキルを身につけるための支援のみならず、達成感や楽しみを得ながら仕事を続けられる環境を、当事者自らがつくりだせるようなメタスキルの獲得を支援することです。「積極的学習者」の指標となるメタスキルには、広義のセルフ・マネジメントや就労環境の変更要請などが含まれます。また学生ジョブコーチシステムは、障害者が積極的学習者となることを支援すると同時に、学生自身が積極的学習者となることも目標とします。

こうした取り組みを通して、障害を持つ人の継続的就労を支援することは言うまでもありません。加えて障害を持つ人が、積極的学習者として自らの行動を検証してポートフォリオを作成する、さらにそれを保管するアーカイブを構築していくことまでも視野に入れています。

サービス・ラーニングによるキャリア支援を展開

サービス(他社への支援)とラーニング(自らの行動改善)のそれぞれの主体が共変し向上する学習学的フィールド

プロジェクトでは、もう一つ学習者(ラーナー)が主体的に学び、その知識を社会で生かしていくための試みとして、「サービス・ラーニング」を中心とした教育も展開します。サービス・ラーニングとは、社会・地域活動や就労体験などを、自らの学習方法に結びつける取り組みのことです。具体的には、先の学生ジョブコーチ、障害学生等への支援などを題材として、学生のキャリアアップにつなげていくつもりです。いずれは学生ジョブコーチシステムも含めた”キャリア支援”の方法論を他の大学などでも幅広く応用していくために、システムの汎用化を目指します。

障害のある人を助けるという直接的な援助から、障害の有無にかかわらず積極的学習者であり続けるための支援へ。すなわち対人援助学から学習学へと、新たなディシプリンの創造をみすえた革新的なプロジェクトになるはずです。

学習学、対人援助学、積極的学習者、サービス・ラーニング、学習者中心の学び

望月 昭 教授

望月 昭 教授

1979年 慶應義塾大学社会学研究科心理学博士課程単位取得満期退学。博士(心理学)。'79年 慶應義塾大学文学部助手。'83年 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所能力開発部研究員。'98年 立命館大学文学部教授。'01年 立命館大学大学院応用人間科学研究科教授兼務初代研究科長、'04年 立命館大学人間科学研究所所長、現在に至る。日本対人援助学会、日本行動分析学会、日本心理学会などに所属。

研究者の詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース:望月 昭
望月昭のホームページ

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